東京出身。富豪になりたい中年男。幼稚園から高校まで私立一貫校に通い、大学卒業後、財務系マスコミ事業に従事。霞ヶ関担当記者、編集局長等を経て現在は副社長。適度に偏屈。スタイリッシュより地味で上質を求め、流行より伝統に心が動く。アマノジャクこそ美徳が信条。趣味は酒器集め、水中写真撮影、ひとり旅、葉巻、オヤジバンドではボーカル担当。ブログ更新は祭日以外の月曜、水曜、金曜。 ★★★スマホでご覧頂いている場合には画面下の「ウェブバージョンを表示」をクリックしてウェブ画面に飛ぶと下側右にカテゴリー別の過去掲載記事が表示されますので、そちらもご利用ください。
2008年2月21日木曜日
オトナの歌
テレビや雑誌の「あの人は今」みたいな企画が結構好きだ。その人が活躍していた頃の自分の記憶をたどって感傷にひたれる。
こんなことを思ったのは、先日、iPodに何か新しい曲を仕入れようと、ウェッブ上の音楽ストアをあさっていて懐かしい名前を見つけたから。
「門あさ美」。80年代初めに独特の存在感を示した謎の女性歌手だ。「ファッションミュージック」とかいう意味不明の看板が掲げられていた歌手だったが、その表現が確かにピンとくる世界を歌っていた。
シブガキ隊とかがもてはやされていた時代、多感な中高生達は洋楽に救いを求めた。綴りが面倒なので全部カナ表記するが、有名どころではエア・サプライとかクリストファー・クロス、ボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェルあたりは、いわゆる「オシャレなもの」として必須課目というべき存在だった。
邦楽のポップス系はちょっと遠慮しておくみたいな気取りが少なからずあった多感な頃の私が妙に惹かれたのが「門あさ美」。もともと女性が聞くような雰囲気の曲ばかりだったが、その歌詞の世界が、当時おこちゃまだった私にはえらく新鮮で、友人には内緒でこっそり聞いていた。
ジャケット写真からしか窺い知れない本人の容貌もまた「大人」のイメージ。ワンレンの走りのような長めの黒髪に物憂げな表情を際だたせるメイクがおこちゃまには嬉しかった。
徹底的にメディア露出を避ける戦略をとっていたため、その神秘性が増加、ませた中高生がイメージする大人の世界そのままのイメージができあがっていた。
大人の世界といっても、もちろん演歌的大人の世界ではなく、エロティックな大人の世界だ。最近の「エロかっこいい」とか中途半端なものではない。
胸の谷間や太ももを一切見せることのないエロティックさが特徴だ。膝から下の美、指先の美みたいな感じ。匂い立つ色香に思春期そこそこ坊やがクラクラするようなエロティックさだ。
具体的な曲のタイトルを見ても「セ・シボン」、「月下美人」、「ミセス・アバンチュール」、「感度は良好」、「お好きにせめて」等々。最近は使われなさそうな言葉だが、当時、確実にオシャレな響きに聞こえた。
一流のアレンジャー、ミュージシャンを揃えて制作された楽曲自体が、完成度が高く、そこに艶っぽい歌詞がのっかる。甘ったるく切ないヴォーカルは、あえぐように、すがるような歌い方で独自の空気感を醸し出す。そんな感じだった。
iPodにダウンロードして20ウン年ぶりに聞いてみると、あれほど大人の世界に聞こえた歌詞の世界が結構普通で逆に新鮮。微笑ましかったりもする。でも、この感想自体が自分が加齢しちゃったことの証で、ちょっとせつない。
「感度は良好」、「お好きにせめて」などのタイトルは、言葉の印象だけでは、一歩間違えると時代をもっとさかのぼった畑中葉子の迷曲「後ろから前から」を連想させる。もちろん、門あさ美の世界は上品なエロティックさに満ちており、畑中葉子のスケベっぽさとは一線も二線も画していた(それにしても「後ろから前から」ほどイタい歌はそうそうないと思う)。
昔の歌を聴くのも結構楽しい。
ところで、門あさ美に「気分はもうメンソール」という曲があった。メンソールという単語自体にお洒落な感覚があったわけで、いま思えば妙に新鮮。そう考えると、あの当時盛んに使われて、今では陳腐化しちゃったフレーズって結構多い気がする。
「マティーニ」とか「カンパリ」とか「バカンス」、「ランデブー」、「ジュークボックス」、「シュガー」、「ペパーミント」とか、「ピンボール」、「ララバイ」、「ヴィーナス」、「レモネード」、「マーメイド」、「トロピカル」あたりは、やたらと耳にした記憶がある。なんか甘酸っぱい記憶がよみがえる言葉だ。
いまこうした言葉をカラオケでうなると相当恥ずかしいかもしれない。
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