東京出身。富豪になりたい中年男。幼稚園から高校まで私立一貫校に通い、大学卒業後、財務系マスコミ事業に従事。霞ヶ関担当記者、編集局長等を経て現在は副社長。適度に偏屈。スタイリッシュより地味で上質を求め、流行より伝統に心が動く。アマノジャクこそ美徳が信条。趣味は酒器集め、水中写真撮影、ひとり旅、葉巻、オヤジバンドではボーカル担当。ブログ更新は祭日以外の月曜、水曜、金曜。 ★★★スマホでご覧頂いている場合には画面下の「ウェブバージョンを表示」をクリックしてウェブ画面に飛ぶと下側右にカテゴリー別の過去掲載記事が表示されますので、そちらもご利用ください。
2016年10月17日月曜日
パレスホテルのマロンシャンテリー
流行の最先端やハヤリものにナゼか拒否感がある。偏屈と言われればそれまでだが、なんとなく踊らされているような居心地の悪さを感じる。
若い頃はそれなりに流行を追っかけた。着るものにしてもデートに使う店にしてもハヤリものに敏感だった。それが都会の人間にとって当然のことだと思っていた。
いま思えば滑稽だが、若さとはそういうものだろう。そのうち自分にとっての取捨選択が進んで好みや意識も固まってくる。
いい歳して流行を追いかけるのもどうかと思うが、それはそれで感性が柔軟な証しだから、ある意味立派なのかもしれない。私はイヤだが・・・。
若い頃、それなりに流行を気にしていたとはいえ、私にはアマノジャクなところがあるので、大ヒット映画「ET」を見たがる彼女を説き伏せて武田鉄矢主演の「刑事物語」を見ていた。
当時、アメリカ大リーグのチーム名の入ったテカテカ素材のスタジャンがハヤったのだが、王道のヤンキースやドジャースではなく、ピッツバーグ・パイレーツあたりのシュールな?やつをわざわざ探したりもした。
ワラビーのショートブーツが人気だと聞けば、一応は買ってみるものの、あえてウェスタンブーツばかり履いていた。
クルマに乗るようになっても「ソアラ」より「レパード」だったし、「パジェロ」より「サファリ」だったし、「ゴルフ」より「オペル」だったし、「ベンツ」より「ジャガー」だった。
ウィンドサーフィンが大ブームになった頃にダイビングを始め、仲間がゴルフに燃えている頃には、カヌーを買ってわざわざスクールにも通った。
カフェバーだの洒落たイタリアンだのカッチョイイ店にも行くには行ったが、勝負どころ?ではエスニックや天ぷら屋を目指した。
ティラミスやパンナコッタが突然流行して世の中が大騒ぎしていた時も、あえて老舗の甘味処で白玉ぜんざいを頬張ることに喜びを感じた。
まだオープンして間もなかったディズニーランドに行きたがるワンレンボディコンのオネエサンを浅草花やしきに連れていってブーブー文句を言われたこともある。
そんな日々を過ごし、気付けばトロより赤身を好み、鰻だったら蒲焼きより白焼きを好み、ロースカツよりヒレカツを愛する大人になった。
気ままな独り者として住む場所を探す際も青山六本木方面や恵比寿目黒方面には興味が湧かずに、麹町四ッ谷界隈に惹かれつつ、小石川あたりに腰を落ち着けて「谷根千」や「湯島」あたりを散歩することが妙に楽しい日々だ。
今後、どんなジイサンになっていくのか我ながら興味深い。
今日は書こうと思った話から大幅に脱線してしまった。いつものことだが・・・。
今日書きたかったのは丸の内のパレスホテルの話だ。カッチョイイ外資系ホテルが乱立しはじめた東京のホテルの中で、独特の存在感がある憩いの場所だと思う。
パレスホテルは昭和30年代の開業である。確かホテルオークラよりも古い。住所だって「丸の内1-1-1」である。王道である。そんなウンチクだけで私としては贔屓したくなる。
数年前に全面建て替えしてモダンになったが、とんがった感じではなく上質な落ち着き感が漂う。ハヤリものと一線を画すような雰囲気が好きで時々出かける。
ある日、15才の娘が物凄く落ち込んでいた時のこと。大人ならヤケ酒という対処法があるが、子どもなら「ヤケスイーツ」だろうと思ってパレスホテルに連れていった。
目的は名物のマロンシャンテリーである。いまどきのスイーツしか知らない娘のためにニッポン洋菓子の元祖とも言える絶品を食べさせようという素晴らしい親心である。
パティシエはもちろん、スイーツなどという呼称もなかった時代から燦然と輝く珠玉の一品である。
由緒だの伝統だの歴史とか言われるとすぐに降参してしまう私が世の中で一番ウマいと思う洋菓子である。大げさだ。
でも、間違いなく本場ウィーンで食べたザッハトルテより5億万倍ぐらいウマいのは確かだ。
娘も目を丸くしながら食べていた。思えば、ここ数年は娘が目を丸くするのを見たい一心でいろんなものを食べさせてきたような気がする。バカ親である。
落ち込んでいた娘の表情もそこそこ晴れやかになり、帰り道で立ち寄ったコンビニでも甘いものをいくつも買ってもたせた。
なんて素敵なパパなんだろう。誰も言ってくれないから自分で書いておく。
でも、スタイルを気にし始めている娘としては、父親からのウマいもの攻勢にビビることが増えてきた。私にとっては切ない話である。
「親の心子知らず」。そんな言葉が身に染みる秋である。
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