東京出身。富豪になりたい中年男。幼稚園から高校まで私立一貫校に通い、大学卒業後、財務系マスコミ事業に従事。霞ヶ関担当記者、編集局長等を経て現在は副社長。適度に偏屈。スタイリッシュより地味で上質を求め、流行より伝統に心が動く。アマノジャクこそ美徳が信条。趣味は酒器集め、水中写真撮影、ひとり旅、葉巻、オヤジバンドではボーカル担当。ブログ更新は祭日以外の月曜、水曜、金曜。 ★★★スマホでご覧頂いている場合には画面下の「ウェブバージョンを表示」をクリックしてウェブ画面に飛ぶと下側右にカテゴリー別の過去掲載記事が表示されますので、そちらもご利用ください。
2016年1月6日水曜日
浅草の底力
本年もよろしくお願いいたします。
年末年始は旅行も行かずホゲホゲ過ごせた。元旦の夜から2日にかけては11時間も寝た。桃源郷暮らしみたいな話だ。
さて、年末の某日、ふらっと浅草に行った。時々無性に行きたくなる我が心のふるさとである。
祖父が浅草生まれだったから、一応、浅草DNAは私にも受け継がれている。子どもの頃、浅草寺境内で揚げまんじゅうを買ってもらいたくてお参りにしょっちゅう付き合った。
その後、大人になり世はバブル景気に突入。都内各地で新興の街が活気づく一方で浅草のシュールな感じは際立っていった。時代に取り残されたような感じだった。
アマノジャクな私は、イケイケのシティーボーイ(何じゃそりゃ?)を気取りながらあえてワンレンボディコンのイケてる女子を浅草に連れ出し、時代に逆行するかのようなデートを楽しんだりした。「オシャレじゃないことこそオシャレ」だと思っていた。
ブロマイドのマルベル堂を冷やかし、焼立て煎餅をかじり、梅園で粟ぜんざいを舐めてから花やしきを覗いて、鰻の前川、天ぷらの中清あたりで夕食というのが定番だった。
中年になってからも、夏の夕暮れに竹芝あたりからわざわざ水上バスに乗って釜飯屋に一杯ひっかけに行ったり、週末、夫婦喧嘩に疲れると浅草寺境内の猿回しを見に行って癒やされたりしていた。
私にとっての浅草はいつもシュールな場所であり異次元空間だった。言うなれば「昭和の残照」である。秘密じゃないけど秘密基地みたいな場所だ。
ところが、ここ数年の浅草は何だか大変なことになっている。外国人観光客の激増、スカイツリー特需の関係で、やたらと活気づいている。
オノボリさん用の観光地として割り切って新たな発展の道を踏み出している。やたらと元気だ。アノ独特なサビレ感、くたびれ感が日に日に無くなっていく。チョッピリ淋しい。
EXILEみたいな兄ちゃん達が元気よく人力車を引っ張っているし、シュールな甘味処より小洒落たスイーツ屋が目につくようになった。
今回、驚いたのは孤高の存在として最後まで無頼な空気を漂わせていた六区周辺の怪しげなエリアも再開発が進んで小ざっぱりしていたことだ。
なんちゃらホテルが開業し、下層階には物産展のようなテナントがわんさか入居した大きな商業ビルが大勢の人を集めていた。
あれじゃあ、独特の浅草ファッションに身を包んで場外馬券場で痰を吐き散らかしていたオッサン達は行き場を失ってしまいそうである。
さてさて、愚痴はともかく、この日は年末で休みに入った店も多く、行きたかった洋食屋さんに行けなかった。
慌てて、スマホを駆使して界隈の洋食屋さんの中から開いている店を探す。「シーフード メヒコ」なる店のカニピラフが美味しいらしい。
福島や茨城を拠点とするチェーン店のようだ。チェーン店嫌いの私だが、スマホで見たカニピラフの麗しい画像に惹かれて行ってみた。
カニが好きでピラフにも目がない私が注文すべき一品はこれしかない。ヤケクソのようなカニピラフである。
悪く言えば創意工夫のカケラもない。何の変哲も特別な具もないピラフの上にこれでもかってぐらいカニが乗っている。でもそれが嬉しい。
ちゃんとカニフォークとフィンガーボウルまで出てくる。上に乗ったカニは出がらしの殻みたいな飾り的なものではなく、身肉がぎっしり状態である。
ウホウホと身をほじくり出す。出るわ出るわ、カニの身がアッという間にピラフの上を覆い始める。全部ほじっているとピラフが冷めちゃうから適当なタイミングでピラフと一緒に口の中に放り込む。
なかなかウマい。何の変哲もないピラフが逆にバッチリである。ヘタに自己主張されるとカニの風味を殺しかねないが、ここのピラフはカニをちゃんと主役にする。実にバランスが良い。
ビックリするほどウマいわけではないが、正しくジンワリとウマい。近所だったらちょこちょこ食べに行きそうな店だ。
カニクリームコロッケにもカニ身がしっかり入っていたし、それ以前にベシャメルソースが正しくクドくて嬉しかった。「浅草で洋食」という気分を満たしてくれた。海老のポテトサラダなる一品もビールのツマミとして優秀だった。
さすが浅草に店を構えるだけのことはある。店名も店内の雰囲気もどこかヌルい感じだ。浅草的ファミレスと表現したくなる店だった。
その後は、腹ごなしに周辺を散策、街の変わりように驚きつつ、歩き疲れたので休憩をかねて東洋館(冒頭の画像です)に入る。昔のフランス座だ。
渥美清や欽ちゃんが活躍し、ビートたけしを生んだ劇場である。昭和の雰囲気がむんむんである。
「松鶴屋千とせ」の他はまったく知らない人ばかりだ。誰も知らないからかえって浅草芸人の技量を先入観抜きに楽しめて楽しい。
70歳を優に超えたギター漫談のギターテクニックに衝撃を受け、88歳の漫談家のシャンとした姿に圧倒された。
浅草の底力を見た気がした。街自体が衰退からひょっこり立ち直って、それを支える人々も年齢に関係なく活躍している。
なんだかんだ言って浅草に行くと気分がリフレッシュする。あの街は私にとって一種のパワースポットみたいな場所だと思う。
浅草中を覆う「泰然自若っぽい空気」を前にすると中途半端にモノがわかったフリをしたり、中途半端な年齢をタテに分別ヅラすることが恥ずかしくなる。
あくまで我が道をズンズン進んでいるような浅草の突き抜けた感じを見習って新しい年を乗り切っていきたい。
浅草に住んでいますが
返信削除ここ数年はもういわゆる浅草な場所に
行かなくなりましたね、、、
観光客と言うかなんと言うか、、、
でもやっぱり浅草離れられない。
地元じゃなきゃ行かないお店
いっぱいありますから!
またどうぞ足を運んでくださいませ。
miikoさま
返信削除浅草にお住まいでしたか。
スカイツリーが出来てから一気に風向きが変わったようですね。
商売をされている方々は万々歳でしょうが、普通に暮らしていると何かと問題もありそうですね。