2009年4月6日月曜日

春こそ熱い酒

まだまだ春とは思えない寒い日が多い。花冷えという言葉があるぐらいだから仕方ないが、私が個人的に春を実感できない理由のひとつが相変わらずお燗酒を呑んでいること。

まだ冷酒が飲みたいとは思えない。ウナギの白焼きを新鮮なワサビで堪能しながら味わう冷酒が大好きなように、TPOによっては冷酒も愛飲するのだが、まだまだ燗酒の気分が続いている。

先日、銀座のおでん屋さん「力」に行った。この日も結局、燗酒のお世話になった。酢じめしたアジをたっぷりの大根おろしとポン酢で味わう「力風アジたたき」もお燗、真っ黒な塩辛「黒造り」もお燗、穴子の稚魚「のれそれ」もお燗。キューッという感じだ。

あっさりしながらもしっかりダシで味付けされた竹の子のおでんだってお燗がバッチリ。ウィーッて感じだ。名古屋みたいな土手鍋風味噌べったりの牛すじ串も強引にお燗だ。デヒャーッという感じだ。

お燗酒って、飲食店のアルコールメニューの中でごくごく地味に表記されている点がとても格好いい気がする。

エリアごとの仰々しい名前の日本酒、それも大吟醸とか純米とか精米歩合がどうしたとか杜氏がどうしたとか、分厚い酒メニューにはお店自慢の冷酒が立派に羅列されていることが多い。

そんな店でもお燗酒はたいてい、何もウンチクが表記されず、シレッとした感じで小さく載っている。なかにはメニューにわざわざ書いていないことさえある。そのさりげない感じが格好いい。威張ってない感じがイキだ。

お酒を注文する時に「なんたらカンタラの純米吟醸をお願いします」とか言うよりも「お銚子一本、熱めでね」とつぶやくほうが素敵な人みたいな気がする。思い過ごしだろうか。。

別な日、某寿司店で悩んだ末にまたまたお燗酒。脂ののったイサキの刺身、旨味タップリのカレイの刺身、ナマのトリ貝の刺身・・・。お燗酒は大活躍だ。ウヒョヒョッって感じだ。

上等な車海老の茹でたてを握ってもらってパクつく。コハダの握りもじっくり味わう。鉄分の濃い味が官能的な本マグロの赤身も握ってもらう。やっぱりお燗だ。ジョワーって感じだ。

この手の肴を楽しみながら、口の中にお燗酒が広がると、幸せという言葉は、この瞬間を表わすものだと一人大げさにうなづくことになる。

今日は何を肴に呑むのだろう。そんなことばかり毎日朝から考えている気がする。

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