2012年9月7日金曜日

裁判の日々

「不幸とウソが溢れている場所」。わが社の顧問弁護士が裁判所をそう評していた。

なかなか味わい深い表現だと思う。

ここ1~2年、裁判沙汰をいくつか抱えているため、頻繁に東京地裁に出かけている。法務担当みたいなもので、昔から仕事に係わる紛争には必ずタッチしてドタバタしてきた。

もちろん、そうそう厄介な紛争が起きるわけではない。長年会社をやっていれば仕方がない程度の頻度だ。最近はたまたまいくつも重なってしまい、すっかり裁判所通いにも馴れてしまった。

いま抱えているのは、攻める案件ばかりなので、守る案件よりもやり甲斐?はある。残念なことは、物凄く勉強してコトに臨んでも、解決してしまえば、その知識がその後は役に立たないことばかりだということ。

トラブルになるような話は個別性が強いから、商法とか民法を必死に頭に入れたところで、その後の仕事や私生活の上で理論武装につながるわけではない。毎度毎度、まるで違った事件を担当する弁護士とか裁判官はつくづく大変だと思う。

たいていの訴訟事案は、裁判官が強引に和解を勧める。双方に対して、「アンタに不利な判決出すぜ」という趣旨のブラフを乱発して、双方を妥協させようとする。

つい最近終わった案件では、相手方がたび重なる和解提案を拒否し続けた結果、一審でほぼこちらの主張が通った判決が出た。相手側が控訴したことで、高裁に舞台が移ったのだが、高裁で強烈な和解の強制?を受けて、ほんの少し妥協して終結させた。

裁判官は基本的に判決を書きたくない。これが日本の裁判制度の大原則。判決を下せば、当然判例として記録に残るし、控訴されてひっくり返れば、原判決を書いた裁判官にとっては当然マイナス評価になる。

和解といえば聞えはいいが、実際には強制的に妥協させられるというのが実態だ。

先日も、最終弁論のあと、裁判官に呼ばれて強引な和解提案を受けた。やれ負けるだの、やれ勝ちスジじゃないなど、やれ勿体ないだの、ぐいぐい攻めてくる。

多くの場合、味方であるはずの顧問弁護士まで裁判官の肩を持つ。「この辺が潮時ですよ」、「これ以上粘っても結果は大差ないですよ」、「今後の時間と労力を考えたらこのあたりで妥協しましょう」等々。法律的な素人である一般人は多くの場合、腑に落ちない和解を選択する。

先日の案件では、わが社の顧問弁護士もイケイケモードになってくれたので、裁判官の強制和解提案をうまく突破できた。こちらに不利な判決が出る恐れもあるが、そうなったらそうなったで考えればよい。

それにしても弁護士さんもいろいろだ。こう言っちゃあ何だが、物凄くオツムの弱い相手方弁護士にあたった時は、心底困った。裁判官さえもタメ息を乱発するほどの誤った思い込みに支配されているセンセーだった。

最初はそれが作戦なんだろうと思ったのだが、どうやらそんな高等戦術みたいな話ではなく、純粋に「バ○丸出し」だった。おかげで無駄な時間が膨大に費やされた。結果は同じにせよ、時間の浪費は無視できない損失だ。

変な話、不利な裁判に巻き込まれて、ただただ結論を先延ばししたければ最適な弁護士だと思う。そんなのに限って国会のナントカ委員会に参考人出席して意見陳述をしていたりするからタチが悪い。

左方向に思いっきり偏っている弁護士も厄介だ。本筋に関係ないくだらない些末なことばかりネチネチ追及するのが生き甲斐みたいな連中が多いように感じる。

政治討論番組でも、あちら側に偏った政党の面々は、たいていが似たような風貌で、口をとんがらせて四の五の言う。個人的にあの手の人々が苦手なので、そっち系丸出しの相手側弁護士が出てくると不快になることが多い。

まあ、不快になっただけで相手の思うつぼだろうから、表面上はニコニコ対応するようにしている。

そのほか、「カッコつけちゃってる弁護士」も困ったものだ。最近実際に遭遇したのだが、映画とかテレビの見過ぎみたいな若い弁護士にはビックリした。いちいちカッチョエエから笑える。

私自身が証人として法廷に立った際、カッチョエエ先生は、証人台の横にピタって立ちどまって、証言する私に一生懸命プレッシャーをかけようと頑張っている。

めげずにアーダのコーダの証言する私にシビレをきらしたのか、証言台の上に置いてあった私の資料を、脈略もなく撤去してくれと裁判官に要求する。

おまけに証言の途中で、カッチョよく異議だの何だの言葉を挟んでさえぎろうとする。こちらのペースを乱そうと必死な感じだった。

カチンと来た私は「文章の読み方を教えてやってんじゃねえあか」と少しだけ声を荒げてしまい、裁判官に叱られてしまった。

腹を立てた段階で負けなのかもしれないが、私がチョッピリ?声を荒げた後は、おとなしく弁護人席に座ったままだったから、カッチョエエ先生も思惑が外れたのだろう。

その弁護士の経歴を調べたら、全然関係のないビジネスの世界から法曹界に入った人物だったので、確かに異色なタイプなんだろう。格好はいいのだが、彼が作ってくる準備書面は、一般論に終始するだけでポイントが不明瞭。法廷でパフォーマンスすることだけが得意分野なんだろう。

まあ、ウチの弁護士センセイだってそれなりに問題はあるから、あまり偉そうなことは書けない。

端的に言って弁護士任せだとコトはうまく運ばない。当事者側が真剣に原資資料作りに励んだり、主張したい点を明確にしなければ中々話を通じさせることは難しい。

ただただ地味な作業だ。資料の発掘と、その資料の証拠付けなど文書の作成作業が労力の90%だろう。面倒で仕方がない。

平然とウソをつく相手にバカ正直に対応するだけでもダメだし、攻撃すべき点は執拗に攻撃しないとラチがあかない。気が弱く温和で優しすぎるガンジーさんも真っ青の平和主義者である私にはもっとも向かない作業ではある。

今抱えている案件はすべて終結に向けたメドが見えてきた。さっさと終わって欲しい。民間の常識では考えられない裁判進行のノロノロぶりと四角四面の細かい形式的な積み重ねにはウンザリだ。

それ以前に地裁の喫煙室が煙くてイヤなので早々に解放されたいと思う。

4 件のコメント:

  1. 私もやすみの日に時々千葉の裁判所の傍聴に
    いきます

    今回のブログを読んで私が傍聴している
    裁判の裏側ではこんな人間同士の
    戦いというか、状況が繰り広げられて
    いるのか、と感心しました

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  2. 裁判ネタ♪
    私の大好物なんです☆
    この記事、ガッツリいただきました(=^ェ^=)
    特に、カッチョエエ人www

    出来ることなら、傍聴してみたくなりました。
    あなた様が、とても羨ましいです( ´ ▽ ` )ノ

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  3. yuuさま

    裁判、お好き?ですか。

    面白いですよね。私も自分の担当案件の前にやっている事件を暇つぶしがてらに見ていると妙に楽しく感じます。

    でも、法廷に出て行く前の準備書面段階の葛藤が結果を左右しているのが現実です。

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  4. runaさま

    たしかに時々は傍聴していても面白い場面が勃発します!

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