2008年3月27日木曜日

浅草の逆張り

この間の週末、1年に何度もないような絶好の散歩日和だった。知らない場所をブラブラするのが好きなので、その日も「江戸のまち歩き」みたいな本を片手に根津方面に行った。

ところが、お彼岸のせいか大混雑。どうせどこに行っても混んでいるのならと、江戸っぽさの総本山というべき浅草まで足を伸ばした。

浅草出身の私の祖父は、生前、時間があると墓参りついでに浅草寺周辺をふらついてから上野の弁天様にお参りに行った。子どものころ、祖父母にくっついて行ったのが私の浅草散策の原点だ。今でも1年に一度はあの濃厚な空気を感じたくてブラブラしにいく。

今回は、この街に漂う「逆張り」というコンセプトを改めて強く感じたことが散歩の収穫。

赤坂サカスのオープンで持ちきりだった週末だけに、あの手の先端スポットの対極的存在として浅草の面白味を味わった。

なんといっても、この街、いつ来ても我が道を突っ走っている。とくに場外馬券場近辺、花屋敷近辺の様子は独特だ。

大衆演劇の小屋の前も活況で、ひとつの世界が確立されている。張り出されていたポスターにもつい見とれる。出演者が誰だかよく分からないところがいい。

すべてにおいて、この街でしか成立しない個性が際だっている。週末だったため昼間から周辺の飲み屋は大盛況。赤ら顔のオヤジが幸福そうに焼酎を流し込む。チンドン屋さんが来たって、特別注目するわけでなく、むしろ、その音色は単なる日常といえるほど溶け込んでいる。

ここらへんの一杯飲み屋は、飲食店というカテゴリーにあって、ある意味ひとつの「逆張り」だろう。ハヤリすたりとは無関係、何も追わずに黙々と浅草の一杯飲み屋であり続ける。流行に背を向けるという姿勢自体が、ハヤリものを追っかける世の中の風潮への逆張りだ。

ヘルシーブーム、メタボ対策大流行の逆張りとして登場したメガマックとかメガ牛丼が大ヒット商品になった。路上禁煙がうるさい地域では、ある喫茶店が喫煙者専用という路線を大々的に打ち出して大繁盛だという。

昨今の商売でヒットといえば「逆張り」。最大公約数的発想の反対側をあえて目指す考え方だ。

浅草の濃い部分は、ひょっとすると徹底した逆張りの思想に基づいているのではないか。だから根強く支持され、すたれないでいる。

界隈の洋品店(あえて洋品店と表現したい店作り)の品揃えだって、普通に見れば、誰が買うんだろうというものばかり。

でも、この「普通に見れば」の「普通」自体が、逆張り思想にとっては格好のターゲット。実際、店先には次から次に商品を手に取るお父さんがやってくる。

この品揃えが魅力的で、馴染むから、駅周辺のデパートとか上野あたりではなく、ここに来るのだろう。ターゲットの明確化というビジネスの基本が守られているわけだ。

こっちの店も結構お客さんで賑わっていた。常識で考えれば、こういう品揃えは避けそうなものだが、徹底して原色ジャージ系がてんこもり。やはり「常識で考えれば」という根拠なき平凡な発想の向こうを張る「逆張り」が徹底されている。

実際、この界隈を歩いているお父さん達の着ているものは、他の街では少数派だろうが、ここではメジャー。上の2点の写真のような店で売っている定番だ。

思えば「花やしき」も逆張りだ。ディズニー系を頂点とするアミューズメント路線を真似る気配はなく、下町の遊戯施設などとあえて漢字で表現したくなる路線を歩んでいる。

何日か前のブログで、東京の街の香りが薄くなったことを嘆いたが、浅草の香りは依然として濃厚。ある種、東京の東京らしさが強く感じられる。

外国人や地方の人達で大賑わいだったが、東京人こそゆっくり散策するとその面白味がよく分かるような気がする。

これから桜の季節。浅草散策はオススメ。

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