2023年2月3日金曜日

寒さも調味料?



 冬は女性の薄着が見られないことが残念だが、寒い時ならではの魅力も捨てがたい。いきなり扇情的な画像を載せてしまったが、今日も上の画像に関係なく食べ物の話を書く。

 

面白いもので暑い時期にはちっとも惹かれなくても寒くなると途端に恋しくなるものは多い。この感覚こそが四季のある国に暮らす幸運だろう。

 

炎天下の後の熱帯夜に飲みたいとは思わない代表がヒレ酒だ。冬の味の象徴みたいなものである。アッチチとか言いながらすするとジンワリと体に染みこんでいく。冬は冬で悪くないと納得する。

 


 

その昔、高校生の頃のこと。同級生で代々続くフグ屋のセガレから極上のヒレをプレゼントされたことがあった。アルミホイルに包まれたその物体を渡されたときは何かの呪いかオマジナイの道具かと思った。

 

その友人に詳しく解説してもらって家で楽しんでみたのが人生初のヒレ酒だった。高校生の舌には良さがさほど分からなかったのだが今では大好物になった。

 

つくづくあんな素敵な飲み方を考案する日本人の食に対する貪欲さを痛感する。魚のヒレを炙って熱々の酒に投入しようと考えついた人は天才だ。普通ならそんなことは考えない。偉人の功績だろう。

 

鍋物やおでんも冬の味だ。エアコンの冷気で冷え切っちゃった夏の夜におでんを突っつくのも悪くないが、やはり冬真っ盛りの時こそ恋しくなる。

 


 

私は基本的におでんが苦手なのだが大人ぶってイヤイヤ食べているうちに良さが分かるようになった。「出汁の旨味」という日本料理の最重要ポイントを実に完璧に体現した逸品だと思う。

 

そんな凄い存在なのに世間であまりもてはやされないのも良い。昭和のフォークソングの世界では安い食べ物の代表みたいに描かれていた。昭和の頃はおでんの屋台をよく見かけたが最近ではすっかり見なくなった。コンビニが普及したことの反作用なのだろう。

 

先日久しぶりにクエ鍋を食べに行った。銀座にある土佐料理店「祢保希(ねぼけ)」の冬のレギュラーメニューなので毎年寒くなると条件反射のように出かける。

 

土佐料理屋だからカツオのタタキにごく自然にニンニクスライスが付いてくるのもこの店のポイントだ。お寿司屋さんなどでウマいカツオをちょくちょく食べているせいで、この店のカツオにはもう少し頑張って欲しい?と思うのだが、ニンニクスライスをたっぷりもらえるからその部分に満足してしまう。

 


 

鯨料理が常備されているのも嬉しい。これはウネスの燻製。口の中でジュワっと脂と旨味が広がる。クジラベーコンに代表されるいわば日本古来のジャンクフードみたいなものだが今ではすっかり高級品になった。

 

さて、クエ鍋の特徴は魚なのに肉を食ったかのような満足感がある点だろう。魚だから淡泊なのだが存在感というか重量感というか「しっかり食ったぞ」という気分になる。

 

似ているわけではないが鶏肉をガシッと食べたような感じとでもいおうか。アッサリし過ぎない食べ応えが満足感に繋がる。よく比べられるふぐ鍋のふぐよりも身肉自体の味が濃い。万人受けする美味しさだと思う。

 



ふぐ鍋のようにポピュラーじゃない点も良い。初めて食べる人には想像がつかない味だ。ふぐの淡泊すぎる味に拍子抜けしたことがある人ならクエ鍋のファンになる可能性は高い。

 

鍋だと何故か野菜も食べてしまう。日頃野菜を親の仇みたいに嫌っている私でもムホムホ食べてしまう。おまけに「美味しい」とさえつぶやいてしまう。

 

変な話、私はとっくの昔から充分すぎるほど大人なのだが、鍋の野菜を無造作に食べていると自分が立派な大人になったような気がする。意味不明でスイマセン。

 

というわけで、とくにオチは無いのだが冬の味覚を堪能していると身を切るような寒さもウマいものに感動するための舞台装置だと思える。まさにポジティブシンキングである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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