2018年4月16日月曜日

何を言っとるんだ、チミは!


私の現在のポジションは副社長だ。年齢は50代前半だ。そう書くといっぱしの貫禄が備わっていても良さそうだが、言動は若い頃から進歩がない。

なぜこんなことを書き始めたかというと、昭和の人気映画「社長シリーズ」を見たのがきっかけだ。充分オジサマであるはずの私だが、昭和の社長サン達のイメージには遠く及ばない。


「社長シリーズ」は、ご存じ森繁久弥演じる社長さんがテンヤワンヤを繰り広げるシリーズだ。Wikipediaによると昭和31年から昭和45年にかけて全部で33作品も作られたらしい。

いま、BS11で毎週放送されているのだが、先日見たのが「社長道中記」と「続・社長道中記」だ。昭和36年の作品である。

私が子どもの頃、勝手に想像していた「社長像」は森繁演じる社長さんの雰囲気である。

三つ揃いの背広のベストの前ポケットに両手の先をツッコミながら、お腹を突き出してウッシシしている貫禄のあるイメージである。

「何を言っとるんだね、キミは」。仏頂面でそんな言い方をする。「キミは」が「チミは」と聞こえるぐらいが社長っぽい。

50代で経営陣のハシクレにいる私も、立場としては「何を言っとるんだね、チミは」が出来るはずなのだが、そんな重厚感はまったく無い。

キャラ的な問題ではなく、イマドキの50代では昭和の頃のドッシリ感は出せない。加東大介演じる専務さんのように「それはですなあ。。。」と悠然と構えた感じも出ない。

若ぶっているつもりはないのだが、それが今の時代ってものだろう。昔の人の熟成感というか、老成感は現在からは想像できない。

ビックリしたのが「社長道中記」が公開された当時の森繁さんの年齢だ。48歳である。古ダヌキのような風貌の加東大介さんでも50歳である。私より年下だ。卒倒しそうになった。

社長シリーズが始まった当初の森繁さんは43歳である。木村拓哉より年下である。唖然とする。40代で十二分に「昭和の社長さん」の雰囲気がプンプン出ていたわけだ。

以前、このブログで書いたことがあるが、昭和の大人気ドラマ「太陽にほえろ」のボス役を石原裕次郎が演じ始めたのは30代である。それを知った時も衝撃だったが、「社長シリーズ」の森繁さんにもビックリだ。


映画の中で描かれる昭和という時代の大らかさも魅力的だ。ブラック企業だの、うつ病だの、コンプライアンスだのといった言葉とは無縁な空気が漂っている。

そりゃあ当時だってもちろん厳しさは同じだろうが、無機質でギスギスした雰囲気ではない。戦後復興から高度成長していくエネルギーに満ちた大らかさが感じられる。

それにしても、戦後の焼け野原からたった10年で「社長シリーズ」のような喜劇が作られていたわけだから、当時の人の元気さに感心する。

私が見たのは昭和36年の作品。戦後わずか15年程度だ。既に丸の内は整然とし、銀座のネオンも怪しく光っていた。

復興のパワフルさに改めて感心した。15年なんてアッという間である。私自身、15年ぐらいなら「最近」という感覚である。

玉音放送から10年やそこらで、森繁社長は銀座のマダムとネンゴロになろうと奮戦している。実にたくましいと思う。

エネルギッシュな先人達のおかげで今があるんだと痛感する。

そんな小難しい話より、社長さんとマダムの話だ。

60年ぐらい前の映画なのに、銀座のマダムに気に入られようとアレコレ頑張る社長さんの必死さが可愛い。今と何も変わらない。あと一歩のところで必ず邪魔が入っちゃうのが最高である。

60年前のヒヒオヤジを見習って、私も猪突猛進しようと思いを新たにした。

その前に、「何を言っとるんだ、チミは」というパフォーマンスを優雅にこなせるように頑張ろうと思う。

2 件のコメント:

  1. 同感です。昭和の時代の映画やドラマを見ていると役柄と歳がイメージと重なり合いますね。これは裏を返せば、今、昭和を舞台にすると、10歳くらい役柄より実年齢が老けた人を持ってくてようやく釣り合う感じがします。でも昔の映画にあった大らかさは、どうしても再現できないのは時代の違いなのでしょうね。

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  2. 道草人生サマ

    クスリの話に引き続き、共感していただきありがとうございます!
    大らかさの件は、あくまで自分が歳をとったせいでそう感じるのかとも思いましたが、確実に違ってましたよね。時代そのものがのぼり調子だったから、どこか余裕みたいな空気が漂っていたのかもしれませんね。

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