別宅という概念がオーナー経営者らの間で少しずつ浸透している。自宅以外の隠れ家というか自分だけの居場所を確保したい心理は中年以上の人間なら誰もが思うはず。
雑誌「LEON」」で活躍した岸田一郎編集長が独立後に手掛けている富裕層向け情報誌「zino」なんかも、さかんに社長さん向け“トキメキ別宅”といった特集を展開している。富裕層向けのクオリティライフを提唱する以上、当然、そうした着眼点は外せないわけだ。
浮気目的とか単純な話ではなく、息を抜くための一種の止まり木的な欲求だ。とくに自宅の所在地が、都内中心部から離れているような場合、仕事上の付き合いを銀座や六本木あたりで毎晩のように遅くまでこなす経営者達にとっては、こうした発想は自然なこと。
都内中心部にタケノコのように増殖するマンションがこんな目的で購入されることも多い。購入までは考えない場合でも、最近は、サービスアパートメントのような家具付きでホテル的サービスが受けられる賃貸物件が増えているので、そこに狙いを付ける経営者は多い。
この場合、気になるのが、個人の財布から費用を捻出するのか、会社名義で活用するのかという判断だろう。自分の息抜きという要素を考えると、あくまで個人的な費用として処理すべきで、会社の経費にするのは難しいという考え方が一般的かもしれない。
とはいえ、社用で連日のように遅くなり、高いタクシー代と長い時間を使って帰宅することは非生産的な行為でもある。自宅所在地、会社所在地のほか、そうした別宅を利用する趣旨や目的などを総合的に判断して合理的なものであれば、税務解釈上、会社経費で別宅を使うことはちっとも無理な話ではない。
対税務署的に見れば、もちろん、慎重な判断は必要だろうが、あくまで経費性の立証責任は納税者側にあるわけで、正当な理論武装などがあれば済む話だ。
賃貸ではなく、投資用物件という意味で購入することも会社の財務戦略上間違っていない。うまく値上がりでもすれば、会社という存在の根本的目的である利益追求にもかなう。
不動産情報誌や富裕層向けに高級不動産を紹介する情報誌は数多いが、どうしても不特定多数をターゲットにしている以上、家族向け物件などの情報が中心。別宅的アプローチは世の中でまだまだ少数派だ。
経営者の別宅問題でカギになるのは、さきほど説明した「財布の話」、すなわち、会社名義での処理のポイントや税務署的視線の見極め方といった部分だ。この点はオーナー社長向けの税金専門紙しか論理的考察ができないのが現実だろう。
別宅に限らず、会社名義でのクルマ活用術などオーナー経営者の商品への関心は、「そのカネはどっちの財布を使うか」、すなわち自分個人か会社経費かという微妙な線引きの上に成り立っている。
巷にあふれる情報誌やwebの情報などでは、この微妙なヒダの部分まで切り込めないのが現実だ。オーナー経営者向けのマネー関連媒体を出している立場から見れば、一般的な編集者の限界はこの一点につきると思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿