2012年4月23日月曜日

生田與克さん 魚食

世界に冠たる魚市場・築地を題材にした本を読んだ。著者は生田與克さん。軽妙な語り口で最近はテレビにも引っ張りだこの御仁だ。

実は生田さん、わが母校(小、中、高)の3年先輩にあたる。私の兄が彼の同級生だったせいで、当時からいろいろと可愛がってもらった。


今では、築地の案内人としての範疇を超え、いわば「魚食文化の伝導師」というポジションを確立した人だ。

多くのテレビ番組で築地や魚事情を語ったり、料理番組では気の効いた魚料理を手掛けてみたり、ネットテレビでは自民党の番組の準レギュラーみたいな立場で、あの石破さんあたりと丁々発止のやり取りまで見せている。

先日は、NHKの「視点・論点」というすこぶるお堅い番組にも登場。ひとりカメラに向かって自説を展開する番組だが、時折ベランメエ調が混ざるような話しぶりに失礼ながら大ウケしてしまった。

マグロの仲卸商の3代目として怒号渦巻く築地に入り、はや30年。子どもの頃のパワフルさに拍車がかかった勢いで、正しい魚食の在り方を伝えていくために八面六臂の活躍中だ。

幾多の著作があるなかで、私が今回読んだのは「たまらねえ場所・築地魚河岸」(学研新書)。学術的なイメージが強い新書だが、さすがに生田さんの本だけに一貫して独特の「よっちゃん節」に彩られている。

クスクス笑いながらアッという間に読み終え、おまけに読後感は痛快そのものといった感じだ。

魚河岸の歴史、時代による人気の魚の変遷や「生で食べる」という独特の文化を背景にした魚の扱い方や旬の大切さなどが、軽妙なタッチで綴られている。

笑えるエピソードも満載だ。魚河岸見学に来た「ジャン・レノ」を「ジョン・レノンぐらい知ってらあ」と言うオッサンや、「ハム・トンクスとかいう肉屋の特売みたいな俳優が来た」と語るおっちゃん達の日常も紹介されている。

ブランド魚信仰の愚かさ、鮮度だけでは計れない魚のウマさ、評価が上がってきた輸入モノの実態、大型スーパーに駆逐されてしまった街の魚屋さんの果たしてきた役割など、言うなれば日本人なら知っておくべき魚食の基本が手に取るように分かる内容だ。

ちなみに本業の他にテレビ出演や原稿執筆、講演活動などを精力的にこなす生田さんの睡眠時間は3時間ぐらいだそうだ。

年中寝不足だからいつもハイテンションなのかと邪推してしまうが、そんな生田さんが最近力を入れているのが「魚食スペシャリスト検定」。

昔に比べて飛躍的にインフラが整備され、「魚を美味しく食べたい」という願いが手軽に叶えられるようになったにもかかわらず、間違った情報などもあって逆に「魚離れ」が進んでいるのがニッポンの食卓の現状だ。

嘆かわしい現状は、突き詰めれば日本人の精神性の崩壊にまでつながりかねないと危惧する生田さんの思いが、「NPO法人・魚食文化の会」につながり、「魚食スペシャリスト検定」は、この5月に7度目の試験実施を迎える。

http://www.gyoshoku.com/?p=448

うーん、なんかここまで書いてきて生田さんの人物像が、優等生的なカタブツになってしまったようで気に入らない。

実際の生田さんは、ファンキーモンキーベイビー?みたいな人で(スイマセン)、まわりにいる人を爆笑の渦に巻き込む超絶的に愉快な人だ。

先日、私の兄の家で花見を兼ねた大宴会があったのだが、生田さんは美味しい魚介類をドッサリ持参してくださった。私も鮑を丸かじりさせてもらったり、マグロのカマのバーベキューや、生ウニやトリ貝、マグロのスジの塩炙りなんて珍味も御馳走になった。

地声のデカさは築地生活で更なる大音量になって豪快そのものだが、その実、宴会でも目配り、気配りがすこぶる細かい。

「イキな男」は気配り上手と同義語なんだなあと改めて思い知らされた時間だった。

誇るべき先輩・生田さんは、有難いことにこのブログを時たま覗いてくれているそうだ。

珍味食いばかりの日常なのでちょっと恥ずかしいが、「おまえも随分、食い物が分かってきたねえ」と誉めてもらって素直に嬉しかった。

プロ中のプロに更に認めてもらうために「魚食スペシャリスト検定」に挑戦しようかと思案中だが、落っこっちゃったら格好つかないからウジウジしている。

今度、築地で寿司を御馳走になる時にでもワイロを使って裏口合格を相談してみようと思う。

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