東京出身。富豪になりたい中年男。幼稚園から高校まで私立一貫校に通い、大学卒業後、財務系マスコミ事業に従事。霞ヶ関担当記者、編集局長等を経て現在は副社長。適度に偏屈。スタイリッシュより地味で上質を求め、流行より伝統に心が動く。アマノジャクこそ美徳が信条。趣味は酒器集め、水中写真撮影、ひとり旅、葉巻、オヤジバンドではボーカル担当。ブログ更新は祭日以外の月曜、水曜、金曜。 ★★★スマホでご覧頂いている場合には画面下の「ウェブバージョンを表示」をクリックしてウェブ画面に飛ぶと下側右にカテゴリー別の過去掲載記事が表示されますので、そちらもご利用ください。
2014年2月12日水曜日
小さいおうち 秘恋
一応、読書好きだったはずなのだが、最近は本を読んでいない。ますますバカになりそうだから読書の時間ぐらい意識して作らねばなるまい。
読みたい読みたいと思っていた「永遠のゼロ」も漫画で読んでしまうというアバンギャルド?な行動に走ってしまった。
コンビニで5巻セットで売っていたから衝動買いしてしまった。作画のタッチが好みじゃなかったし、良いストーリーだったからこそ、やはり想像力を駆使して文字を追えば良かったと後悔した。
何年か前に読んでみたいと思っていた「小さいおうち」も読まずじまい。そして山田洋次監督が映画化。結局、文字を追うのをあきらめて映画館に行った。
ジンワリと心に暖かいものが流れるような作品だった。もう一度見てもいいぐらいだ。山田監督の前作「東京家族」は個人的にオヨヨ?だったのだが、今回の作品は飽きずに楽しめた。
戦時中を背景にした政治的な左派まるだしのセリフ回しにウザったい部分が結構あったが、昭和ノスタルジーが丁寧に描かれていて面白かった。
黒木華という女中さん役の若い女優が良かった。初めて見る女優さんだったが、よくもまあ、作品にぴったりはまる人を見つけるものだと感心した。
奥様役の松たか子も人妻の悶々とした感じをうまい具合に演じていたし、脇役陣もマトモな俳優さんが固めていた。イマドキのテレビドラマとはまったく異質の落着き感が良かった。
昭和初期の東京の中流家庭が舞台。女中さんが知ってしまった奥様の秘密。道ならぬ恋の行方と、女中さんの葛藤とその後・・・。
そんな感じのストーリーである。
あんまり書いちゃうとこれから見る人に申し訳ないから適当にしておこう。
「秘密の恋」。大人であれば、30~40代だろうと70~80代だろうと世代に関係なく誰もが胸を高鳴らせるテーマである。
人生における大事なスパイスだと思う。ズブズブな不倫とかではなくても、淡い恋心を感じるだけで「秘恋」は成立する。
それが口に出せない想いなら、なお素敵だ。いじましい、じれったい感情こそ、人間の恋心の醍醐味かもしれない。
私の場合、父親がイタリア人で母親がブラジル人だから、好きな人にはストレートに気持ちを伝えてしまう。奥ゆかしさのカケラもない。深く反省したくなる。
もちろん、好意を寄せる人に対して、黙っていたところで何も始まらない。積極的に想いを伝えることも大事である。
でも、一般的にはそれを言えない場面や状況も当然ある。そんな時の心のザワザワした感じは、人間の感情の中でも最も厄介なものだと思う。
厄介といえども、変な心地良さも伴う。夜の月を見上げて、あの人の窓からもこの月が見えるのだろうか、風の匂いで季節が変わったことを感じたら、あの人にもすぐに教えたいなどとセンチな気分になる。
五感を刺激するもの全てを、好きな人と共有したいと思い始めたら重症である。表に出せない関係、すなわち秘めた恋であれば尚更気持ちの高ぶりはエスカレートする。
俗に恋愛体質という言い方がある。すぐに色恋に励みたくなる人を指す。こういう人達は間違いなく、あのザワザワした感情の虜になって一種の中毒症状に陥っているのだと思う。
面倒くさそうだが、とても人間らしいと思う。悪いことではない。
中高年になると「いまさら恋愛なんて・・・」などとシタリ顔で闇雲に道徳を優先する人が圧倒的だ。
実に退屈なことだと思う。
道徳や倫理、秩序ってとても大切だ。そんなことは百も承知である。でも、そこから少し脱線したところにこそ人生の機微がある。
映画「小さいおうち」では、奥様の秘密を知った女中さんが最晩年を迎えた時に流す涙が印象的だった。女中さんの晩年は倍賞千恵子が演じている。
若い頃の小さなウソ。それを後悔してもしきれないやるせない涙。人生の機微など知らなかった浅はかさが悔しくて涙が止まらなかったのだろう。
いやあ、しっとりとした良い映画だった。
さてさて、人生の機微だけを追い求めて生きていこう。
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