気付けばダイビングを趣味にして30年以上が過ぎた。水中撮影歴も同じぐらいになる。
その昔、重たい一眼レフをこれまた重たい金属製ケースに入れてエンヤコラと潜っていたのだが、今ではコンパクトカメラをプラスティック製のカバーに入れてお手軽に撮影している。
ダイビングの世界においてここ20~30年の間で一番変わったのが水中撮影機材だと思う。昔の苦労は何だったんだと言いたくなるほど気軽に綺麗な写真が撮れるようになった。
今回のフィリピン・ボホールへの旅には、オリンパスのコンパクトデジカメ「TG-5」を持参した。今では使用禁止用語になったが、いわゆるバカチョンカメラである。
オリンパスのカメラには水中モードが登載されている。海の中を考慮した露出調整などが優秀で、いわゆる青かぶりをクリアする綺麗な発色が特色だ。
水中モードに設定して構図を決めてシャッターを押すだけで、その昔なら七転八倒して撮ったような写真が簡単に写せる。
ある意味、拍子抜けする。苦労して撮れたという感動がない。デジカメだから撮影枚数は無制限だし、当然だがその場で出来映えも確認できる。
ふた昔前は、水中でフィルム交換は無理だから最大でシャッターは36回しか切れなかった。出来映えも現像するまで分からなかった。
今は別世界にいるような感じだ。まあ、昔を懐かしむより現在の便利さを享受した方が建設的である。四の五の言わずに文明の利器にお世話になればいいのだろう。
でも、シャッター1枚1枚に“勝負”していたような感覚があった昔のほうが正直言って楽しかった。
さて、エジプトやカリブ海、はたまたパプアニューギニアやアジアの秘境みたいな海でヘンテコな魚を必死になって撮影してきたが、今の私は単純に気持ちよい写真が撮れれば満足である。
一周回って原点に戻ったような感じだ。得体の知れない魚に出会うよりボンヤリとクマノミを眺めたり、綺麗なサンゴを見ている方が幸せな気分になる。
ワイドな画像は外付けのフィッシュアイコンバージョンレンズを装着して画像を150度ぐらいまで広げて撮影している。
画像クリックで拡大されます。
伊豆の大瀬崎で30ウン年前にダイビングの講習を受けた際、寒くて濁っていた海にゲンナリした。雑誌に載っているような青くて美しい水中景観に憧れたのが、こういう画像を撮りたくなる原点だ。
水中写真の世界は、小さな魚を接写するいわゆるマクロ撮影が主流だが、やはり広がりのあるワイド画像は捨てがたい。
オリンパスの水中モードは、比較的浅い水深の景観なら自然光でも充分に被写体の色を再現してくれる。今回の浅瀬のサンゴ画像は多くがストロボの電源をオフにして撮影した。
水深5メートルぐらいでの一枚である。太陽光の位置が丁度良かったからストロボ無しで充分に綺麗に撮れた。オリンパスさまさまである。
今どきのコンパクトカメラは色彩表現も豊かで、一眼レンズにかなり近いレベルに進化している。
全長1センチ程度のガラスハゼである。結構シャープに写っている。今の私にとってはこのぐらい写せれば満足である。
マクロ撮影の画像を続けてみる。小っちゃいエビを2種類とヤマブキハゼ、ウミウシ2種類である。
オリンパスのコンパクトカメラは「TG-1」「TG-3」も使ってきたが、「TG-5」はオートフォーカスの迅速さが更に向上したようだ。
露出補正ダイヤルも操作しやすくなり、専用の水中用ハウジング(防水ケース)の使い勝手も良くなった。
特別に凝りまくった写真は別として、普通に綺麗な水中写真を撮りたい人にとっては、もはや完成域に達したレベルと言っても大げさではないと思う。
ついでにアレコレと画像を載せてみる。
20年ぐらい前のほうが斬新でカッチョいい写真が撮れていた。情熱が燃えたぎっていた頃とホゲホゲした気分で潜っている今とでは、出来映えが違うのも仕方がない。でも、ヘトヘトになって潜っていた頃と今とどちらが楽しいかと言えば、今のほうが楽しい。
そういう達観も人生後半戦には必要だろう。
フイルム時代の方が、一枚の写真への思い入れは強かったですね。特に写真屋さんで上がってきた時に失敗したカットを見た時の挫折感というかショックは大きかったです。これは今では味わえない感覚ですね。デジタルはすぐに消去しますから。
返信削除でもそんな失敗も含めて焼き付けられた写真を見る喜びは今よりも大きかったな、と思います。
道草人生さま
返信削除まったく同感です。今では撮るだけ撮ってもプリントする機会もなくなりました。