15年以上前の話だが、菅直人代議士にインタビューした際に印象に残ったセリフを言われた。
「大臣なんて、パフェの上に載っかったチェリーみたいなもの」。
話の前後をよく覚えていないのだが、時の自民党政権への批評の中で出てきた発言だ。
パフェの上のチェリーとは、官僚組織に担がれただけのお飾り大臣という意味だが、その後、菅氏は非自民連立政権で厚生大臣に就任。
チェリーになるか、パフェをコントロールするスプーンになるか注目していたが、薬害エイズ問題で厚生官僚と戦って名を上げたことは有名。
さて、いまや菅氏も内閣副総理大臣。国家戦略担当という所管省庁を持たない役割が、それこそチェリーみたいなのがちょっと皮肉ではある。
ところで、民主党政権全体が「大臣の非チェリー化」を目指している。大臣だけでなく、かつては“役所の盲腸”とすら言われた政務次官の発展系である「副大臣」、「政務官」ポストもチェリーではなく、役所をひっかきまわすスプーンを目指して活動中。
政府に100人以上の国会議員を参画させて脱官僚依存を推進するのが鳩山政権の公約であり、徐々にその影響は出始めている。
わが社の取材現場でも、それなりに専門的な分野の質問に、就任まもない政務官が役人に頼らず誠実に対応することがあるらしい。以前の常識では考えられない変化だ。
そうは言っても、やれ長妻厚労相が役人の軍門に下ったとか、藤井財務相はしょせん官僚体質がベースだとか、メディアの新政権タタキは少しずつ鮮明になってきた。
3か月やそこらで急激にすべてが変わるはずはないし、変化の兆しはメディア陣営にいる人間なら誰もが分かっているはずなのにバッシングが増えてきた。
それが権力の監視役としてのマスコミの使命だという理屈もあるだろう。でも実際には、既得権益にズブズブ漬かって構造転換を忌み嫌う巨大マスコミの膿みたいなものが垣間見える。
着々と進みつつある記者クラブ廃止、記者会見のオープン化などという話は大手新聞社にとっては許し難いことであり、癒着こそが取材力という誤った認識に支配されている“小役人的記者”は早くも自民党有力者に一種の秋波を送り始めている。
極端な話、あらゆる分野で強固な基盤や権威を誇っている組織は、ほぼ間違いなく既得権益の上で繁栄を享受している。
半世紀以上続いた旧政権や取り巻く仕組みとのズブズブ関係を抜きに現在の姿は考えられないわけだ。
そういう意味では、民主党政権に対して個人個人が寄せる視線と企業や団体という組織が寄せる視線は随分と違う。
私自身、一個人としての見方と中小企業経営者としての見方とジャーナリスティックな見方とではすべて一致しない。まだまだ掴み所がない。
「ぬらりひょん」みたいな感じだ。
変な話、“民主党ウオッチング”は国民全体の課題みたいなもの。閉そく感の打破に完全に行き詰まった自民党政権を退場させた以上、それなりに期待しないと仕方ない。
バッシングありきの批判は今しばらく避けたほうが“自民ゾンビ復活”という事態は避けられるだろう。
ちなみに衆議院の各委員会の人員配置や日本郵政の後任社長人事を見るに連れ、つくづく感じるのはただ一点。
「小沢政権」。
このひとことに尽きる。
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