2009年3月31日火曜日

名残りフグ

4月の声を聞けばすっかり冬っぽいものとはオサラバだが、3月の最後にフグを味わってきた。

神田にある「その田」へ友人と連れだってお邪魔した。子どもの頃からの同級生の実家でもあり、突然の訪問にも気安く応じてくれたのが有難い。

フグを食べようと意気込んで出かけたわけではなく、神田近辺にいたので覗いてみたというのが正直なところだ。

この店でも4月初頭にはフグ料理はおしまいになる。まさに名残りフグだ。

前菜に続いて、充分というか結構たくさんのフグ刺しを出してもらった。専門店だけあって、ポン酢や薬味も丁寧な感じで、気持ちが豊かになる。

歯ごたえ、旨味ともに上質なフグを肴にグビグビと呑むヒレ酒は、大げさではなくひとときの天国だろう。ちょっと風邪気味の私の体は、極上ヒレ酒でじゅんわりと癒される。

特筆すべきは、白子焼き。時期も終わりだからだろうか、白子も大ぶり。塩焼きで堪能する天然フグの白子は、珍味界広しといえ不動のスターだと思う。

大ぶりの白子のネットリ感、溢れるコクは魔女に誘惑されたような素晴らしい世界に私を誘う(魔女に誘惑されたことはないが・・)。

混ぜ合わせたり、かき回したり、ぐちゃぐちゃと料理するよりも、シンプルこそ美味という真理をこれほど体現している食べ物はないと思った。

この日は、サワラだったか、切り身の魚の西京焼きや天ぷらも味わった。お座敷天ぷらの看板も掲げる店だけに、天ぷらのネタも味が濃い上質なものが吟味されており、なによりも仕事ぶりが丁寧だ。

この店の若旦那は同級生であり、おまけに野球部仲間でもあったので、当然、私の寸評は贔屓の引き倒しになる。

でも逆に言えば、彼の性格が一本気で真面目であることを知っているのは旧友だからこそだ。大げさではなく、料理は作る人の人格を反映する。彼の手がける料理が丁寧で誠実なことは間違いないと思う。

ここまで誉めておけば、次にどんなサービスが待っているか楽しみだ・・・。

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