2008年2月13日水曜日

経営者のよりどころ

以前、コンサルタントと称する人からアレコレ話を聞いた。どこの教材の受け売りか知らないが、耳触りのいい話を盛んに展開する。お説ごもっともとうなずいてあげたが、やっぱり自分で会社経営しているわけでなし、なんか説得力がない。

社員の人事評価を例に挙げる。彼いわく無遅刻無欠勤の社員を評価する必要はないと主張する。理由は、それが当たり前だから―。大の大人が遅刻や欠勤をしなかったことを誉めていてはキリがないという理屈は確かに正論。でも、私としてはどうにも気持ちが悪い。ムズムズする感じだ。

トクトクと無遅刻無欠勤当然論を主張する彼の論調は格好良すぎる。格好良いことを言っている自分に酔っているかのようなフシさえある。

「あなたは1年間無遅刻無欠勤でいられるか?」。私の問に彼は窮する。私が続ける。「じゃあ、やっぱりそれが出来る奴は立派だ」。こんな感じでラチがあかない。現実社会で、なんだかんだ言っても無遅刻無欠勤は評価に値する行為だろう。それが当たり前だとは言いきれないし、経営陣のはしくれとして時にはドライな判断をする私だって、そんな社員は偉いと思う。だいたい、そんな社員なら、仕事ぶりが不真面目であるはずもない。

特殊な技術導入や専門外の事業スキームを練るような場合、コンサルタントの力が必要になることは多い。ただ、汎用的というか一般的な諸問題をコンサルタントに委ねる経営者はどのくらいいるのだろうか。

創業間もないのならいざ知らず、経営者は経営のプロである。いつも引き合いに出すが、寅さんに出てくるタコ社長だって、優秀か否かはさておき、プロとして従業員の人生を背負っている。なまじっかのコンサルタントが上っ面なことをもっともらしく言ったってそれに負けない経験と自負を持っている。

欧米企業の経営者には、専属のカウンセラーがついていることが多い。コンサルタントとカウンセラーの厳密な定義はさておき、後者の役割を端的に表現すれば「聞き役」だろう。経営者が社員に本音を語ることはない。弱みも見せられない。孤独なポジションゆえ誰かに話をしたくても、家族では通じない。友人とも土俵が違うとなれば、まさに八方ふさがり。

わが国の場合、カウンセラーという響きが、どこか心に病を持っている人だけを相手にするようなイメージがある。そのせいか、ビジネスの現場では「カウンセラーにかかってます」と軽々しく口に出せない雰囲気がある。この偏ったイメージが変われば、経営者の苦悩が多少なりとも救われることが増えるはずだ。

日本の経営者の場合、四柱推命とか風水とか、広い意味での占い系にカウンセリング的期待を寄せることが多い。定期的に事業の行方を見てもらったり、アドバイスを受けるパターンだ。占い師にあまり入れ込みすぎて、どこかの大会社の社長が役員会で追放されたとか言う話も聞く。

占いとなるとカウンセラーの基本である「聞き役」とは違う。ただ、占ってもらうには、自分の心配事や胸中を説明する必要があるため、この段階で「聞き役」になってもらっており、それだけでスッキリする経営者も多いのかもしれない。

カウンセラー、占い師、いずれにせよそこそこの費用は発生する。これが経営のために必要なものであれば、会社の経費にしても問題はないと考える。自分の子供の縁談とか自宅の間取りとかばかり相談してちゃマズいが、事業のための支出で常識的な範囲であればさほど気にすることはあるまい。

ところで、カウンセラーにも占いにも頼らない経営者もいる。そうした人達の頼みの綱は、近所のスナックのママさんだったり、赤提灯のオヤジだったりする。ここでウサばらしする費用は、カウンセリングと効能は一緒でも会社の経費にしにくい。本当の目的が酒を呑むことだったり、ママさんを口説くことだから、やっぱり対税務署的には通じない。

税務解釈はなかなか難しい。

2 件のコメント:

  1. 飲み屋のママさんがカウンセラーだと経費参入は難しいでしょうが、美人精神科医師がママ化した診療施設で酒を飲みながらカウンセリングを受けた場合、経費になるんでしょうか? そんな店があったら寄り付く社長…多そうですね。

    返信削除
  2. 診療施設であれば、「治療のために必要な範囲で医師の判断」があれば、カウンセリング費用全体が経費に出来ると思えます。まあそんな施設があれば、私なら毎晩病人のフリして出かけます。

    返信削除