アルデンテなんて言葉も誰も知らず、ミートソースかナポリタンぐらいしか普及していなかった時代を経て、カルボナーラ、ボンゴレあたりがグイグイ出てきたのが40年ぐらい前だろうか。
その後、バブル全盛時にパスタというシャレオツな存在として日本中を席巻するに至った。まさに“スパゲッティー”の成長物語である。
20代から30代の頃は、やたらめったらイタリアンを食べに出かけた。前菜やメインも仕方なく注文したが、食べたかったのはパスタ類だけだった。
馴染みになった店では、マナーもルールも何のその、前菜もメインも無しでパスタだけ3種類ほど一人で食べたりした。
家庭人だった頃、料理上手な元奥さんに頼んで週末の朝昼兼用メシは決まって2種類のパスタを作ってもらった時期があった。
ポルチーニ入れまくりパスタとか、牡蠣てんこ盛りパスタなどアレコレ食べまくってぶりぶり太った。
イタリアに旅行に行っても、取り憑かれたようにパスタを食べまくる。各地で名物パスタをさんざん食べてきた。
ボローニャのボロネーゼ、ジェノバのジェノベーゼ、ローマのカルボナーラはそれぞれ現地で何度も食べた。赤ワインで煮込んだパスタやトリュフのパスタなどもゲップがノンストップになるほど食べてきた。
大好きなのに日頃イタリアンに出かける機会は滅多にないから、なんとなく昔よりパスタに縁遠くなっている。
先日、娘のリクエストで中野駅に近いパスタ屋さんに出かけた。その名も「パスタキッチン」である。
娘が幼稚園、小学校の頃、通学経路で中野駅を使っていた関係で知った店だ。娘はその後も時々食べているようだが、私としては5年ぶりぐらいの訪問。
ウニのパスタ、カルボナーラ、海老とキノコのオイルパスタを分け合って食べた。ただただ美味しくて感動した。何度もうなり声をあげたほどウマかった。
この店は本格的なイタリア料理店ではない。パスタがメニューの大半を占める、いわば日本型パスタ専門店というジャンルだろう。
若い頃は、つい本場モノじゃなきゃダメだみたいなヘンなこだわりがあったが、この店の日本的パスタのウマさを味わうと、そんな固定観念がバカらしくなる。
もちろん、本場の味を忠実になぞるのも凄いことだが、日本的アレンジが絶妙だったら単純に口の中がハッピーになる。
考えてみれば、子どもの頃に食べてきたスパゲッティーなるものは、本場モノとは異質だった。アレを喜んで食べまくったわけだから、大人になってからエラそうに本場の味ウンヌンなどと気取っても仕方ないのかも知れない。
たとえば、本場のカルボナーラは生クリームや牛乳は使わず、ショートパスタで味わうのが普通だ。大半の日本人にとっては繊細に仕上げられた日本型カルボナーラのほうが美味しいと感じるはずだ。
そういう意味で、「中野のパスタ屋」は日本人が日本人のために完成させたパスタとして素晴らしいレベルだと思う。
昨年、娘をローマに連れて行って、さんざんパスタを食べさせまくった。高校生だから涙を流して感動するかと思っていたのに、どこで食べてもたいして感動しなかったのが不思議だった。
あの時の謎の答えが中野駅にあったわけだ。こんな最上級にウマい日本型パスタを幼い頃から味わっていれば、本場イタリアだからといって私のようにいちいち感動しないのも当然である。
というわけで、旅先では味覚や店の評価が極端に甘くなる私の底の浅さ?をひょんなことで思い知らされた。
日本的パスタは世界最高だと断言しちゃっていいと思う。
こんにちは
返信削除私はスパゲッチー、と呼んでます。
イタリアンで最後にメイン、というのには抵抗があり、最後にスパゲッチーが食べたい、という派です。従い、「最後にビステッカでなくて、フェデリーニのパスタをお願い」なんて言いたいんだけど、結局、マナー通りの順序になってしまい、イタリアンにはほとんど行かなくなってしまったのが現状です。確かに、イタリアより日本の進化したスパゲッチーやピザの方がおいしいと思いますね。
だけど、おなかいっぱい食べられるのは羨ましい。
佃在住サマ
返信削除そうなんですよね。ちゃんとしたイタリアンにになればなるほどパスタざんまいなど出来ない空気なのがメンドーです。
聞き忘れましたが、スプーンを使って食べるのですか?
返信削除私は、恥ずかしくて一度も使ったことはありません。
カレーもフォークで食べるのが正式だそうですが、一度フォークで食べてみたい気もします。
麺類ですからスプーンで食べたことは一度もないですねえ。イタリア人だってスプーンなど使わないのでは。。
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