食べ物の中で一番好きなのが寿司だ。飲み喰いに行く店で一番好きなのも寿司屋だ。だから、それなりに寿司ネタの魚については学んできた。
もちろん、素人なりの経験がベースなので、エラそうなことは言えないが、以前から腑に落ちないのが「イカ問題」である。
東京の寿司屋でイカを注文することは滅多にない。でも、毎年のように行く函館ではイカを親のカタキのように喰いまくっている。
東京の寿司屋でイカといえば、スミイカがエース級の存在で、函館でお馴染みのマイカ(スルメイカ)は二線級の扱い。塩辛用のためだけに仕入れるなんて話も聞く。
個人的にはイカのネットリ感がそんなに好きではないので、スミイカ中心の東京だと、イカを注文する気が起きない。
高級品扱いのスミイカは何よりネットリした食感がウリ。シャリとの相性が良いから寿司屋業界ではエバった存在だ。それはそれで理解できる。
一方のマイカは、コリコリした食感だから、確かにシャリとの組み合わせでは、スミイカに劣るのだろう。そうはいっても、画像のように生のまま出されるハラワタのウマさは、珍味業界のスーパースターだと断言できる。
私に言わせれば、上等なスミイカがビリージョエルだとしたら、生きたままさばかれる新鮮なマイカは、エルヴィスプレスリー並みの抜きんでた存在だ。
にもかかわらず、東京では、マイカのワタは塩辛のために存在するみたいな空気が支配的だ。一体ナゼだろう。
生きたままさばくという部分が函館ならではの特徴なのだろうか。いくら新鮮でも死んでしまったマイカだと、あの動いているほどの新鮮コリコリ感と生のワタのエロティックスペシャルな味わいは堪能できないのだろうか。
高度に進歩した現在の運輸環境にあっても生きたまま輸送することが難しいのだろうか。
何でも揃う東京というワガママで貪欲なマーケットでも、マイカのワタを生で食べさせる店など聞いたことがない。函館あたりだと7月から12月ぐらいまでは、そこらへんの居酒屋でも生のハラワタを普通に出してくれる。実に不思議だ。
函館では「ゴロ」と呼ばれるハラワタだが、掛け値無しにウマい。珍味という表現は正確ではない。純粋に美味なる存在だと思う。
クリーミーで甘味があって、口の中で溶けていく感じ。上等な生ウニにも劣らない官能的な味だ。
理由は良く分からないが、東京でお目にかかれない以上、わざわざ函館を訪ねる理由になるわけで、函館好きな私にとっては、それはそれで良しだろう。
なんでもかんでも東京で味わえるなら、旅先での食道楽など根絶してしまう。下の画像は、函館のとある郷土料理系居酒屋のメニューだ。私が騒いでいるマイカのさばきたては、ハラワタもしっかり刺身にしてくれてこの程度の値段だ。
こんなメニューの飲み屋さんがごろごろあるから函館は楽しい。今回は、毎回必ず訪ねるお寿司屋さんが、予約がいっぱいで入れず、お気に入りだった海鮮系の割烹も無くなってしまったので、店選びに少し難儀した。
そうは言っても、数え切れないほどこの街を訪ねてきた経験によって、適当に店を決めて旬のウニやさまざまな珍味を食べ歩いてきた。
真イカのワタが生で食べられるのは、それこそ12月までなので、そればっかり食べていたが、旬のウニも連日連夜摂取してきた。
上の画像は、朝市にほど近い立地の「むらかみ」という店で食べた無添加ウニ丼だ。ミョウバンを使っていない生のウニをふんだんに使ったスペシャルどんぶり。悶絶。
ここ「むらかみ」は、ウニ加工会社直営の飲食店だから、ウニの品質の高さが自慢の店。どんぶり横町をはじめとする朝市周辺の飲食店に比べると価格設定は高め。それでも、間違いのない逸品が食べられる。
この日、上の画像のどんぶりはシメの一品として食べたのだが、そこに至る前に熱燗をグビグビしながらアレコレ堪能した。
色合いが不揃いなだけで味わいに遜色のないウニを一折つまみにもらう。贅沢かつ至福な時間だった。ウニにぺたっとワサビ醤油を塗ってぺろっと口に放り込んで、磯の香りが消えないうちに熱燗をキュっと流し込む。グヘヘヘって感じだ。
ウニの佃煮とかウニの醤油漬けとか、自家製の珍味もいろいろあったので、熱燗のお供に注文する。画像は醤油漬け。これまた酒肴として完璧な味だった。日本人に生まれて心底良かったと実感した。
これ以外にもウニクリームコロッケとか、イカとアスパラのウニソース炒めとか、ボタンエビ刺しとか、熱燗のピッチを上げさせるつまみをワシワシ摂取した時間だった。
この日飲んでいた酒の銘柄は「熊ころり」。このネーミングも素晴らしい。北海の珍味を肴にグビグビすれば、熊のように太り気味の私がコロリとひっくり返るほどだった。
下の画像は、店を出た直後の私の画像だ。
まさに雪の上にコロッと倒れて酩酊状態。昼間の酒だったのでいつも以上に幸せだった。
雪見の温泉を山と海で堪能し、痛風の恐怖もものともせずに、ウニやイカワタ三昧だった今回の旅。充実した時間だった。
時が止まればいいと何度も思った。近いうちにまた北の国に戻りたい。
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