2008年2月19日火曜日

頑張れるか、池袋


会社が池袋にある関係で何かと困る。賃貸物件に入居しているのなら、移転も簡単だが、古い自社ビルがオフィスだと、なかなか動きが取りにくい。

東京中心部への移転も昨年あたりは真剣に考えたが、現社屋の扱いをあれこれ考えて実現していない。一棟丸ごと貸せれば話は早いが、ことはそう簡単に運ばない。

だから池袋でウロウロすることが少なくない。しっぽりと呑んだり食べたりしたい私としては、そんな雰囲気を漂わす店がないことにイラつく。

チェーン店の居酒屋とカラオケ、風俗店とファーストフード、おまけにデパートもゴマンとある。でも私が行きたい店がない。

寿司好きにとっては、池袋は絶望的な環境。ちょっと良い感じの店を見つけても、入ってみれば、客層がみんなその筋の人だったりして「うひょー」となる。

悪い評判をあまり聞かない「五十嵐」、「丸銀」あたりは、確かにまともだが、まとまな店の全体数が街の規模に比べると圧倒的に少ない。

昨年11月にオープンした「鮨処やすだ」。池袋名物ロサ会館そばに登場した期待の新星!?だ。2週続けて行ってみた。

店の作りは、港区あたりで主流になっている和モダン的。間接照明が上手に使われていい感じ。店の入口からカウンターまでの距離がわずか1歩ぐらいしかない幅の狭さが立ち食いそば屋みたいで問題だが、全体の店舗デザインが見栄え良くまとまっている点でなんとかカバー。横に長い作りの店舗のようで奥の方には座敷もある。入口の印象よりは収容人数は多そう。

つけ台にガラスのネタケースはなく、魚貝は木箱に納められているパターンも今風。アルコールの品ぞろえもそれなりで問題なし。隣の椅子との間隔も広めで居心地良し。

大将も実に低姿勢で穏やかな感じ。こう書いてくると結構高得点だ。

肝心の味について。関サバをほぼ常備している姿勢が有り難い。通り一遍の鯛やヒラメではなく、メバル、金目鯛、ムツ、イサキといった白身類が豊富で、鮮度もいい。飲み屋的使い方をする人にとっては、少しづつ刺身をアレコレ出してくれる流れがいい感じ。

突き出しも2種類の小鉢に酒肴が用意される。珍味系は、この時期は、このわたと鱈の白子。品数は多くないが、ツボは押さえてある。締めたカスゴ、脂ののったマスも美味しい。貝類も味の濃いものが揃い、タケノコなんかもじっくりと焼いてくれる。

基本的に、出されるものはおまかせ中心で店側のシナリオ通りに順番などが決まっているようだ。ただ、腰の低い大将だけに、途中であれやこれやわがままを言っても対応してくれる。

会社の人間と連れだって出かけたときのこと。刺身、酒肴、焼物をしっかり食べたのに、いつまでも握りに移行せず酒ばかり呑んでピーチクパーチクしていた。そんな時でも、限られた種類の食材から、ちょこっとしたツマミを即興で出してくれる。

大将に池袋に店を構えた理由を聞いた。やはり、真っ当な店があまりに少ないからという答えだった。問題は、その姿勢と意気込みが続くかどうかだろう。

池袋は客が店を育てない街だと思う。お寿司屋さんに限らず、結構いい感じの路線で開業した店が、半年、一年と経つ間に、質と価格をしっかり落として池袋的居酒屋路線に変貌していく姿をいくつも見てきた。

「こだわりの逸品」、「プロの仕事」などを池袋界隈で求めようとしている人は少ない。って言うか、いないような気がする。

でも逆に、そんな店が池袋で根を張っていることが知れ渡れば、このエリア周辺をうろつく私のような池袋不満組がジワジワと集まってくることも間違いない。要はそこに至るまで辛抱が続くかどうかがポイント。

砂漠にポツンと生まれたオアシスと言ったら大げさだが、そんな感じがする。水に飢えた動物が見つける前に枯れてしまうか、砂と泥にまみれて埋もれてしまうか、はたまた湧き水として異彩を放ち続けるか、この店も1年ぐらいが勝負どころだろう。なんとか現在の路線を変えずに続けて欲しいもの。

お勘定はしっかり呑んで食べて1万円台前半。コストパフォーマンス抜群とはいえないが、この店が目指す路線が好きな人なら納得できる範囲か。

腰の低い大将がもっともっと自信満々な雰囲気を醸し出せるかが勝負の分かれ目かも。

2 件のコメント:

  1. 「鮨処やすだ」美味しそうですね。
    会社から近くだし行ってみようかな?

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  2. コメントありがとうございます。まだそんなに混雑してないようなので、ぶらっと行っても席はあると思いますよ。

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