2008年2月7日木曜日

富麗華、福臨門

高級中華料理店って便利な存在かも知れない。接待やデートの場面では、仰々しすぎることもなく、かしこまりすぎることもない安心感がある。

高級フレンチだと残念ながら肩が凝る。メニューに書かれた料理の名前が素材ぐらいしか分からなくてイラついたりする。ワインリストが膨大だと憂鬱になる。まあ単にパンが嫌いという個人的理由が大きいのだが・・・。

高級寿司店は、密談、商談、ワイ談がカウンター越しに筒抜けで困る。

懐石料理店は、おのれの日本文化への理解度不足が露呈して反省気分が強まる。

イタリアンは、働いているイタリア人が格好良かったりして困る。

中華料理店は総合的に無難だ。中華料理が苦手という人は少ないし、メニューの内容がたいてい分かるし、分かったフリをしてワインリストを睨む必要もない。ちゃんとした店なら毒ギョーザも出てこない。

アレコレ語れるほど食べ歩いたわけではないが、「福臨門」と「富麗華」は、それなりに抜きんでた存在だろう。お値段という意味でもそうだが、料理全体のレベルが高い。

福臨門は、香港に行った際にも、2,3度行ったことがあるが、個人的には日本の方が満足度が高かった気がする。久しく行ってないので、偉そうなことは言えないが、徐々に店舗数が増えていることがレベル維持の点でちょっと気になる。

以前の銀座店は味気ないインテリアが良かった。これみよがしのインテリアよりも、素っ気ない風情が味への絶対の自信のように映った。異様にお高いフカヒレとかアワビより、お手軽価格の鶏の丸揚げとか、海老料理や、いわゆる家禽類ロースト系の料理が絶品だと思う。

以前行ったとき、シンプルでプレーンなつゆそばを作って欲しいと頼んでみた。要は単なるラーメンの注文だ。お金が無くて頼んだのではない。純粋に食べたかったから頼んだ。

結果、滋味という表現しか思い浮かばない優しくも奥深い味わいだったことを思い出す。上湯の素晴らしさがすべての決め手だろう。日本料理が出汁のレベルに依存しているのと同じで、中華もこの部分が肝。単純なラーメンも神々しい味になる。

お次は東麻布の「富麗華」。ほんの少し隠れ家的な立地、店のしつらえ、インテリア、食器などなどが丁度良い高級感で整えられている。中国古典楽器の生演奏もあって、「さあご馳走を食べましょう」的な高揚感をきちんと演出してくれる。

広東料理の店のレベルを一発で決めるのが甘めの味付けのロースト類。この店も間違いない美味しさ。許されるなら鴨や豚のローストばかりを大量に頼んでひたすら酒のつまみにしたいが、そうもいかない。大人だから一応野菜なんかも食べないと格好悪い。

サクサクしたフレークが入っている北京ダックは、この店に来て頼まない人がいないくらいの人気メニュー。率直に美味。

あれこれ説明してもきりがないが、特筆すべきは“黒チャーハン”。正式名称は忘れたが、見た目は黒くて楽しげではない。初めて見る人は食欲が湧かないかもしれない。私の初体験がそうだった。満腹気味な頃合いに登場した黒チャーハンにゲンナリしかけたが、頬ばってビックリ。見た目とは裏腹にあっさりしている。いい感じでコクもあり、ちょこちょこ載っかっている松の実の食感がアクセントになって抜群。どんぶりでも食べられるぐらいのお気に入り。未体験の方には是非是非オススメ。

そこでしか味わえない独特の料理がいくつもあることが高級中華として他をリードする条件だと思う。そうした点で富麗華はさすがと言っていい。平凡な料理も確かにあるが、あとあとまで長く印象に残る料理がいくつもある。

思い出に残る料理があれば、その食事に費やした時間すべてが素敵な思い出になる。

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