食事の時間は京都旅行において重要な要素だろう。日本料理の本場のような場所で、ファミレスや居酒屋だけで終わらせては切ない。
かといって、天下一品とか餃子の王将とか、関西発祥のファーストフードばかりに頼るのもオトナとしては寂しい。
そうはいいながら、今回の旅では、「夜の真っ当な食事」のために、あえて昼飯はジャンク系にした。
本当は鯖寿司とか、にしんそば、うどん、湯豆腐あたりの京都っぽい軽めのランチにしたかったのだが、昼時にそんな感じだと夜は和食以外が欲しくなりそうだったので、意識してガッツリランチにした。
この写真は「虎杖(いたどり)」という店で食べた「豚しゃぶカレー担々麺」だ。鶏のセセリ焼きをつまみ生ビールをグビグビ飲んでいるところに運ばれてきた。
これ以外に「小海老カレーつけ麺」にも手を出してみた。ジャンク極まる味だ。午前中から生ビールをオカワリした。そんな感じの味。
別な日のランチは銀閣寺近くの天下一品ラーメンで餃子に生ビールにあのクドいラーメンを頬ばった。
和食ディナーのために、あえてジャンクランチに挑むという涙ぐましい、というか、バカみたいなマネージメント?によって、夜は夜でしっかり京都っぽさを堪能できた。
錦市場からほど近い四条通を少し入ったところに佇む人気料理店が「じき 宮ざわ」。ハモと松茸の吸い物の下の画像は、この店の名物である焼き胡麻豆腐。
クリーミーで甘味が強くて、熱くてデロデロと少しクドい感じ。なかなか官能的な味だった。
この店は大将はじめキビキビ働く板前さん達が皆若く、人気店としての勢いを感じる。料理自体はびっくりするほどの水準ではないが、キチンと丁寧に仕上げられている。
「?」と思う部分もあったが、価格帯からすれば納得できる店。徹底して客に食事を楽しんでもらおうという姿勢はエラいと思う。
徳利やぐい呑みも酒を変えるたびに選ばせてくれたし、器自体も趣味の良いものを揃えていた。
締めのご飯がこの店の特徴だろう。漫然と高コストの食材に頼るわけではなく、ベーシックな素材に演出を加えて楽しませる。
言ってしまえば、白米を単純に土鍋で炊いただけの話。季節の食材をふんだんに使った炊き込みご飯とかに比べれば地味すぎる一品ではある。それをほんの少しづつ3回に分けて供する演出のせいで実に楽しい気分になる。
米の炊けた具合を時間差によって楽しませる趣向だ。最初は汁っぽさや芯が少し残ったぐらいの状態、続いて、もう一段階締まってきた感じの状態で、そして最後に普通の炊きたて土鍋ご飯といった流れ。
食べ放題の自家製の漬物がアシストするので、「タンスイカブラー系コメラバー」である私などは、ワシワシと何度もオカワリをした。
若手職人が頑張るカウンター割烹を堪能したから、翌日は違う路線を攻めようと、もう少し規模の大きな老舗の料理屋さんに出かけた。
訪れたのは祇園にある「割烹なか川」。はもしゃぶ発祥の店だとか。はもは梅雨時が旬の高級魚というイメージだが、脂が乗ってくる秋が一番ウマいという話も良く聞く。
東京でうなるほどウマいはもを食べた経験がないので、専門店でその正体を吟味してやろうといそいそ出かけた。
はもしゃぶが来る前の料理も、さすがに高水準。カレイの薄造りはフグと見まがうかのような透き通る感じが色っぽかった。旨味もたっぷり。シャーベット状に冷やした吟醸酒がグビグビ進む。
ぐじ(甘鯛)と鰻と京野菜が同居した一品も旨味たっぷりで素直にウマかった。それ以外にも落ち鮎の煮物なんかを肴にグビグビ。個室でしっぽり、というか、ご機嫌になって酔っぱらってはしゃぐ。
メインのはもしゃぶは、それこそ初体験の味だった。キチンと骨切りされた切り身を仲居さんが鍋に投入。一瞬で丸まる。ほんの5~10秒程度しゃぶしゃぶしたら食べ頃。
優しい味のポン酢につけて温かいまま味わうか、鍋から引上げた直後に氷でシメて梅だれで味わう。
温かいままポン酢で食べるパターンは、京都の専門店ならではだろう。そればっかり頬ばる。
正直なところ、はもといえば「夏だから仕方なく食べるもの」と認識していた。おせち料理とか七草がゆのように、ウマいマズいではなく、縁起物に近いぐらいのイメージだったが、本場モノのせいで考えを改めた。昔から高級魚として珍重されてきた意味が少し分かった。
ついでにもう一軒、夜を過ごした店の話。
数々の小説にも登場し、文豪も通ったという料理屋さん「瓢正」。ここでは一人ふらっとカウンターでおまかせ料理を楽しんだ。名物の笹巻ずしは、最後の締めに3つ出てくると聞いたので、それ以外は完全におまかせ。
熱燗を頼んだ際、出されたお猪口がしっかり温めてあった。燗酒を冷まさない配慮だ。こういう風雅な気配りに遭遇すると、アホな江戸っ子としては「京都はさすがだ」とイチコロになる。
料理はしっかりした味付けで酒の相手としては申し分ない。鴨肉に添えられた八幡巻きのごぼうが物凄く柔らかく仕上がっていたり、細かい部分にプロの料理人の丁寧な仕事が見えた。
他の席の客が帰った後は、風情のあるカウンターで一人しっぽり。話し相手も居ないから、必然的に「寡黙な男」になってみる。
こういう時間が人生には大事だ。実にまったりと落ち着く。酩酊する。
名物の笹巻ずしがやってきた頃には、「寡黙な酔っぱらい」の出来上がりだ。残さず食べたが、正直、どんな味だったか思い出せない。少し情けない。多分相当美味しかったと思う。
今日は、結局、旅行中の食事記録に終始してしまった。スイマセン・・・。
でも、個人的には、いつかこの先、これを読み返した際に、旅路での行動をキッチリ思い出して懐かしく、嬉しくなるはずだ。楽しかった時間を閉じこめたような感じとでも言おうか。旅の楽しさって、ある意味、計画している時と、思い返している時がハイライトなのかもしれない。
そんなこんなで、いっぱい歩いたり、カロリー消費は結構激しかったはずなのに、旅行を終えたら体重が増えていた。代謝機能が枯れ果てているのだろうか。
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