2023年6月2日金曜日

蛇の市本店、舟寿し、繁乃鮨


引っ越しすると近隣のお寿司屋さんを探索したくなる。新居に暮らし始めて半月ほど過ぎたが、既に何軒も訪ねてみた。日本橋ビギナーだからまだ分かったようなことは言えないが、徐々にこの街の特徴みたいな感じが掴めてきた。

 



ここ数年、客の都合に関係なくおまかせというスタイルで一人34万も取るような摩訶不思議な寿司屋が増殖中だが、私は間違ってもそういう店には行かない。好きなモノを自分のペースで楽しむのが寿司の基本だ。

 

3万も4万も出せばウマいのは当たり前だ。でも寿司ってそういう類いの食べ物ではない。そこそこワガママに飲み食いしてもその半額程度で充分にウマい寿司は堪能出来る。

 

さて、日本橋界隈のお店の話だ。探索し始めて感じたことは「まぐろの赤身がウマい」という点。やはり赤身は寿司の一丁目一番地だと思う。これが美味しければその他のネタも間違いない。

 

日本全国それこそ山の中の温泉宿ですらナントカの一つ覚えみたいにまぐろの刺身が出てくるが、味の無いシャバダバなヤツばかりである。寿司屋の世界でもトロには気を遣っても赤身をないがしろにしている店は少なくない。安定してウマい赤身を出すお寿司屋さんはそれだけで誠実な商売をしていると思う。

 

日本橋という土地柄は年齢層が高めの客を相手にしているせいか、赤身をはじめとする“王道ネタ”がキチンと美味しいのが特徴だろう。オジサマど真ん中の私にとっては有難い限りだ。

 

いわゆる「江戸前寿司」の本家だけに海老や穴子、コハダといった仕事を施してあるネタに抜かりがないところが嬉しい。生魚を乗っけただけのカジュアルなお店とは一線を画している。

 



 

赤身のヅケも当然のように用意されている。即興で作るヅケではなく、熱湯にくぐらせてから冷水でシメる湯霜造りだ。個人的に湯霜のヅケが常備されている店は無条件で好きになってしまう。

 

三越やコレド室町に近い場所にある「蛇の市本店」では赤身とトロに近いの部分の2種類のヅケが用意されていた。赤身ファンの私だがどちらもニンマリする美味しさだった。正しい寿司?を食べている感覚とでも言おうか。

 

この店では“おぼろ”も印象的だった。手がかかるから今時おぼろを使うお店は絶滅危惧種みたいなものだが、冒頭の画像の海老の握りやコハダに適度にまぶされていて味のコントラストが絶妙だった。

 


 

こちらのヅケは人形町寄りの静かな路地に佇む老舗「舟寿し」で出されたもの。これまたマグロの旨味が感じられてニンマリした。江戸の魚河岸はもともと日本橋にあった。気のせいか界隈のお寿司屋さんにはどこか江戸前の流儀のようなものがしっかり根付いている印象がある。

 

どの店で過ごしていても「さすが東京の寿司だね」と心の中でつぶやきたくなる場面がある。軽めの飲み食いだったら諭吉1枚とちょっとでこういうニクい寿司が堪能出来るから私としては大満足である。

 




 

穴子の安定的なウマさもこのエリアの特徴かもしれない。当然ながら冷えた作り置きをシャリに乗っけるようなパターンはない。ツメ、いわゆる甘ダレの味も甘ったるいだけではない。上から「蛇の市本店」、「舟寿し」、そして日本橋本町寄りの「繁乃鮨」の穴子だ。

 

繁乃鮨も一見敷居が高そうだが入ってしまえば心地よい空間でコスパも良かった。イクラが醤油漬けではなく塩イクラだった点も東京っぽさを感じさせる。私が子供の頃はイクラといえば塩が普通だった。いつの間にか主流になった醤油漬けも好きだが、塩イクラのウマさは独特だと思う。

 


 

私が量を食べられなくなったせいもあるのだが、今のところ訪ねてみたお店はどこもコスパの面でも納得だった。つくづく銀座の寿司屋に見習って欲しいと感じる。こっちが普通でアッチが異常だと再認識している。

 

名物みたいなウマいものもあった。インパクトのあるそういう一品に出会うとすぐにでもまた行きたくなる。実際に一週間も経たずに再訪して味わったのが次の二つ。

 




「舟寿し」の銀鱈粕漬けと「蛇の市本店」のたまご巻きである。粕漬けは大袈裟ではなく感動的な味わい。そこら辺?の西京焼きぐらいしか食べていない私にとって目ん玉が飛び出そうになった。熱燗と共に口にすると心底ニッポン人に生まれて良かったと叫びたくなった。

 

たまご巻きもその美味しさにムホムホした。もともと握りの最後は卵焼きをシャリ付きで食べるのが私の定番だ。甘めのタマゴがいわばデザート的な役割になる。このタマゴ巻きはゴマやゆず、大葉?などが渾然一体になっていて何個でも食べたくなる美味しさだった。

 

なんだかまとまりが無くなってきたが、まだ日本橋界隈を探査し始めたばかりである。メンドーだから納得できたお店に通いたい気持ちと、未知のウマいものを探し続けたい気持ちがせめぎ合っている。

 

実に平和な悩みである。これってとっても幸せなことだと思う。

 

 

 

 

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