2020年4月8日水曜日

一律現金支給のウソ


3月の段階から都知事が得意になって語っていたのが「首都封鎖」や「ロックダウン」という言葉だ。



インパクトがある響きだけにイメージが一人歩きしていたが、日本の場合、法令上そんな権限が国や自治体にも無いことがようやく浸透した。

言葉の持つイメージは使い方を間違えると無用の混乱を招きかねないわけだ。

「現金一律支給」。この言葉も世間に期待を持って広まっていたが、これまたビックリ。いま固まっている内容は一律現金支給などと呼べるようなシロモノではない。

一部の低所得者だけを対象にした制度に過ぎず、全世帯のうち6分の1程度だけが恩恵を受ける仕組みになる見込みだ。

その場合、対象になるのは1000万世帯程度。30万円の支給に必要なのは3兆円ということになる。

108兆円の経済対策をやるぞ!と安部首相が胸を張っていたが、その規模に比べると実にビミョーな話に過ぎない。

当初はせいぜい所得制限が実施されるだけで、年収1千万円を超えるような人じゃなければ現金給付が行われるというイメージが先行していた。

詳細が判明してきた今でも、まだそう思い込んでいる人が少なくない。これが一人歩きしてしまった言葉のイメージの怖さだろう。今後の議論でもう少しマトモな制度になることに期待したい。

政治は弱者を救うものだという考え方がある。もちろんそれは正しい。ただ、いまのような非常事態の中では弱者の定義が難しい。低所得者限定の政策の実効性には疑問もある。

ついでに言わせてもらえば、税金を払っていない階層だけを救済するわけで、真面目にしっかり高い税金を払っている側が腹を立てるのは極めて当然だと思う。

もっとも、政策の評価は全体像で判断すべきで、一部を引っ張り出して批判するのは簡単なのも確かだ。

つまり108兆円の経済対策が国民の生活をどう支えてくれるかが大事になってくる。本当に必要なところに救済の手が伸びるかがカギを握っている。

問題になるのは使い道だろう。いくら予算が潤沢にあったとしても分けの分からないところに浪費されたら無意味である。

東日本大震災の復興予算を例に取ると、あとになって次々と意味不明な予算の流用が明るみになった。

反捕鯨団体の活動に対抗するための予算、外国人向けの標識の設置予算、税務署の補修工事など、それって復興予算なの?と目を疑うものに税金が使われた。

それぞれ屁理屈みたいな理由はついていたが、普通の人の普通の感覚からすれば単なる流用だろう。

税金の使い道をチェックするのは会計検査院だが、厳しい検査は行われるものの、ムダ遣いを見つけても国会への報告や是正要求が出来るだけで機能は限定的だ。

それ以前に組織の規模からしてすべての税金の使い道をチェックするのは難しいという現実がある。

今回の緊急経済対策みたいな特別な予算に関しては特別なプロジェクトを編成して、フラチな火事場泥棒みたいな所業を厳しく監視して欲しいと願う。



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