体調不良だったある晩、酒も飲まずに「ローマの休日」を見た。わが家にはホームシアターが2箇所に設置してある。ちょっと富豪っぽい。
100インチと80インチなので、凄く本格的というほどではないが、一応それぞれサラウンドスピーカーも設置してある。その気になって見れば、かなり映画の世界に没頭できる。
子どもの頃、テレビの洋画劇場とかで、昔の映画を随分見せられた記憶がある。母親の思い出の映画だったりすると、半ば強制的に見るように段取られていた。
ジュリー・アンドリュースの「サウンド・オブ・ミュージック」とか、ウィリアム・ホールデンの「慕情」とか1950年代の映画だ。「ローマの休日」もそのひとつ。
私の場合、子どもの頃から故郷の街で「グレゴリー・ペックそっくり」と言われて育ったこともあり(大ウソです)、この映画には思い入れがある。数年に一度は見たくなる。
いまさら白黒映画は見る気にならないが、この映画の不思議なところは、モノクロであることが気にならない点だ。なんでだろう。普通の色彩感覚の中で見ているような感じがある。ストーリー性、役者の輝きを始め映画の出来すべてが高い次元にあるから違和感がないのだろうか。
先日は、同じくオードリー・ヘップバーンの「ファニーフェイス」という映画を見たのだが、カラーなのにちっとも見ていて身が入らない。ストーリーのペケペケ感と相手役のフレッド・アステアが年を取りすぎているのが気になって、結局途中でやめてしまった。
「ローマの休日」はどう逆立ちしてもオードリー・ヘップバーンの映画として認知されている。今更何を言うかという感じだが、今回見ていて印象的だったのはグレゴリー・ペックの素晴らしさだ。
実にいい感じだ。知らないフリして王女をパパラッチして一儲けしようとするマスコミ人のうさん臭さ、図らずも王女に恋をしそうになる段階の戸惑い、その後の別れに至るまでの男の揺れ動く心理がバッチリ表現されている。
「ホレてまうやんけ」
「ホレてしもうたやんけ」
「お別れせにゃアカンのう」
「もうチューでけへんけど、忘れへんで」
という段階ごとの葛藤を実に巧みに演じている。ペックおそるべし。
たいていはオードリーだけが賞賛される映画だが、ポイントはペックだろう。ラストシーンで王女との共同会見を終えて一人宮殿を去っていくペックの素敵さには身震いする。
一度だけ王女のいた場所を振り返り、思い出を消すかのように改めて前を向いてゆったりと歩き出す。
ペッ~ク~!と叫びたくなった。
「抱かれたい!」と思った。
それにしても、この映画ほどハマリ役という言葉が当てはまる配役は無いと思う。どんな男優、どんな女優をもってきたところでこの素晴らしさにはつながらなかったと思う。
というより、この映画が作られた時、オードリーはまだ「どこぞの馬の骨」だったわけで、言ってみればぺーぺー。あくまで主役はペックだったのが事実だ。
実際、あの伝説のラストシーンだって、そういう目で見れば「ペックのための映画」を象徴するシーンだと思う。結果として、ペック的には「あの新人女に全部待ってかれちゃったぜい」と思ったはずだ。
妙に熱弁をかましてしまった。
話を変える。
もともと、私が映画に求めるものは、非日常的なストーリーに尽きる。48作すべてを何度も何度も見ている寅さんは別として、とくに洋画の場合、「奇想天外モノ」が好きだ。
B級ラブコメディというカテゴリーでくくられてしまうのだが、レンタルに飽きたらず、DVDをわざわざ買ってまで持っているのが、「スプラッシュ」と「ビッグ」だ。
トム・ハンクスが大御所俳優になる前の映画だ。彼の髪もふさふさだ。前者は人魚と恋に落ちる話。後者は子どもが間違って大人の身体を持ってしまい、大人社会で恋愛したり活躍する映画だ。
何度見ても心がウキウキする。「ショーシャンクの空に」とか「ライフ・イズ・ビューティフル」とか「ニュー・シネマ・パラダイス」とか、名作ランキング上位に来る映画もそれは素晴らしいのだが、私的には「B級ラブコメ」がイチオシだ。
成仏できなかった男が恋人を守りに出てくる「ゴースト」も大好き。何度見ても号泣する。ちょっとマイナーなところでは古代エジプトの女性がデパートのマネキンに乗り移って、現代人と恋をする「マネキン」も変な映画だけどおすすめ。
この映画はテーマ曲(「Nothing Gonna Stop Us」/STARSHIP)が最高で、いまだに「私が好きな洋楽トップ10」にランクインしている。残り9曲をすぐに思い出せないからいい加減な話ではあるが。
「ローマの休日」も考えてみれば非日常的だ。脱走した王女様とのデートだ。さすがに人魚やマネキンよりは現実的かもしれないが、絶対にあり得ない設定だ。
へたしたら人魚やマネキンのほうがあり得そうだ。そのぐらいスーパーVIP王女が夜中の路上で二枚目新聞記者に拾われるというシチュエーションには無理がある。
B級ラブコメの大原則が「そんなことアリエネ~」であるならば、ローマの休日はその元祖かもしれない。
最近はCGが進化したせいで、妙に大がかりなドッタンバッタン映画が増えているように思う。80年代の底抜けに明るい奇想天外ラブコメディー映画はもう流行らないのだろうか。
「ローマの休日」から随分と話がそれてしまった。
洋画、邦画を問わず、奇想天外ラブコメ映画のおすすめがあったらゼヒ教えてください。
富豪記者様
返信削除ホームシアターなんて素晴らしいですね。映画好きからしたら羨ましい限りです。
葉巻を燻らしながらグラスを片手に映画を観賞されるお姿が目に浮かびますが、そんな富豪記者様にお勧めのラブコメ映画は、まずジェーン・フォンダ&ロバート・レッドフォードの「裸足で散歩(1967年)」。ジェーン・フォンダがとにかくキュートです。
次に80年代ラブコメ黄金コンビ、ゴールディー・ホーン&カート・ラッセルの「潮風のいたずら(1988年)」もけっこうお好みかもしれません。
お暇なときにでも楽しんでみてください。
玉
玉さま
返信削除コメント有り難うございます。
情報提供いただき感謝です!
二つとも見たことがなかったので、楽しみです。
「ワンダとダイヤと優しいやつら」はご覧になったことありますか?未だでしたら是非。気持ち良く笑えて、ちょとホロリです。
返信削除美也子さま
返信削除存じませんでした。。
気持ちよく笑える映画ならさっそく見たいです。有り難うございました!