2023年1月30日月曜日

蕎麦人のたしなみ


うどん人か蕎麦人か。東京生まれの私はもちろん後者である。マニアックに好むほどではないが時折無性に蕎麦が恋しくなる。うどんも嫌いではないがわざわざ食べたい気分にはならない。「うどんは西の食い物だろう?」などとキザったらしく言っちゃうこともある。

 

あらゆる分野の食べ物が西からの攻勢にさらされている。おでんに串カツ、天ぷらにウナギに至るまで関西風が猛威を振るう?昨今だが、蕎麦ばかりは東の横綱として頑張って欲しいものだ。

 

東京人でも若者はうどんを好む傾向があるようだ。「丸亀製麺」や「はなまるうどん」のようなファストフードや「つるとんたん」みたいな洒落たうどん屋さんに馴染んでいるせいか、蕎麦を無性に食べたくなる若者は少数派みたいだ。

 

蕎麦のほうは「ゆで太郎」や「小諸そば」といったオヤジっぽい雰囲気と立ち食いのイメージのせいでナウでヤングな若者には支持されにくいのかもしれない。

 

最近はなぜか寿司や蕎麦ぐらいしか食べたいものが思い付かない日が多く、そんなところからも我が身の衰えを痛感する。そうはいっても蕎麦屋に行けば結構ドカドカ食べてしまう。

 



思えば「もり蕎麦一人前」という食事で済ませたことは物心ついてから一度もない。専門店ならもりやざるを2枚以上頼む。街中の気安い蕎麦屋なら丼モノとセットにするか温かい蕎麦も一緒に頼む。

 

この画像は築地の「さらしなの里」での一コマ。3種類の蕎麦を並べてご満悦だった時だ。味が違う蕎麦を交互にズズズっとすするのは幸福だった。蕎麦ってもともと木の実みたいなものだからきっとカロリーはゼロだ。いっぱい食べても罪悪感に襲われない。

 

私の食生活は朝夜の2食が基本だから夜の蕎麦は当然のことながら晩酌とともに楽しむ。江戸っ子としては蕎麦と日本酒の組み合わせにイキを感じるものだが、私はナゼかその組み合わせだと気持ち悪くなる。きっと体質的な理由があるのだろう。

 


 

仕方ないからビールで始めた後は焼酎の蕎麦湯割りをお供にする。これがまた蕎麦飲みの時間を楽しくさせる。蕎麦がきや天ぷらをツマミにホロ酔いになってからズズズっと蕎麦を味わうのがオツだ。

 

たいていの蕎麦屋ではアッサリとした蕎麦湯が出てくるが、焼酎で割る際はドロドロ系の蕎麦湯のほうが間違いなく美味しい。

 

ドロドロの蕎麦湯を出す店は意外に少数派だ。有名なところでは麻布の「更級堀井」などがあるが、先日、何年かぶりに訪ねた銀座の蕎麦料理屋「流石Le蔵」でもそっち系の蕎麦湯が出てくる。

 



 クラブ街の雑居ビルの中に隠れ家的にあるこの店は人気の蕎麦専門店が母体だそうで炭火焼きや洋風料理と共に蕎麦を楽しめる。オシャレで高級感もあってまさに“大人の蕎麦飲み”が楽しめる。

 

イキな渋い系ではない。銀座のオネエサンを伴っていくような雰囲気。私も実際にそんな用途で出かけた。一品料理をアレコレ食べてから最後に蕎麦である。蕎麦はかなり美味しかった。ナゼか以前より満足感があった。

 




 

揚げた蕎麦の実がまざった味噌をツマミにスタート。いきなり白飯が欲しくなるウマさ。炭火焼きの鶏肉やフォアグラが乗った蕎麦がきをつまみながらグビグビと飲む。

 

肝心の蕎麦湯の画像を撮り忘れたが、ドロドロの蕎麦湯は冷めないようにポットで出してくれる。香りの良い蕎麦焼酎は別な器で出てくるから自分好みの濃さで作れるのが嬉しい。

 

蕎麦もそれなりのラインナップが揃っているが、この日は普通のもりと名物の冷やかけを頼む。同行のオネエサンはゴマダレのもり。しっかりツマミで飲んだ後でも私は2皿以上は蕎麦を食べたくなる。その気になれば3皿、4皿でもいけると思う。

 




ひやかけは文字通り蕎麦もつゆもどっちも冷たい一品。もり蕎麦のつゆとはまったく異質のこれ専用の出汁の風味が最高だ。これだけで34杯は食べたいぐらいである。

 

通常のもり蕎麦もコシ、風味ともに上等。蕎麦つゆの好みは分かれそうだが、蕎麦にちょこっとしかつゆを付けない江戸っ子的な食べ方ならば何も問題ない。ゴマダレも悪くなかった。

 

この日もさんざん飲んで食べてバカ話に花を咲かせた。「寿司、蕎麦、ウナギだけ食べていればハッピー」という極端な幸福論にたどり着いた。発想が完全に高齢者である。

 

酔いが覚めて冷静になった今はやはりラーメンやカレーやトンカツも捨てがたいと当たり前のことを感じている。

 

 

 

 

 

 

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