2013年3月22日金曜日

ジンベイさまと泳ぐ


大人のくせに春休みを取って遊んできた。久しぶりに潜水一点集中の旅をしてきた。

目的地はフィリピン・セブ島の南西部にあるMOALBOAL(モアルボアル)。15年前に初めて行って、5年前にも訪ねた。元々はヨーロッパのバックパッカーダイバーが集っていたのどかな村だ。


セブの空港からクルマで3時間。それだけ移動すれば雑踏とは無縁の世界が待っている。わずか数百メートルの細いメインストリート?にダイブショップ、コテージ、飲食店がぽつぽつと並んでいる。「潜る・食う・寝る」だけだ。

素敵なプールが用意されたリゾートや洒落た衣類やグッズを置くようなモールもない。ダイバー以外の人が来たら退屈で死んでしまうと思う。




宿泊したのは地域では名門?であるカバナリゾート。15年前にも泊まった。このエリアだったら日本円で1泊4~5千円もあればエアコン、ホットシャワー付きの宿に泊まれるが、カバナのレートは8千円ぐらい。富豪級である。

海沿いのテラスに食事を持ってきてくれるし、いつでも波の音がBGMだ。チェックインして間もなく、冷蔵庫を開けたらゴキブリに歓迎されたので、約1週間、冷蔵庫を一度も開けられなかったのが不便だったが、トータルでは居心地が良かった。


ダイビングは5年前と同じく、この地域で唯一のフィリピン人経営のダイブショップを利用。オーナーのネルソンさんはギャングスターのような風貌だが、副市長も務める地元の名士。たいていのリクエストには「ノー・プロブレム」と応えてくれる。

すっかりワガママダイバーになった私なので、1週間毎日、ボートと水中ガイドをチャーターした。ボートマンは3人もついてきたからまさに殿様ダイビングの日々。結構な予算が必要だが、とにかく好き勝手に過ごせるので撮影に没頭したい場合には充分にお得である。

連日、午前2回、午後2回、多い時には早朝6時半からエントリーしたり合計5回も潜ったりした。これほど潜水中心の時間を過ごすのは最近10年ぐらい無かったから結構楽しかった。

滞在中、一度だけ、クルマで2時間弱移動して世界的に有名になりつつある「ジンベイザメダイビング」に行ってきた。


セブ島最南端に近いオスロブという場所にジンベイ海岸はある。地元の漁師がオキアミをばらまいてジンベイの餌付けに成功したことで、それ以来ほぼ100%、ジンベイを間近に観察できるギョギョギョな場所だ。

例によって、西洋人の間からは環境破壊だとかなんだと言われて反対の声も強まっているそうだ。白人社会のエコロジーならぬ「エゴロジー」がこんな田舎まで及んでいることにビックリだ。

いまのところ餌付け反対運動にめげずに村おこしに躍起になっている地元では、一応のジンベイウォッチングルールを設けて管理している。

触らないとか、撮影時にはストロボ禁止だとか、その程度の規則なのだが、私も一応これにのっとって遊んできた。

あとから調べたらジンベイから5メートル以内に近づいてはいけないという前提もあるそうだが、運良く私がチャーターしたガイドはそんなこと一言も言わなかったから、無知な私は常に最接近して、時々ジンベイにぶつかったり、ジンベイから押しのけられたりするほどだった。

一応、反省。


さて、海岸から漁師の手こぎ船でジンベイが集まっている場所まで2,3分の移動。水面からもジンベイが集まってきているのがわかる。

四半世紀以上、いや、30年近くダイビングをしてきて「ジンベイザメに会えたらダイビングをヤメてもいい」と思っていた私だ。この時点でダイビング人生に幕を降ろさねばならないのだが、都合良くそんなことは忘れる。

タンクをつけて海に入ってみる。水深はせいぜい5~6メートル。下は単なる砂地。それなりの透明度の海にジンベイがウロウロしている。憧れのジンベイ様が視界に同時に3個体も入っている状況にしばし慌てる。

さすがにデカい。餌をまくボートにくっついて立ち泳ぎをしている姿は、ちょっと情けないのだが、初めて見る興奮のせいで、ただただ見とれる。

★画像はクリックすると拡大表示されるので是非大きな画像でご覧下さい。




超広角のフィッシュアイレンズを使ったので、遠くに見えるが、実際のジンベイとの距離はそれこそ手が届くほどである。

ヨソのダイバーが「5メートル・ルール」を守って下の方にいてくれたので、良い感じにジンベイの巨大さが強調された写真になった。

不思議なもので、撮影開始から10分もするとあれだけ会いたかったジンベイが目の前にいるのに何となく飽きてくる。やはり、餌付けされているせいで、野性味に欠ける雰囲気と、ずっとそこらへんにゴロゴロいるという恵まれすぎた状況が原因だろう。

立ち泳ぎの姿勢自体がどうにも絵にならないように思ったのだが、相手は食事に夢中である。それならそれで割り切った写真にしてみようと「ボートの漁師、ジンベイ、見学するダイバー」のすべてを構図に納めてみようと企む。



この日はカメラを2台持参した。バックの青色が薄く写っている画像はキャノンのEOSkissX3にトキナーのフィッシュアイズームレンズを装着して撮影。

濃いめのブルーの画像はオリンパスのコンデジ「TG-1」に社外品の水中着脱式のフィッシュアイコンバージョンレンズを付けて撮影した。

それぞれのレンズともに画角が180度ぐらいになるので、ジンベイから1~2メートル離れれば、構図によっては充分全身を写せる。

ストロボ禁止という制約の中では、オリンパスが採用している「水中ホワイトバランス」機能が素晴らしく役に立った。いわゆる青かぶりをしないでジンベイの背中の柄なんかも忠実に再生する。これでコンデジである。ひと昔の表現で言うならバカチョンカメラである。

このコンデジ、今回の旅行で初めて使ったのだが、正直ビックリの連続だった。私の25年以上の水中写真歴は何だったんだろうと思うぐらい進化している。その詳細報告は後日改めてします。

キャノンの一眼レフに付けたフィッシュアイレンズのほうが、コンデジに付けたレンズよりも画角がほんの少し広かったので、キャノンを中心に使ったのだが、今思えば、オリンパスコンデジだけでいろいろな機能を試してみれば良かったと後悔している。

まあ、カメラのことを四の五の語っても仕方がないので、ジンベイ画像をいろいろ載せておきます。







1時間ぐらい潜っていようと思ったのだが、餌をがっつくジンベイを眺めているだけだからさすがに飽きてくる。そのうち、ジンベイをバックに自分撮りまで始める始末。結局、間が持たずに30分ちょっとで、ガイドに浮上の合図をして終わりにしてしまった。

カメラ2台合わせて200回以上シャッターをきったが、なかなか会心の作というわけにはいかなかった。やはり、ジッとしているように見えて、4~6メートルぐらいの巨体だ。ちょっと姿勢を変えるだけで逆光になったり、狙った構図が変わったりする。それ以上に、「ずっとそこにいる」という事実のせいで撮影魂?に火がつかないような感じだった。

で、ジンベイに会えたらダイビングをヤメてもいいと思っていた件は微修正することに決めた。

「野性味たっぷりのジンベイに想定外の海で偶然出会ったら・・・」という前提に変更することにした。








なんか飼い慣らされているジンベイちゃんだと少しばかり消化不良だった。

随分贅沢な話ではある。

2 件のコメント:

  1. 富豪記者様

    まさに富豪にふさわしい春休みですね。

    ジンベイサメの写真、凄い迫力です。

    しかし、30分で飽きてくるとは、人間とは、
    なんと贅沢な生き物なのでしょうか。

    これからも、益々、快楽を追求して若さを保ち続けてください。

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  2. コメント有り難うございます。

    ジンベイ、なかなか壮観でした。

    アドレナリンがたくさん出るような生き方をしてみたいです。今後ともよろしくお願いいたします。

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