函館2日目。ゆっくり目覚めて朝風呂とサウナに死ぬほど入る。まぶしい朝日の中で海辺の露天風呂に浮かんでいる気分は最高だ。天気も良い。
ホテルの朝食を食べてしまうといろいろ計画が狂うので、泣く泣くパスする。
10時過ぎに宿を出て朝市方面に向かう。いいかげんな商売をする店も多い朝市だけに安直に買い物をすることは禁物だ。以前から信頼できる小さなカニ屋「H商店」があるので、私はカニの注文はその店に決めている。
タラバにしても毛ガニにしても、この店で購入するカニは身がぎっしりした一級品ばかり。東京からでも安心して頼める。プライベートの恩人がカニ好きなので、600グラム超の身入りギッシリの上物毛ガニを2はい発送する。
自宅用には、しまホッケとイクラ、ウニの一夜干しを送る。カニは現地で食べるから充分だ。この店の店頭では、オヤジさんの講釈を聴きながら、相当な量のタラバと毛ガニを試食できるのもまた嬉しい。いっぱい買う気を見せると試食もいっぱいできる。
まだ11時前だが、朝飯抜きの私は市場の外れにある大箱の魚介専門居酒屋「海光房」に行く。朝昼兼用の1件目だ。朝早くから居酒屋メニューが頼める上に、朝市のどんぶり専門食堂のように狭くないのが良い。
コストパフォーマンスが悪い店だが、朝からお酒グビグビ、タバコすぱすぱの不良中年にとっては使い勝手がいい。もっと旨い店はいっぱいあるが、ついつい何度も利用している。
タラコの醤油漬けといくらの醤油漬けを頼んで生ビール、そして焼酎へ。ウニもつまみにもらって、根ホッケが焼き上がるのを待つ。いい時間だ。
ホッケ登場。ジュウジューと旨そうだ。アツアツを頬ばる。うーん、旨くない。残念。下手な冷凍物だったのか、ちっとも旨くない。外した。
仕方ないので、別な注文を考える。今日も生モノ、塩漬けモノばかりの一日になりそうなので、あえてカニ甲羅グラタンを注文してみる。寒いし、いい選択だと一人悦に入って、運ばれてくるのを待つ。
うーん、旨くない。ぼんやりとした味付け。おまけに科学の味だ。失敗。まあクズガニの廃品利用のような一品を注文した私の負けだ。今回は、ちょっと運が悪い場面が多い旅行だ。仕切り直し。
そそくさと朝市どんぶり横町へ。昔ながらの食堂が市場の再開発で寄せ集められ、新しい建物の中に集合している場所だ。
この日は「茶夢」という店に行く。ドンブリメニューだけでなく、イカわた系の珍味をひとつのウリにする店だ。可愛いらしい店名とは相容れないオヤジが、あれこれ客にサービス品を出すことで知る人ぞ知る店。
イカごろセットを注文。イカのワタの麹漬けと醤油漬けが出てくる。死ぬほどウマい。
イカわたとえば新鮮でも虫がいることが多いが、そんなことなどどうでもよくなる味。いつもキモ系をアレコレ食べている私だが、冷静にランク付けしてみても、この店のイカわた麹漬けは相当上位に食い込みそうだ。
わたばかりでは、イカに失礼なので、ちゃんとイカ刺しも注文した。細く切られた新鮮なイカの上に少しの大根おろしとショウガが盛られており、その上から醤油をぶっかけて味わうスタイル。これまたウマい。
ついでに新鮮なイカの刺身をわた系の漬け汁とまぶして食べてもオツな味がする。お湯割り焼酎がぐいぐい進む。
サービスでイカの塩辛と、炒めたイカわたが登場。炒めたイカわたが実にクリーミー。結構な甘みと少しばかりの苦みが相まって、大人でよかったとつくづく思う。焼酎も進んで、まだ昼前なのにすっかり出来上がってきた。
そろそろ朝飯にしようと、ご飯モノ、すなわちどんぶり選びが頭を支配する。
しばしの考察のあと、決定したのは「カニイクラ丼」。この時期の北海道では、何はさておきイクラをかっこまなければ意味がない。ただ、この時は、イカわた系の漬け汁とか塩辛が残っていたので、貴重な味わいを白ご飯で堪能したい気分だった。
ただ、富豪記者を名乗る以上、この期に及んで、「ライス下さい」などとは言えない。やはりナントカ丼を頼まないといかんと思う。
綺麗に白ご飯が残せる具材は何かという点で考え込む。イクラ丼やウニ丼だと、どうしても、白ご飯がイクラやウニの成分を吸い込んでしまう気がする。その点、茹でガニが乗っかるだけのカニ丼なら、カニ棒を酒のつまみに食べたあとで、汚れなき白ご飯をキープできる。
イクラは食べたい。汚れなき白ご飯は残したいー。この欲求を満たしてくれるのが「カニイクラ丼だ。カニをつまみに本日の午前酒を終了する。そして、散らばらないようにどんぶりの半分を占拠するイクラをご飯とともに味わう。まさに天国。
そして、半分ほどの白ご飯が綺麗に残った。イカわたが漬かっていた残り汁の出番だ。白ご飯にかけてみる。いやはやウットリの味。
米も残り汁も、単体だけでは何かと力量不足。それなのに合わさることで単体の時より100倍素晴らしい味わいに変化した。まさにマリアージュだ。今度誰かの結婚式のスピーチで、他人同士が合わさることで素晴らしい世界が広がるという例えにこの話をしようと思った。
私の変な食べ方を目撃した店のオヤジがニンマリしていたので、私もなんとなく嬉しい気分がした。ああ満腹。
その後、五稜郭のデパートでプライベートの恩人にお歳暮を手配し、その後、観光名所の金森倉庫群を散歩。必死に腹ごなしをする。もう世の中はクリスマスシーズンのようで、金森倉庫でもサンタが乱舞していた。
すっかり冷えたので、宿に戻ってサウナと露天風呂ざんまいの時間を過ごす。なんとも贅沢な休日だ。函館は観光地だろうが繁華街だろうが温泉だろうが、みんな小さくまとまっているので、やはり私にとっては魅力的だ。
今回の旅も、この段階まで、わずか24時間滞在しただけで相当満足していることに気付いた。美味しい寿司屋に行ってないこと以外は充分満喫。逆に言えば、美味しい寿司屋に行けば完結ということに気付く。
まだ夕方だ。羽田への最終便は確か夜の8時頃だ。空港に近い湯の川エリアの寿司屋に早めに行けば、のんびり飲み食いしても最終便で帰れる。もう温泉もふやけるほど入ったし、そこそこ珍味も食べた。連休最終日にバタバタ帰宅するより今日中に帰ったほうがラクだと思い始める。
温泉を十二分に堪能し、部屋に帰って、携帯から最終便の空席状況をチェック。残席に余裕ありとのことで、そのまま予約変更。ITの進化ってつくづく便利だ。
ホテルを夕方5時過ぎにチェックアウトすることになったが、さすがにこの日の1泊分は返金はしてくれない。まあ、夕食ナシの安い料金だったので仕方ない。
じっくり温泉も入れたし、朝早くにチェックアウトする必要もなかったし悪くない。考えてみれば、夜便で帰る予定の海外旅行の際は、いつも夜までの滞在でも1泊分フルに予約してギリギリまで部屋を使っている。それと同じだ。温泉地から空港が非常に近い函館なら、こんなホテルの使い方は結構アリだろう。
5時過ぎに湯の川の「雷門鮨」に行く。奇をてらったものはないが全体に安定して高水準の寿司を出す。大将や息子さんらしき二番手さんのアタリもソフトで、まさに間違いのないお店。
またボタンエビとサーモンをつまみに飲み始める。そしてスジコを肴に燗酒に移行。今が旬の白子ポン酢も注文。北海道ではなぜかタチポンと呼ばれるが、さすが北国のタチポン、ネットリうっとりしました。
戸井の本マグロ赤身や最上級ズワイのカニ棒を追加して呑み続ける。赤ホヤの塩辛も出てきた。酒が止まらない。
そして握りへ。お決まりのウニは軍艦で出されたのだが、ついつい海苔なしでも2貫追加する。
あれこれ食べたが、抜群だったのが松皮ガレイ。東京ではまずお目にかからない味が濃い旨味タップリの一品。画像の右側はエンガワ。これまた凝縮された濃い甘みが官能的でした。
気がつけばもうすぐ7時。最終便は7時40分出発。さすがにこれ以上粘れないので、タクシーを呼んでもらって空港へ。ほんの5分ちょっとで空港に着く。
内心少し焦っていたのだが、搭乗手続きを終えても、出発までまだ30分もある。小さい空港だし、搭乗ゲートも数が少なく、この時間に他の便はなく空港内は閑散としている。拍子抜けするほど余裕がある。
結局、食べ忘れた唯一の北海道特産品を喫茶店で舐めながら搭乗案内を待った。
1泊にしては、妙に充実した突発旅行だった。勝手が分かる場所に行くと、なにぶんにもロスがない。たまにはこういう時間の使い方もいいものだ。というか、しょっちゅうこんなことをしている気もする・・・。
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