2011年6月15日水曜日

座敷わらし

ときどきこのブログにコメントをいただく。有難いことだが、1ヶ月ほど前にいただいたコメントを見過ごしてしまった。反省。

いろいろシステムを研究して、コメントをもらったらその旨メールが自分宛に届くように今更ながら設定することができた。今後はちゃんと反応できます。

見過ごしてしまったコメントは障害を持つお子さんを授かったお父さんからだったので、自分の経験を少しでもお伝えしたかったのだが、ボケッとしていて失礼してしまった。

突然の境遇の変化に困惑するお気持ちは痛いほど分かる。早々に憂い無く受入れられる人など存在しないはずだから、どうやって折り合いを付けていくかは大事な問題。

私だって大した経験があるわけではない。扱いやすかった上の子と違ってテンヤワンヤだ。これからぶつかるであろう色々な壁が正直憂鬱で仕方がない時もある。そうは言っても、子育ての壁なんてものは健常、障害に関係なく共通だろうからなるべく考えないようにしている。

ということで、今日は久しぶりにわが家のダウンちゃんの話を書く。

ダウン症の最大の特徴は発達が遅いこと。だからトピックが少なくて、ここで進化?を書こうと思ってもあまり変化はない。

とはいえ、人様に読んでもらうほどの進化ではなくても、当事者にとっては結構大きく進歩している部分もある。親としてはノロさにいらつきながらも嬉しいし、励みになる。

次に誕生日が来れば5歳になるのだが、相変わらず話さない。いや、本人は話しているつもりだ。私の携帯電話もスキをみせるとイジリ倒される。いつまでも会話のフリをモゴモゴしている。電話ごっこだ。

「ウンウン」と「バイバイ」ははっきり口にしているが、あとはウニャウニャ言ってるだけだ。

ダウン症の子どもの言語発達は遅いのが普通だが、発声は遅れていても言語の理解自体は進んでいる。絵本に描かれたものを指さし、それが何であるかはたいてい理解している。親兄弟にしか分からない音声だが、確実にその対象物の名称を発声している。トテトはポテト、アーペンはラーメンを意味するのだが、私が苦手とするフランス語よりは充分解読可能だ。

先日、生後間もない頃から2歳になるまでお世話になった某大学病院でのダウン症専門の赤ちゃん体操に出かけていき、OBとしてダウン症の後輩達に希望の光?を振りまいてきたらしい。キチンとした姿勢で立って、しっかりとした歩調でずんずん歩く姿だけで、生後間もないダウンちゃん達には希望を持ってもらえる。調子に乗って踊ったりしたらしい。図に乗るところは誰に似たのだろう。

私自身、この集いを初めて見に行った時、キチンと椅子に座ってニコニコ幸せそうにしている2歳ぐらいのダウンちゃんの姿に大いに勇気づけられた。生まれて間もない頃は、情報に乏しく八方ふさがりだったから、この手の集いのおかげで随分と助けられた。

いっぱしの先輩になったウチのチビが、後に続く困惑状態の人達に少しでも役に立てるなら嬉しい。そう考えるとわが家のダウンちゃんは、ボケッと生きている私なんかより真っ当な使命を帯びて生きているのかもしれない。ちょっと綺麗事みたいだが、そう思うようにする。

ダウン症の子どもにとって先天的に性根の優しい性格は共通しているようで、同じ支援学校に通うお仲間も総じてポワンとした気分にさせてくれる。

先日、わが家のチビと二人で散歩に出かけた。ヤツは広い緑地公園で縦横無尽に探索に励む。落ちているゴミでも平気で手に取る危なっかしさには参る。葉っぱをちぎったり、カラスを追い回したり、蜘蛛の巣に手を突っ込んだり結構チャレンジャーだ。そう書くと微笑ましい親子のひと時のようだが、実際は戦争状態だ。汗だくになる。私にとってのメリットは運動不足解消だけである

知らない人に勝手に手を振って愛想を振りまくのも困る。不思議と喜んで応えてくれそうな人に手を振っているようにも見える。変なテレパシー能力でもあるのだろうか。

この日も突然、公園のベンチでグタっと寂しげにしていたお爺さんのもとに駆け寄り、横に座って手を握って見つめ合っている。有難いことにお爺さんは喜んでくれた。

本当は迷惑だったかもしれないが、アイツは「勝手気ままな癒しオーラ攻撃」が得意技なので許してもらおう。

最近は、少しづつだが、分別がつき始めた。皿やコップを面白がって引っ繰り返さなくなったし、痛い時に泣かずに耐える姿勢も見せ始めた。絵本を持ってきて読めとせがむこともできるようになったし、テレビを見たい時もわざわざ別な場所からリモコンを持ってきた上でアピールする。

幼児用安全対策商品である「通せんぼゲート」も、台を持ってきて安々とロックを解除して突破するようになった。こちらが咳き込んだりすれば、「でーじょっぶ?」(大丈夫?)と尋ねてくれるようになった。


食事や飲み物のお代わり要求もスムーズになった。不要なもの、嫌いなことをすべて「ヤー!」と強い口調で叫んでいた悪いクセも改善。「いらない」と冷静に伝達できるようになった。

まあ家族以外には「いらない」は「ふにゃにゃい」にしか聞こえないが随分と進歩した。

トイレで大に励む時には、なぜか私だけに変なプレイ?をせがむクセがある。以前、便秘気味だった時に便器に座るヤツのへその下あたりをぐりぐりと手のひらでマッサージしたことが気に入ったらしく、いつもせがまれる。

不思議と母親や姉には要求しない。妙な習慣がついてしまったものだ。どうやら、そのぐりぐり加減にもヤツの好みがあるようで、母親だと微妙な力加減が気に入らないらしい。

私のぐりぐり攻撃を受けると、温泉宿に置かれたマッサージチェアに座るオッサンのような表情になる。おまけに満足すると「オッケー」とはっきり告げる。発達の一環ではあるが、私にとっては不気味な作業を担わされて正直迷惑ではある。

どうせならトイレよりベッドで、美しい女性の別な部位をグリグリ攻撃したいのだが、現実はそうもいかない。

天真爛漫なわが家のダウンちゃんは、規則正しく遊んでばかりなので、早く寝ちゃうと翌朝5時過ぎには目を覚ます。結構な頻度でノコノコ私の寝室にやってくる。

不器用にゴソゴソガチャガチャとドアノブと戦い、なんとか扉が開くと暗がりをものともせず私の顔のあたりまで突入する。

一人ぐっすりと熟睡している私は、暗がりにボンヤリ登場するヤツの姿と動きが「座敷わらし」みたいで、いつも本気でギョっとする。

おまけに最近は、ちょっとした金属音を耳にすると仏様に手を合わせるかのように合掌ポーズをするクセがある。明け方の部屋でそんな格好をされるとホントに恐い。

自分の子どもの姿なのに妖怪に見えてビビってしまう私だ。でも拝む姿がなかなかサマになっている。変なオーラもあるみたいだし、「仏教業界初のダウン症坊主を目指す」という壮大なプロデュース計画を企もうかと考えたくなる。

ちなみに、座敷わらし伝説は、その家に幸福とか繁栄をもたらすのが通説であり、いなくなっちゃうと没落するというオチがついてまわる。

恵比寿様や福助とか、日本中に伝わる福子伝説のルーツを以前に書いたことがある。いずれも元をたどると障害児やそれを取り巻く周囲の人の奮闘ぶりにつながるという内容だ。

勝手な想像だが、座敷わらしの話も障害児を授かってしまった家を巡る言い伝えがルーツにあるような気がする。

そう考えると、ウチの座敷わらしも貴重な存在なのかもしれない。私も拝まれているうちが花かもしれない。没落するのも困るから、いなくなられてもマズい。「座敷わらしが運んでくる繁栄」だってまだ実現してもらっていない。

そのうち、アイツの拝み倒し攻撃で億単位の宝くじを当てるつもりだ。そうなったらヤツも本物の座敷わらし
になる。休眠宗教法人でも買い叩いて、座敷わらし神社でも作って、アイツを神主に仕立てて非課税特権で大儲けだ!。幸運を呼ぶ座敷わらしグッズとかも作ってバンバン売りまくってみよう。

不謹慎な話になってしまった。

結局、邪念ばかり浮かぶ私の脳みそが問題だ。МRI検査では問題ないのだが、ついつい怪しい思考に頭が動く。障害児を持つ親になると多くの人が人格者になるらしいが、私の場合、どうにも情けない。

銀座あたりに出かれば、シュっとした顔を作って格好つけていればいいものを、美しい女性を相手にスペシャルな猥談に命を懸ける。おまけに年齢のせいか、内容がどんどんエスカレートしている。

ちっとも進化をしないのは私かもしれない。

4 件のコメント:

  1. チビちゃん、最高です!子どもにあったかいものもらいますよね。  まめ

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  2. まめさま

    コメント有り難うございます。
    不思議な話ですが、
    アイツはなんとも珍妙なオーラを
    持っているようです。

    コンともよろしくお願いします。

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  3. こんにちは。あの父親です。
    過去記事へのコメントだったので、
    特に返事を期待する訳でもなく、
    まだ誰にも話せない状況だったので、
    はけ口にしてしまいました。すいません。

    先日で4ヶ月が経ち、少し落ち着いてきた
    気がしています。最近はそれなりに可愛いと
    思えるようになりました。
    この先の不安は当然ながらありますが、
    ひとまず、ちっぽけな自尊心は失わず、
    目先の事を考えて、ぼちぼちやっていこうと
    思っています。

    私も無性に、普段は買わない宝くじなど買って
    みようかと思いました。不思議ですね。

    因みには私は、オールドパーではなく、
    シングルモルトのアイラ系が好みですが、
    確かに「響」には浮気心をくすぐられます。

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  4. コメント有難うございます。
    はけ口、とても大事だと思います。
    無理に精神論だけで受け入れようとしても限界はありますよね。

    ぼちぼち、それが結局一番ピンとくるイメージではないでしょうか。

    上の子が大きくなるにつれ、もっともっと赤ちゃんのままでいてくれ、と思っていましたが、我が家のダウンちゃんは、未だに赤ちゃん的かわいさをキープし続けていて、それはそれで面白くもあります。

    すごくノロいですが、少しづつでも確実に成長していくので、それはそれでアッという間に大きくなっちゃうコよりも面白い部分もあります。

    宝くじにお酒、がんがんやりましょうよ。
    私もゆうべは2時半まで痛飲して気晴らししてました。

    必ず、面白い部や、これもアリだなと思えることがこれからたくさん出てきます。いやされる場面にもたくさん遭遇します。

    可能な限りで面白がるぐらいの割り切りが出てきたら結構悪くないですよ。

    なんか偉そうに書いてしまいましたが、お気を悪くなさらずに、またこんな雑文でも除きに来てください。

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