2012年2月24日金曜日

乱食の日々

12月、1月あたりの胃の不調もなんとか脱出して中々良い感じだ。医師処方の制酸剤・パリエットと、大田漢方胃腸薬ならびに太田胃散各位のおかげだと思う。

いや、薬よりも、揚げ物とか脂ギトギトとか刺激物を避けてきた努力の賜かもしれない。

で、トンカツを解禁してみた。許されるものなら1日3食トンカツでも構わない私だ。死ぬ前に最後に食べたいものもトンカツだ。

まあ、死ぬ直前という弱った状態であんなものが食えるかは微妙だが、健康のまま突然、最後の食事を迎えるのならトンカツを選ぶ。

某日、銀座のトンカツ屋「平田牧場」に行こうと胸をわくわくさせていたのだが、運悪く満席。仕方なく、絶対空いているはずのトンカツ屋に足を向けた。

交詢ビルにある「かつぜん」がその店。フランスのタイヤ屋が作った本で星が付いた店らしい。値段のせいもあってふらっと行ってもたいてい空いている。

その日も、他に客の姿はなく貸切状態。これはこれで落ち着かない。シンミリする。

夜はコースが中心だが、あえてアラカルトでアレコレ注文。トンカツ前にウダウダ酔いたいから、月見とろろとか、サラダっぽい一品とか、カキフライなんかで焼酎をグビグビ。

こちらのトンカツは一番安いもので4千円ぐらいする。一番高いのは確か6500円だ。

6500円のトンカツだ。マックの100円バーガーなら65人が食べられる値段だ。牛丼でも25人ぐらいまかなえる。

そう考えるとバカみたいだ。

でも、私の場合、値段の相対評価を自分に都合良くやってのけるクセがある。たとえば、あまり好きではない霜降り牛のステーキを比較対象にしてみよう。

いっぱしの店ならステーキで6500円なんて珍しくない。銘柄牛だったら平気で1万円以上するし、銀座あたりでは、5万円ぐらい取る店だって存在する。

我が家の近所にある「肉の万世」のファミレスでも確か6500円ぐらいのステーキがメニューにある。

牛より断然豚が好きな私としては、そんな比較をしながら徐々に「6500円のトンカツ」を注文する自分の見識?に納得し始める。

そこそこの中華に行って、フカヒレの姿煮を頼んだら、腹一杯にならないクセにもっと高い値段だったりする。

本マグロの大トロの握りを高級寿司屋で頼んだら、2~3貫で6千円ぐらいかかるはずだ。

「言い訳」は次から次に出てくる。かくして、「6500円のトンカツ」に対する私のビビった根性は影を潜めて、意気揚々と注文してしまう。


そんでもって、がっついてみた。そりゃあウマいのは当然だが、ついつい値段が頭をよぎる。2500円も出せば間違いなく大満足できるトンカツはあちこちで食べられる。

前述した「平田牧場」が満席で、こちらがガラガラなのは仕方がない話だ。この日は最後まで他にお客さんがいなかったから、言うなればハリウッドスターばりに店を一軒借り切って、専属シェフに調理して貰ったと思えば安いのだろう。

接客も丁寧、突き出しも豪華、一品料理もあって、トンカツも水準以上。価格を気にせず、静かにしっぽりトンカツを食いたいという人ならばオススメだろう。はたして、そういう人はいるのだろうか。

さて、トンカツに続いては、またまたウナギだ。

先々週、このブログで日本橋・伊勢定のウナギをがっついた話を書いた。私の変なクセのひとつが、官能的なウマいものを食べると、しばし同じものが食べたくなるところだ。

ヒキガネが引かれるような感じだ。

某日、私が好きなウナギ屋さんである「大江戸」に行った。日本橋の外れ、老舗っぽい風情漂う店だ。

正面の重厚な玄関は座敷専用。その右手に貧乏な人のための?入口がある。こちらから入る「食堂」が私のお気に入りだ。

この日の目的は「ご飯が見えない鰻重」だ。「かつぜん」の最上級トンカツぐらいの値段を覚悟すれば、注文してから1時間ほどかけて調理される、この店の最上である「極上鰻重」が楽しめる。


ウナギのキモの山椒煮とか、イクラおろしとか、寒ブリの刺身なんかをツマミに熱燗をグビグビ。


そして、お決まりの白焼き登場。冷酒に切り替える。この日は〆張鶴の純米吟醸。至福。これを書いている段階で今日にもまた行きたくなるほどだ。


そして、極上鰻重様が運ばれてきた。ウナギの両端が折り返してあるのがニクい。このウマさを活字で表現するほどのボキャブラリーがないことが悲しい。

どう言い表そうか。3人前ぐらい食べられそうな味とでも言っておこう。

トンカツ、ウナギその他もろもろの暴飲暴食にも、私の胃はしばらく優しく接してあげてきた甲斐あって悲鳴をあげない。完全復活だ。

というわけで、次は刺激物を摂取しないとなるまいと思って、某日、インド料理屋に突撃した。

麹町にある老舗「アジャンタ」だ。ここ10年ぐらいでアチコチ氾濫状態になったインド料理屋とは一線を画すメニューの豊富さ、味わいの複雑さがウリだ。


まずはタンドリーチキンとビール。口、喉、食道、胃、それぞれの皆様に対して辛さへの備えを通知する。



この日頼んだカレーは、チキン系、マトン系、エビ系の3種類。辛いけどウマい。炊き込みご飯である「チキンビリヤニ」にカレーをまぶすも良し、ナンと合わせてビールをグビグビ飲むも良し。首から汗が出るような感覚が楽しい。

スーパー膨満感。カレーが恐いって叫ぶぐらい満腹になる。その後、胃腸が怒る気配はない。実に穏やかに私の乱食を受け止めている。

本当に心強い相棒だと思う。大事にしてやらねば。

たまには、おかゆでも流し込んでやりたいと思うのだが、そうもいかない。

日々、ヤツの踏ん張りに私の幸せは守られている。

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