毎年恒例の「今年の漢字」。今年は、「税」だそうだ。去年が「輪」、それ以前は「金」、「絆」、「暑」、「新」、「変」、「偽」などが並ぶ。
漢字から受ける印象は人それぞれ。ローマ字文化の国では味わえない面白さがある。
今日は恐い漢字、というか、恐い言葉について書きたくなった。「怒」、「恐」あたりのベタなものではなく、イメージの話である。
まずは「女衒」。見るからにオドロオドロしいイメージだ。「ゼゲン」である。今で言えばスカウトだろうか。平たくいえば人身売買仲介業である。
その昔、遊郭が華やかだった頃、売春業者相手に田舎の若い女性を斡旋していた仲介人のことである。
「衒」という字は売るという意味があるそうで「じょげん」が訛って「ぜげん」になったらしい。
若い頃、名優・緒形拳が大正・昭和期の女衒を演じた映画を見て、その存在や名称を知った。まだ幼い子どもを人身売買の「道具」にして生きていく主人公のエグさが衝撃的だった。
「女衒」という字面の印象、音の響きそれぞれが闇の世界を思わせてオッソろしい感じである。
何も知らない幼子というわけではないにしろ、今現在も似たような業態で稼ぎを得ている人はいる。
私のようなお人好しの甘ちゃんとしては想像できない世界である。想像できない世界だからこそ、この言葉が漂わせる不気味な雰囲気が気になってしまうのかもしれない。
続いて「魑魅魍魎」(ちみもうりょう)である。昔からよく聞くし、自分でも話し言葉としては使っているが、絶対に書けない字である。
怪物や化け物の総称がその意味だそうだ。魑魅が山の化け物、魍魎が川の化け物のことだとか。要するには自然界の化け物の総称という意味。
それが転じて、欲のために悪巧みをする人間達を例える言葉になったらしい。
オドロオドロしい漢字コンテストをやったら間違いなく1位になると思う。これに比べれば「女衒」など可愛い感じにすら見えてくる。
「魑魅魍魎が跋扈する」。跋扈(ばっこ)を加えると何ともオゾましい日本語が完成する。跋扈という文字も妙に重厚だ。
我が物顔で威張ってるというか、思うがままに振舞うという意味合いだが、魑魅魍魎とセットにすると無敵である。
こんな文字、子どもの頃に必死に覚えないかぎり手書きですらすら書くのは不可能だ。私も死ぬまで書けるようにはならないと思う。
お次は「美人局」である。若い人は結構な割合でこの言葉を知らない人が多くて驚く。それだけ世の中が平和でおとなしくなったのだろうか。
ご存じ「つつもたせ」である。文字そのものと読み方がここまで一致しない言葉は滅多にない。それ自体がこの言葉が持つオッソろしいイメージを引き立てている。
「今夜は帰りたくないの~」
「おー!ほんじゃ、どこぞのホテルにシケこんでバンバン頑張りまっせ!」
その後、楽しかった余韻を胸に帰路につこうとした時に、
「おい、オッサン、ボケコラ!オレの女に手をつけやがったな、どないするんじゃ~!」と恐い人が出てくる。
「美人局」を翻訳するとそういうことである。
それにしても、ナゼこんな言葉がこんな読み方で使われているのか。
ウィキペディアから引用してみる。
~本来は漢語の「美人局」と、日本語の「つつもたせ」とは、全く別のことばである。
「美人局」は、中国の元のころから犯罪名。(中略)中国の元の時代、公娼を妾(めかけ)と偽って少年などをあざむく犯罪の名称で、これに和語「つつもたせ」を当て字とした。
つつもたせは、胴元の都合のいい目が出るような仕掛けがしてあるサイコロを使った「いかさまとばく」のことで、そこから二束三文の安物を高く売りつける行為を指すようになり、さらに法外な料金で売春させることもそう呼ぶようになった。
別の説としてつつもたせの「つつ」とは暴力団の使う女性器の隠語。標的とする男性と女性を一時的に同伴させて良い思いをさせた後で恐喝することから「筒持たせ」転じて「つつもたせ」となった~
フムフムである。いろんな理由がミックスされて「美人局つつもたせ」が完成したようだ。
ついでと言っちゃあ何だが、ウィキペディアには「被害を受けないための対策と対処法」なる項目がある。
●出会い系サイトやツーショットダイヤルを使わない。
●知らない人に声をかけられても相手にしないこと。
●被害届や告訴状が出せなくても、民事訴訟で加害者に賠償金を請求できるので被害を受けても泣き寝入りせずに毅然とした態度で対応すること。
私の場合、知らない人に声かけられても可愛い女性だったら鼻の下を伸ばしてついて行くから危険である。気をつけないといけない。
ついでに言えば「人妻に手を出さない」ことも予防策として大事である。相手のダンナが美人局を狙っていたかどうかに関係なく、バレちゃって訴えられたら必ず負ける。
おまけに、男のほうも自分の嫁に浮気がバレた場合、嫁が相手の女に賠償請求しちゃうこともある。これまた嫁の勝ちである。そうなったら賠償金は結局、男が捻出するハメになるのがオチである。
恐い恐い。
なんだか話の結末が本題とは無関係な話に飛んでしまった。
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