函館に何度も行ってるせいで「函館未体験」が少しづつ減っていく。昨年夏には、なぜか未体験だった夜景も見にいった。ロープウェーで函館山に登り宝石のような眺めにちょっと感動した。ハセガワストアの豚肉なのになぜか「焼鳥弁当」も昨年体験してしまった。
残りの未体験をあげるなら北島三郎記念館と地元ファーストフード「ラッキーピエロ」に行くことだろうか。
今回の初体験は、料亭「富茂登」。函館山の“ふもと”に立地することが店名の由来。ガイドブックとかでは定番の店だが、端的に言ってちゃんとした店らしい。
漁師料理とかいうワケのわかんない言い訳で雑な食べ物を出すような店が多い港町にあっては貴重な店。
基本はコース料理。かといって予約の際にアレコレ希望を伝えれば相談にのってくれる程度の柔軟さはある。
ホッケの西京焼きがウマいという評判を聞いたので、それを楽しみに出かけた。ついでに毛ガニとイカ刺しがあれば文句ないので、その他はおまかせにした。
料亭と名乗るだけに風情のある造り。実に渋い。雪がガンガン降っていてあまり外から眺めることは出来なかったが、間違いなく地元名士御用達だろう。
函館支店長が本社から来た重役を案内するような光景が目に浮かぶ感じ。
さて実際の印象は、ひとこと「丁寧」。これに尽きる。味付けや盛りつけも品がある。函館で豪快に魚貝攻め!というノリだとイメージが違うが、しっぽりと函館の夜を過ごすのなら実に快適で風流。
前菜、刺身類も文句なし。お椀の味付けも丁寧な印象。そして待望のホッケの西京漬けが登場。
ホッケという魚はどこにいっても低く見られている。ホッケでも食うか、ホッケしかないの・・等々。「でも・しか」系の魚だが、実に旨い魚だと思う。東京の居酒屋で干からびたボソボソのホッケしか知らなければ仕方ないが、北海道でマトモなホッケに出会うと心底感動する。
とはいっても、しょせんは開きにして豪快に焼くか、気の効いた店が刺身で供するのがせいぜいだろう。西京漬けで食べる機会などなかった。
元々が脂ののったしっとりした魚だ。西京漬けにすることで旨味が濃縮されたような感じで美味。奇をてらった味ではないが、西京味噌が強すぎず、魚本来のジューシーさが維持されていて飽きない味。取り寄せ注文をしたいぐらいの味だ。
ホッケより印象的だったのがイカそうめん。
函館ではまさに飽きるほど遭遇するイカそうめんが、ここでは異質な料理に変身していた。
特製ダレ、卵黄、シソの葉、大根おろし、なめこ、それに摺ったオクラのネバネバが加わる。これをグジャグジャとかき混ぜて口に運べば、イカそうめんの革命みたいな感じ。
函館のイカは新鮮で旨い。そのせいでイカソーメンも、醤油かソーメンつゆ、薬味はわさびかショウガ、せいぜい山わさびというパターンが定番。単純明快に食べるものでしかないのだが、「富茂登」の場合、さすがに料亭を名乗るだけあって独特なアレンジ。これはこれで大満足だった。
毛ガニも包丁の入れ方がやたらと丁寧で実に食べやすい。同じサイズの毛ガニでも包丁の入り方で食べられる量は自ずと変わる。ミソをたっぷりトッピングして幸福感に沈んだ。
この他に地元産のアンコウをふんだんに使ったアンコウ鍋が登場。予算から考えても質量ともに想像以上。さすがだ。
翌朝は上品路線と決別し、駅前の朝市でガッツリ系の朝食。ウニ、いくら、カニ丼だ。このほかにハラス焼き、ボタンエビの刺身、イカ刺しを頼んで朝っぱらから生ビール。
呑みたい気分じゃなくても、そんなラインナップが目の前に運ばれれば、どう頑張っても肝臓の活動開始を止めることは出来ない。
なんとなく、ガッツリ系の魚介攻めをしないと函館っぽい感じがしない。それが私の習性だ。今回はガッツリ、ワシワシ食べたのはこの朝食だけ。それ以外は上品路線だった。これも加齢のせいだろうか。
結局、いつもと同様、食べてばかりの旅だった。雪のせいで歩き回れなかったせいで、しっかり体重が増えた。上品だろうとガッツリだろうと体重は関係ないようだ。
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