2008年4月23日水曜日

野村證券 インサイダー M&A


株なんてものは、何かしらのインサイダー情報を持っている人間しか儲からないのが大人の常識だ。もちろん、1日中パソコンとにらめっこして、一定の法則に基づいてデイトレードしていれば、それなりに儲けは出るのだろうが、一般的には多少なりとも有利な情報を握った人だけが潤う。

インサイダーだらけとは分かっていても、野村證券社員による今回の事件には呆れる。あんなベタなことがまかり通るなら、誰だって子どもを証券会社に就職させたくなる。

逮捕された野村證券の中国人社員は入社直後からインサイダー取引に手を染めていたそうだから、事件そのものが氷山の一角と考えられる。

今回の事件で、とんだトバッチリといえるのがM&Aという商行為だろう。大企業のM&Aの中枢で起きていた事件だけに、M&Aそのものへのネガティブイメージが懸念される。

上場会社がM&Aによって業務基盤を強化したり、M&Aされることで成長発展が望めることになれば、当然株価にはね返る。M&Aは市場へのインパクトも大きい。この中枢情報が第三者の私腹を肥やすことに悪用されたら、この商行為自体が怪しげに思われてしまいかねない。

わが社では、60年に渡って中小企業経営者や会計事務所業界に対して専門新聞を発行してきた。この関係で、中小企業や会計事務所の事業承継がスムースに運んでいない実態に身近に接し、そのサポート依頼も年々増加しているため、主に中小事業者のM&A支援を積極的に行っている。

後継者のいない経営者の苦悩は、当事者にとって非常に深刻。これまでは、中小企業であれば廃業という選択肢が一般的だったが、これが厄介。すべてを処分するために逆に大借金を抱えて引退後を過ごす悲惨な事例も珍しくない。

M&Aがスムーズに運べば、従業員や事業用資産も引き継がれるし、オーナー経営者は、憂いなくまとまったリタイア資金を得られる。

今回の野村證券のインサイダー事件は、こうした観点からも罪が深い。M&A周辺事情にビジネスライクなマネーゲームといった誤った印象を与えてしまいかねない。

M&Aには「事業承継難民」とさえ呼ばれる中小企業経営者の苦悩を解決する手段としての社会的使命があり、むしろこういう側面こそ強調される特徴だと思う。

乗っ取りだのホリエモンだの、何かとネガティブイメージがつきまとうM&Aだが、中小企業レベルでは、実に有意義な経営選択手法として機能していることを声を大にしていいたい。

ちなみに、わが社が関わるM&A関連情報も当然ながら非常に厳格な情報管理が徹底されている。当たり前なのだろうが、副社長である私にも情報は開示してもらえない。

以前、某会計事務所のM&A完結後、当事者の一方が私の知人だったことが後になってから分かった。わが社が支援していた案件だったことを当事者から聞かされたわけだが、秘密保持が何より大切な問題だけに、バツは悪かったものの、わが社の“品質”を体感できたのでいい経験だった。

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