2022年6月29日水曜日

不倫は文化かな

  

バンド活動のせいで最近は随分と音楽を聴く機会が多い。エラそうなことを書いてしまうと邦楽に関しては歌詞の世界観に惹かれて曲を好きになることが多い。

 

優れた歌詞にふれると日本語の面白さ、奥深さを実感できて楽しい。昭和の歌謡曲のように職業作詞家が作り上げた名曲は映画を観ているような気分になれる。

 

ちあきなおみの「喝采」、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」など誰もが知っている名曲は歌詞に力がある。シンガーソングライター全盛時代になって少し様子が変わったが、ウン十年も一線で活躍している大御所達に共通するのは歌詞の力だと思う。

 

話は変わる。

 

同居している娘が小林明子の「恋に落ちて」や竹内まりやの「純愛ラプソディ」などを好んで聴いている。不倫の歌だから親としては心配になるが、本人は不倫しているわけじゃないそうだから気にしても仕方がない。

 

不倫をテーマにした歌は昔から名曲が多い。やはり普通の恋愛より道ならぬ恋を描いた方がドラマティックになる。かつて石田純一が「不倫は文化だ」と語ってバッシングを受けたが、あれも本来は多くの芸術作品が不倫の中から生まれたという話が省略されてしまった話だ。

 

文芸作品なども不倫だらけだし、歌の世界だって同じ。やるせなさ、もどかしさみたいな情念は歌の世界にこそはまりやすい。その昔、大川栄策は♪愛し~ても愛しても、あ~~ヒトの妻~♪と絶叫していた。




そんな切なさが聴く側の昭和の大人達に刺さったわけだ。それにしてもベタな歌詞である。ベタ過ぎることが逆に迫力に繋がっているという分析も出来る。

 

ベタな歌詞と言えば島津豊などの競作で大ヒットした「ホテル」も凄かった。♪ホテルで会ってホテルで別れる♪であり♪私の家の電話番号が男名前で書いてある~♪という嘆き節である。

 


今ではホテルもカードキーがないとエレベーターで客室階に行けないから部屋での待ち合わせは出来ないし、手書きの電話帳を持っている人もいない。まさに古き良き時代の象徴みたいな歌詞である。

 

昔はアイドルだって不倫の歌を熱唱していた。西城秀樹の「ブルースカイブルー」は♪あのひとの指にからんでいたゴールドの指輪をひきぬき♪と歌い始める。結局は♪いたずらで人を泣かせるなと大人から頬をうたれた あの人も遠く連れ去られ・・・♪と叱られてしまう内容だ。

 



コロッケのモノマネのほうが有名になってしまった岩崎宏美の「シンデレラハネムーン」もタイトルからして限られた時間の逢瀬を描いており不倫ソングという解釈も根強い。

 

沢田研二の「時の過ぎゆくままに」も♪小指にくいこむ指輪を見つめ あなたは昔を思って泣いた 時の過ぎゆくままにこの身をまかせ 男と女がただよいながら・・・♪である。なんとも切ない。

 

キリがない話になるがそれこそテレサテンのヒット曲なんて全部が不倫方面だろう。タイトルからして「愛人」「つぐない」である。普通の恋愛のように聞こえる「別れの予感」だって不倫チックな内容だ。

 

テレサテンの歌の世界は男の作詞家が作り上げた世界観だが、女性側の微妙な心理描写として秀逸だと思えるのが竹内まりやの「マンハッタンキス」だと思う。

 

Don't disturb 閉ざされたドアの中だけが

私になれる場所 ここであなたが見せる優しさに

偽りはないけど どうしてこんなに寂しい

夜明けの足音近づいてくると

何もかもまるでなかったようにシャツを着る

いとしい背中眺めるの

私より本当はもっと孤独な誰かが

あなたの帰り待ってるわ

すれ違う心の奥身透かしながら♪

 

「ドントディスターブ」の一言だけでホテルでの逢瀬を表現しきっている。これって凄いことだ。クドクド書かずにその一言で情景が浮かぶ。上で紹介した島津豊の「ホテル」とは大違いである。

 

おまけに男の帰りを待っている奥さんを孤独だと言い切るセンスにゾクゾクしてしまう。これぞオトナの歌だと思う。

 

とかく世間は有名人の不倫騒動に目くじらを立てる。正義感ぶって正論ばかり言う人に限ってカラオケに行くと不倫の歌を情感たっぷりに歌ったりする。

 

やはり不倫は文化なんだろうなあ。

 

 

 

 

 

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