2009年8月13日木曜日

ウナギ 大江戸

7月の終わりにウナギを外しまくった話を書いた。安直に買ってしまった蒲焼きや適当に入った店の鰻重などがダメダメ続きでまいった。

8月の頭に、ちゃんと真面目にウナギと向き合おうと決意してわざわざ日本橋まで出かけた。

新しい下着を身にまとい、散髪も済ませて(ウソです)わざわざ訪ねた店は「大江戸」という老舗。他にも名店はいくつもあるが、予約できないとか、酒飲みにはあまりにメニューが少ないとか、いろんな要素を考えて選んだ。

ウナギの名店の中には、酒肴メニューは邪道とばかりに何も用意していないところもある。まともなウナギなら調理に時間がかかる。その間、ただ修行僧のように待たせるのではなく、楽しく呑ませてくれた方が良心的だと思う。

下戸で小食ならいざ知らず、私の場合、肴がなきゃ酒が呑めないし、結構な量の肴を食べたからってメインをおろそかにするほど無粋でもない。

あれこれつまみを楽しみながら酒を楽しみ、その後、白焼きを愛でながら酒を仕上げて、鰻重をかっ込む。これが理想だ。

そんな基準で選んだ「大江戸」。お金持ちは玄関正面の入口からお座敷に行く。私は、玄関右手の“食堂”と書かれた扉を開く。

私の弁護のために書くと、お座敷でどうでもいいコース料理を食べるより、アラカルトでじゃかじゃか注文したかったので、「非お金持ち用入口」をくぐったわけだ。

席ごとにのれんが掛かった面白い造りなので個室感覚でしっぽりできる。割と酒肴メニューが多いので、このパターンは正解だ。

キモの煮付けがあると聞いたので、キモ焼きではなく、そちらを頼む。カツオのタタキやイカ刺しにコノワタがトッピングされた一品などを頼む。

ウナギ屋さんのつまみだ。うざくも外せない。さっぱりと夏のウナギモードだ。冷酒が進む。

この店、冷酒メニューが豊富。ウナギ屋というジャンルにしては充分すぎるほどラインナップされている。1合づつあれこれ頼む。

1合といっても、片口で供される冷酒は7勺程度か。ちょっと少ない。だからいっぱい注文してしまう。酔う。

そうこうしているうちに、白焼きが登場。ウットリする。「冷酒に合う肴コンテスト」で20年連続1位に輝いているだけに最高だ。

そんなコンテスト、聞いたことがない人も多いと思うが、それもそのはず、私の頭の中で随時開催されているコンテストだ。私しか知らない。

脂ののった白焼きにワサビをしっかり載せて醤油で味わう。ガツガツ噛むと言うより、軽めに歯を立てて、ほっこり崩れて行く身を惜しむかのように口の中で転がす。

舌の上で広がりかける脂をワサビがせき止める。醤油が混ざることで油とワサビは風味という名に変身する。そこにキンと冷えた辛口の純米酒あたりを流し込む。

天国だと思う。抱かれてもいいと思う。

こちらの店は鰻重がウナギの量の違いで確か5段階ほどに分かれていた。私は上から2番目のサイズを選ぶ。一番デカイのにしたかったが、なんかオトナとして恥ずかしかったので仕方ない。

フタを開けるとご飯が見えないほどウナギが鎮座している。目の保養だ。見ているだけでウットリする。今の私には、平凡パンチとかのグラビアより、鰻重を眺めているほうが興奮する。

ムシャムシャ食べる。タレが甘すぎず主張しすぎず美味しい。ご飯も柔らかくなく美味しい。肝心のウナギも率直に美味しい。四の五の言っても仕方ない。まったく問題なし。

もっと美味しい店もあるだろうが、トータルな居心地やサイドメニューの感じなどを考えると充分満足できた。失敗続きだった今年のウナギ戦線、ちゃんとした路線に戻って来たような気がする。

鰻重の最後にはご飯だけ残ってしまいがちだが、今回はウナギたっぷりだったので、ウナギ自体も最後まで付き合ってくれた。幸福だったのでついつい撮影。

最後にひとつ、余計なことを書いてみる。キモまでひっくるめてウナギをいっぱい食べても、昔のように“翌朝の反応”がないことが少し寂しい。

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