2022年12月19日月曜日

ソーキをぶりぶり


若い頃は苦手にしていたのに中年になってから好きになったものが結構ある。極端なケースではトンカツに添えられているキャベツだ。昔はいっさい手をつけなかった。いまは箸休めにヤツの存在は欠かせない。お代わりしちゃうこともある。

 

薬味も似たような感じだ。蕎麦屋に行っても若い頃は申しわけ程度にちょこっと入れるだけだったが今ではドバドバ入れたい。若造当時は人目が無ければ薬味を一切入れずに蕎麦を味わっていた。ヤボだったと思う。

 

ペヤングを始めとするカップ焼きそばのかやくですら開封せずに捨てていた。まったく具の無い焼きそばを頬ばるのが幸せだったのだが、今ではカップ焼きそば用の乾燥キャベツだけをAmazonでわざわざ買ってしまうほどあの“謎キャベツ”が好物になった。

 



 好き嫌いを克服したというより味覚の好みが変わったのだろう。その証拠にハンバーグやステーキに必ず付属してくるニンジンは絶対に食べない。「これは頼んでませんよ」といつかお店の人に言ってしまいそうなぐらい苦手だ。

 

鍋にエラそうに入っている春菊は一瞬で鍋から退場させるし、カツ丼の上に当然のように居座っているグリーンピースも瞬時にどかす。お子ちゃま的な味覚は今も変わらない。

 

先日、沖縄そばが無性に食べたくなって有楽町の交通会館地下にある専門店に出向いた。店の名前はいつも忘れる。正確にはソーキそばが食べたくなったというのが正しい表現だ。

 


 

沖縄そばを初めて食べたのは大学生の頃だった。40年近く前のことだ。沖縄の食べ物を東京で手軽に食べるような時代ではなかったから初体験の衝撃は今もしっかり覚えている。正直言って美味しいとは思わなかった。

 

「何じゃコレ?」。それが感想だった。そばだと聞いたから日本蕎麦のイメージで向き合ったのだが、うどんだかきしめんだか分からない謎の麺が出てきて驚いた。おまけに味があるのかどうだか分からないようなアッサリしたスープ。ついでに言えば、そばなのに紅ショウガは載っているし骨付き豚肉が乗っかっている。衝撃だった。

 

豚アバラ肉の煮込みであるソーキは1個だけだったから肉食の若者としてはそれのみに満足して他はまったく気に入らなかった。当時は牛丼にも紅ショウガをトッピングしない“お子ちゃま舌”だったから悪印象しかなかった。

 

その後、潜水旅行で数え切れないほど沖縄に行き、なかば渋々と沖縄そばを食べていたが、ソーキがたくさん載ったソーキそばが好きになり気付けば中毒みたいにソーキ、ソーキと寝言でも叫ぶようになった。ウソです。

 

というわけで、若い頃にウマいと思わなかったのに後になって大好物になった食べ物の代表が沖縄そばでありソーキそばだ。

 

唐辛子の泡盛漬けである「コーレーグース」をぶりぶり投入してスープがまるで飲めなくなるぐらい辛くするのも悪くない。ソーキをてんこ盛りにすればスープを飲まずとも満腹になるからそんなヘンテコな食べ方もするようになった。

 

気付けば紅ショウガも好きなって初体験の時にネガティブな衝撃だった部分がすべて魅力に思えるようになった。数年前に潜水せずにただ沖縄にボーッと一人旅に出た際も23日でソーキそばを6回も食べたりもした。

 



この日訪ねた沖縄そば専門店はカウンター中心でどこぞのイートインみたいな手軽な店だが、味のほうはかなり本格的で気に入っている。ソーキの味付けもなかなかだ。

 

ソーキそばに別盛りで単品ソーキを注文してそばの上に追加で載せると得も言われぬ美しい姿になる。「ソーキぶりぶりそば」の完成である。ラーメンを食べる時もチャーシューをぶりぶり乗せたい私にとっては眺めているだけで目の保養になる。

 

それにしても沖縄そばの麺を「そば」と表現することへの違和感はいまだに消えない。とはいえ、沖縄きしめん、沖縄細うどんって呼ぶのも違う。いっそ「沖縄麺、ソーキ麺」でいいような気がする。

 

そんなどうでもいいことを真剣に考えながらソーキそばを一心不乱に食べている時間が好きだ。折を見てまた食べに行こうと思っている。次は別皿ソーキを2つ追加して「クレイジーソーキそば」としてムホムホと頬ばりたい。

 

 

 

 

 

 

 

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