東京出身。富豪になりたい中年男。幼稚園から高校まで私立一貫校に通い、大学卒業後、財務系マスコミ事業に従事。霞ヶ関担当記者、編集局長等を経て現在は副社長。適度に偏屈。スタイリッシュより地味で上質を求め、流行より伝統に心が動く。アマノジャクこそ美徳が信条。趣味は酒器集め、水中写真撮影、ひとり旅、葉巻、オヤジバンドではボーカル担当。ブログ更新は祭日以外の月曜、水曜、金曜。 ★★★スマホでご覧頂いている場合には画面下の「ウェブバージョンを表示」をクリックしてウェブ画面に飛ぶと下側右にカテゴリー別の過去掲載記事が表示されますので、そちらもご利用ください。
2008年11月20日木曜日
神田 その田 ひれ酒
極上のひれ酒をしこたま堪能する一夜を過ごした。
場所は神田にある「その田」。天然のふぐを鮮やかに料理する老舗だ。今年の春にも訪ねたが、シーズン到来を待って旧友3名で出かけた。
友人同士で天然ふぐを攻める、などと書くとリッチな感じだが、実はこの「その田」、中学高校の同級生が若旦那として活躍中。彼を頼ってお邪魔したのが真相だ。
独特な風情漂う神田界隈は、ぶらぶら歩いていても、うまそうな料理を出しそうな店が目に付く。神田多町の路地に構える「その田」も店構えからして「きっちり真面目に仕事してまっせ」的な雰囲気。
端的に言って「東京っぽい店」だと思う。
イナカモノ的流行追っかけ路線とか、無理やり演出した和風モダンみたいな店が嫌いな私は、奇をてらわずどっしり構える店こそ真っ当に旨いモノを出すことを本能的に感じる。こちらの料理も当然のように美味しい。
頭の中に「今日は天然のフグを食べに行く」という情報をインプットした以上、私の脳の中には「旨いぞ、旨いぞ」という期待がヨダレとともに強まる。
旨いことを期待して、旨いことを予定しちゃっている脳に対して、予想以上に「旨いなあ」という印象を植え付けるのは凄いことだと思う。
熟睡している亀田兄弟なら私でもノックアウトできるが、リングの上で構えている亀田兄弟には太刀打ちできない。
まったく変な例えだが、そういうことだ。
「旨いだろうな」と身構えている私が「凄く旨いなあ」と唸ってしまうのだから、単純明快に旨いのだろう。
こんな回りくどい表現をしたくなったのは、この店の唐揚げに感動したから。
携帯画像ではうまく伝わらないが、大きくブツ切りされたふぐの唐揚げだ。今年食べたものの中でも、間違いなくベスト5に入る美味しさだった。
下味の付け方、塩加減、衣の量や揚げ加減、すべてバッチリ。私には、すだちもまったく不要。そのままで完璧に完成している。カーネルサンダースに食べさせてあげたい極上の逸品だった。
ジューシーかつプリッとした身の感触が最高。また、軟骨周りや骨と筋肉をつなぐ腱のあたりだろうか、いわゆるコラーゲン関係も実に食感がセクシー。
養殖フグのコラーゲンは、べちょっとブヨブヨなのに対して天然モノは、プルプリッって感じで変な後味も一切無い。養殖と天然の違いがもっとも分かる部位のように感じた。
さてさて、ひれ酒だ。なんとも大ぶりのヒレを惜しげもなく使った酒飲みには感涙モノの一杯。あっと言う間に燗酒は色づき、色だけでなく、濃厚な香りが酒と絡み合って極楽気分。
この日は、やたらと燗酒とヒレをお代わりしまくって、約3時間ひれ酒を味わい続けた。すっかり酩酊。健康なことはつくづく有難い。
酔ったついでに、干しているヒレを見せてもらった。写真では分かりにくいが、思った以上に大きい。実際の海で泳いでいた力強さを感じる立派さだ。養殖物は小さいだけでなく、一種の奇形でいびつな形の物も多いらしい。
干して焼くことで相当縮んでしまうらしいが、この日、何度も出してもらったヒレは相当立派だったので、きっと富豪クラスのフグのヒレだったのだろう。
思い起こせば高校生の頃、早熟だった私にこの店の若旦那が、極上のヒレを進呈してくれたことがあった。
学校で人目を避けながらコソッと渡されたアルミホイル。怪しい取引のようだが、今はやりのクスリなどではない。中味は立派なふぐのヒレ。
大して呑めもしなかった私が「酒は熱燗に限るなあ」とかなんとか語っていたのを聞いて、気を効かせた彼が持ってきてくれた。
本物のひれ酒など知るよしもない私は、貴重なヒレを無駄にしてしまってはマズいとちょっとビビッたことを懐かしく思い出す。
あれから25年以上の年月が過ぎた。純情のかけらもない中年オヤジになったが、ひれ酒の味わいを堪能できる味覚と友人の有難さを痛感する感性だけは、あの頃より敏感になった気がする。
さすが同窓生のお店とあって、お育ちの良い上品なフグヒレちゃん達から「上等の河豚をいい仕事をして提供する」雰囲気が窺えますね。
返信削除カーネルサンダースに食べさせたい程とは、
どれだけ美味か伝わります。
画像からも伝わりますが、何といっても
記者様の文章中の一枚も二枚も上手な比喩にはいつも感服いたします。
肝同盟会員と致しましては、会長の記者様が宝石のような河豚の白子を召し上がったのか否か、気になって今夜はきっと眠れません…。
お褒めいただき恐縮でごございます!
返信削除この日は、ゆえあって極上ふぐ白子は
食べませんでした。。次回のお楽しみです。
キモ同士様におきましては、最近、物珍しいキモ類をご賞味なさいましたか?
神田その田さん、銀座おかやすさん、
返信削除どちらも、連れて行っていただいたのですが、あまりにも気に入り調べてみると、いずれもこちらのブログに。
ブログ文の読みやすさに、
食い入るよう拝見させていただいております。
momoさま
返信削除コメントありがとうございます!
星の数ほどある飲食店の中で、そんな奇遇もあるのですね。
お暇なときにでも覗いてください!