最近なんだか貝が美味しい。
変なことを想像してはいけない。純粋に旬の貝が甘くて美味しい。いまの季節はあちこちのお店で結構貝類を勧められる。
そもそも貝には旬が判然としないものも多いらしい。魚と違って脂がのるわけではないため、旬が曖昧なまま1年中食べられるものが多い。
そうはいっても、いわゆるウマミ成分とやらは季節によって変化するらしく、まっとうなお鮨屋さんが、自信を持って出してくる貝は、たいてい「今が旬」というフレーズ付きだ。
一昔前までは、貝類はあまり好きではなかった。いま思うとあのサッパリ感が原因だろう。肉食偏重、魚でも脂分の強いものが好きだった頃に、貝の味わいはどこか頼りない感じで、鮨屋で注文する際にもお気に入りランク外だった。
貝に惹かれるようになったのも加齢が原因だろうか。あらためて気付いたが、トロとかシマアジ、カレイやヒラメの縁側あたりも以前ほど食べなくなった。サッパリ系を好むようになってきた。性格も以前よりサッパリしていればいいのだが・・・。
先日、連休の谷間で人通りの少ない銀座にいた。普段は、時間帯によっては混雑してなかなか入れない店に行こうと、久しぶりに「鮨・池澤」ののれんを一人でくぐった。
運良くというか、運悪く私が過ごした前半の時間は貸切状態。客の心理はわがままなもので、混雑していれば居心地悪く感じ、ガラガラ過ぎても居心地は良くない。
そんな微妙な気持ちもうまいものにありつくと吹っ飛ぶ。ナマのトリ貝の甘さに思わず燗酒がぐいぐい進む。一気に幸せな時間になった。
2月に行った網走でもやたらと貝を食べた気がする。最近お気に入りのツブ貝やホッキ貝。ナマでも焼いても美味しい。それ以外にも最近は、行く先々のお鮨屋さんで、ついつい青柳も注文する。これまた今の季節にピッタリの爽やかな味わい。こちらは冷酒に合わせる方が美味しい。
数日後、別のお鮨屋さんで、運悪く食べたい貝が品切れで、すすめられるままにアワビを焼いてもらった。アワビばかりは固いばかりの刺身より火を通した方が好みだが、お鮨屋さんには珍しく、バターをタップリ使った味わいにはまって焼酎を飲み過ぎた。
なんだかんだと貝について書いたが、富豪記者的心構えとしては、なるべく単価の高い店で食べるように心掛けている。安い店で出される安価な貝はやっぱり恐い。先日も某居酒屋でナマのサザエの肝が出てきたが、勇気を振り絞って食べないようにした。
たいてい大丈夫なはずだが、やはりこちらの体調も関係してくる話。貝毒はあたったら洒落にならない。
とりとめのない話を書いてきたが、やはり貝といえばいかがわしい想像に行ってしまいがち(結局そこに落ち着いてしまった・・・)。妙になまめかしい見た目の様子とかクセのある味わいがどうしたという下世話なことは書かない。
でも、「あたったら恐い」「あたったら痛い目に遭う」という点では、“貝の擬人化”は正しいのかも知れない。
毒がありそうなほど食べたくなる。男のサガだろう。
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