東京出身。富豪になりたい中年男。幼稚園から高校まで私立一貫校に通い、大学卒業後、財務系マスコミ事業に従事。霞ヶ関担当記者、編集局長等を経て現在は副社長。適度に偏屈。スタイリッシュより地味で上質を求め、流行より伝統に心が動く。アマノジャクこそ美徳が信条。趣味は酒器集め、水中写真撮影、ひとり旅、葉巻、オヤジバンドではボーカル担当。ブログ更新は祭日以外の月曜、水曜、金曜。 ★★★スマホでご覧頂いている場合には画面下の「ウェブバージョンを表示」をクリックしてウェブ画面に飛ぶと下側右にカテゴリー別の過去掲載記事が表示されますので、そちらもご利用ください。
2007年12月10日月曜日
お受験と詐欺
先日、慶応幼稚舎に子どもを入学させたい中小企業経営者が、トータルで7千万円もの出費をしながら、結局不合格になった件で、詐欺の可能性ありという内容の記事が週刊新潮に載った。
子ども向けの名門お受験塾関係者がアレコレ指南した通りに各方面に謝礼や付け届けを配りまくったり、塾の改修工事を無償で引き受けるなど、その内容はまさに親バカ。
とはいえ、記事の内容通りなら、仕掛け人達は実に巧妙。信じてすがるのも無理はない。私自身、子どもの幼稚園受験を乗り切った経験があるので、名門幼稚園や小学校受験をめぐる独特な世界観を多少なりとも知っているつもりだ。
私の周辺にもお受験狂想曲経験者は多く、真偽は問わず、いろんな話を耳にした。暗躍する怪しげな人々、塾やいろいろなお教室の選び方、面接当日の服装の細かい色や、下手をすれば服のメーカーまでマニュアルがあるとか、願書の記入方法をめぐる微妙な言い伝え、提出書類に貼付する家族写真の撮影業者がどうだとか、ここで書けないような話もいくつも聞いた。
子どもの受験といっても、幼稚園や小学校だと親の試験、すなわち親が選考されるという要素が大きい。それだけに親の中には、少しでもアドバンテージを得ようと常軌を逸した行動をとる人もいる。詐欺師にとって最高の環境であり、ターゲットだ。
なんだかんだ言って頻繁に金を出させ、実際には何も活動を行わなくても、たまたま合格すれば、活動の成果だと主張できる。成功報酬ガッポリの構図だ。不合格ならそれまでの話。実に単純。
大体、この手に引っかかる親は、教育熱心なのは確か。詐欺師に頼る以前に、お受験に必要なするべきことはちゃんとしているわけだから、結構放っておいても合格する確率は高い。それを自分達の手柄に偽装するのだから困ったものだ。
税金の世界でも、似たような魑魅魍魎がうごめいている。税務調査に絡んで暗躍するような輩だ。
たとえば、どこかの会社に税務調査が入っている情報を入手した詐欺師は、その会社の社長に「私の顔で追徴をまけてもらえる」とうそぶく。実際の追徴税額が500万円だったなら、「本当なら1千万円取られるところだったが、うまく話をつけた」とのたまうような構図だ。
また、「本当なら過去5年分の決算内容までさかのぼって調査されるはずだったが、私の人脈で3年分しか調査させないようにした」とか、微妙なヒダを突いてくるような手口が特徴的だ。具体的な税務調査のスケジュールや調査によって追徴される税額や内容を把握していなければ出来そうにない話だが、「蛇の道は蛇」で昔から聞く手口だ。
聞くところによると、この場合、実際の税務調査は何の手心もなく淡々と行われる。担当の調査官は、裏でそんな連中が暗躍していることすら知らず、普通に業務を行うだけ。どこからか漏れたホンの些細な情報が詐欺師の絵図に利用される。
もっとひどいのになると、まったく当てずっぽうに儲かっていそうな企業に対してアプローチする。「税務ナントカ協会」みたいな名前で、「まもなく御社に税務調査が行われる予定ですが・・・」といったノリでアレコレ企業側の不安心理を突いて悪銭を稼ごうとする。このほかにも「国税ナンタラ協会」のようにさも公的な団体を装って、いけしゃあしゃあと「平成19年度通常会費」とかいう請求書と振込み用紙を送りつけるような手口も少なくない。
ひとかどの企業になれば、業種や地域ごとなど結構な数の団体に会員として名を連ねている。それっぽい請求をつい鵜呑みにして払い込んでしまう例は相当数にのぼる。
ところで、税務調査の世界は、税務署の裁量と絡むので、一般の社長さんにとって、その対処が難しい。調査対象は過去の決算内容だが、法的には7年前の分までさかのぼれるが、実際の運営はケースバイケース。悪質でなければ3年前ぐらいのものがチェックされることが一般的だ。明確な決まりがあるわけではない。
明確な決まりがないのは指摘内容も同様だ。軽微な間違いであれば、指導ということで、それ以後の経理処理の是正だけを要求されて済むこともあるし、同じ内容でも、しっかり修正申告を求められることもある。
全国の国税局、税務署でも税務調査などの事務運営にバラツキが生じないように何かと内部のルール作りを行っているが、調査官という人間が行う以上、裁量の度合いに開きが出るのは当然の話。詐欺師が目をつけるのもそうした部分だ。
「税務署に顔がきく」なんて言ってくること自体が胡散臭いと思った方がいい。その人間が税理士でもなく単なるコンサルタントなどの肩書きで動いているようなら、まず怪しい。確かに国税局や税務署出身の、いわゆるOB税理士のなかには、「顔がきく」人はたくさんいる。「顔がきく」という表現の意味は曖昧で、知り合いが多いというだけでも当てはまる。「顔がきく」イコール税金が安くなるという短絡的な考えは賢明ではない。
まあ税務調査という行為自体が懐を探られることだから、誰もが歓迎したくない話だ。常々思うのだが、税務署は警察よりよっぽどパワーを持つ権力だ。警察は悪いことしている人だけを攻めるが、税務署は、品行方正・謹厳実直の個人や会社にだって攻め込むことが可能だ。
税務行政の話を書き出すとキリがないのでこの辺にしておく。
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