2008年5月28日水曜日

高額納税者を思う


何年か前まではいまごろの季節は、いわゆる長者番付の話題がマスコミを賑わしていた。

法律で規定されていた高額納税者の公示制度が話題のベース。所得税を1千万円以上納税した人の氏名などが全国の税務署で発表される仕組みだった。

考えてみれば、物騒になった世の中でこんなに間抜けな制度はなかった。「どこそこにお金持ちがいますよ」と国が積極的にPRしていたのだから、泥棒などは大喜びだっただろう。

実際、高額納税者リストに載ったことでの犯罪被害もあったようで、犯罪までいかなくても、寄付の要求やDM攻勢にさらされる人々の不満は強かった。

「納税通信」でも制度が廃止されるだいぶ前から、制度廃止を主張するキャンペーン記事を展開してきた。

廃止論を徹底した理由は、プライバシー問題もあるが、そもそもの国の姿勢に「?」があったから。

制度の晩年こそ、建前上、高額納税で国に貢献したことを讃えるためという大義名分が掲げられていたが、公示制度のそもそものきっかけは、戦後の混乱期に設けられていた密告奨励制度。

高額納税者を公表することで「アイツの名前がない」とか「アイツの収入がそんなに低いわけない」というタレコミが寄せられることに期待して始まった制度だったわけだ。

真面目に高額納税している人にとってはたまったものではない。さらし者にされて失礼な話ではある。

本来、賞賛されて然るべき高額納税者が、ただ好奇の目にさらされる。なかには公示制度に載らないことだけを目的に正しくない申告書を提出し、一定時期までに修正申告して制度の網をかいくぐっていた人も多かった。

たとえば、一定年数以上公示され続けたら表彰状がもらえるとか、最終的には勲章がもらえるとか、目に見える特典でもなければ確かに迷惑なだけだろう。

「納税通信」では、以前、現行の叙勲制度に高額納税者が対象になっていない実態を問題視し、「高額納税者には叙勲で応えよう」というキャンペーンを長期間展開したことがある。

政界、財界などから賛同意見は500人以上から寄せられ、勲章制度こそ実現しなかったものの行政当局による新しい表彰制度が誕生した。

ただ、高額納税者を対象にした表彰が大々的に大っぴらに行われることは現在でも実現しておらず、勲章制度などは依然として役人のための制度のような趣だ。

納税は国民の義務といえども、苦労して人より多く納め続けている人に対して、その苦労を誉めもせず、当たり前のひとことで片付けたら、納税意欲など高まるはずはない。

プータローとか税金知らん顔の風俗嬢と、真面目に長年高い税金を納め続けた人が選挙の時に同じ1票しかないことが馬鹿げていると思う感覚はおかしいだろうか。

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