家を造るとき、誰もが自分のこだわりを反映させたいと考えるもの。私がこだわったのが「呑み部屋」を作ろうということ。以前住んでいた家の和室を有効に使わなかった反省で、普通なら和室にする部分を思い切って「呑み部屋」にすることにした。
住宅計画にあたってお決まりのように設けられる和室。建売住宅だろう注文建築でも設置することが当然のように位置付けられている。とはいえ、リビングとダイニングがしっかりあれば、和室の使い道はあまりないのが実情だろう。誰かが泊まっていくときの客室代わりにするには使用頻度が少なく、お茶や生け花をやろうとしたって、しょせん1年中そのスペースを活かすわけでなく、結局中途半端なスペースになっていることが多いように思う。
ソファや椅子ではなく床に座ると妙にくつろぐ日本人のDNAは私にもある。要はただ漠然と畳をひいた部屋を作るのがいやだっただけで、わが家の呑み部屋には無垢のチークを床材にし、中央は、掘りごたつ式に掘り下げ、プレーンな座卓を設置した。
4面ある壁は珪藻土を使い、もっとも面積の広い面はオレンジ色の塗装にしてみた。天井材には東南アジアのリゾートで使われるような木材を選び、小型のダインライトを多めに配置し、すべて調光可能とし、気分で照明効果を切り替えられるようにしてみた。窓は極力小さくし、普段はナニック製の木製ブラインドでカバー、壁面には2カ所にぐい呑み陳列棚を設置した。
立体的なデザインの造作をアレコレ考えたが、担当だったインテリアデザイナーさんが「家具や飾りでアレンジすべき」と言って反対したので、その通りにしたが、やっぱりもっと遊びの要素を入れたかったと思う。
酒類をしまっておくための木製家具は、陳列棚に入りきらない酒器類をおさめるラックとともにバリ島の素朴な家具にして、飾りの類は、やはりバリで買ったグリンシンと呼ばれる布やアジアの骨董などをいくつか置いてみた。床へのベタ座りに不可欠な座布団は、タイの三角枕付のシルク製品を選んだ。
こう書いてみると、一時期流行したアジアンモダン的な感じだが、実際に出来てみると、それほど強烈にアジアンチックでもないのが不思議だ。結局、「ちょっと気取った和室」ぐらいな感じで、意気込んで「和室なんかいらないぜ」と言っていた割には、大したことはない。
家でしっかり呑むときはこの部屋を使うことにしていたが、よくよく思い返すと、ダイニングスペースであっさり呑んでることが多い。わが愛しの呑み部屋、実際には「鍋もの部屋」と化していることが多い。鍋はやっぱり地べたに座って楽しみたいので、結局、「和室」としての機能から脱していないのが残念。
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