2023年8月4日金曜日

渋いすき焼き、モダンなすき焼き


暑いから鍋物など見向きもしたくないが、案外食べてしまえば幸せになれる。気付けば身体は冷房のせいで変な冷え方をしているから健康面ではアリだと思う。

 

というわけで、今日は最近食べた趣のまったく異なる2種類のすき焼きについて書く。相変わらず話の舞台は中央区である。

 

一軒目のすき焼きは人形町の「大和」という店。基礎知識はまったく無いまま通りすがりに入ってみた。入ってみてビックリ。私好みだった。渋さ満点の昭和感漂う店の雰囲気にまずは感動。

 



畳に座って鍋を突くなんて正しいオジサマ族の見本である。牛、豚がメインのようだが、この日はさくら鍋を選ぶ。夏バテ対策には馬肉で力をつけたい。


鍋の前に軽く馬刺しで一献。これがまた赤身の刺し身だったから嬉しかった。脂の旨味も捨てがたいが、夏場は何でもかんでもサッパリが恋しい。

 




で、鍋登場。割下の他に味噌も用意される。江東区森下にある老舗「みの家」みたいな感じだが、あちらのように「賑わう宴」という風情ではなくノホホンとした空気感で居心地が良い。フラっと通りすがりに馬肉を突っつくみたいな小粋でユルい感じだ。

 

刺し身で食べるような鮮度の良い馬肉をレア気味に仕上げて味わう。ヘルシーな気分になるし実際に食べた後のお腹の感じが楽ちんなのも馬肉の魅力だ。

 



仕上げには何の変哲もないうどんで決まりだ。場肉の旨味を吸った割下と生卵の残り汁で味わう。マズいはずがない。オーソドックスで単純明快な美味しさに満足した。

 

別な日、今度は京橋にある「婆裟羅(ばさら)」でトマトすき焼きを味わった。こちらは渋さとは対極のイマドキの高級和風モダンなしつらえのお店だ。

 

肉自体はオーソドックスな牛肉だが、トマトを上手にすき焼き味で食べさせるのがウリである。お店の人が全部やってくれるのでラクチンだ。

 



 メインのすき焼きの前にはウマいものがちょっとづつ箱に敷き詰められた八寸が出てくる。正直、この宝箱?さえあればオジサマ族は肉を食べなくても満足できちゃうレベル。どれもウマいし、アルコールとともにちびちび突ついていればお腹も落ち着いてくる。

 

肉ももちろん美味しいがトマトやタマネギが実に味わい深い。子供の頃にこんな味を知ったら野菜嫌いにならなかったと思う。ちなみに春菊とか白菜とか余計な野菜を使わないのがこの店の嬉しいポイントだ。

 



何年か前にこの店に始めて行った際に衝撃だったのがすき焼きの後に出てくるパスタである。これもまたお店の人が作ってくれる。すき焼きという食べ物の進化系を強烈に実感した記憶がある。

 

この日も当然のようにトマトやタマネギ、牛肉の旨味を吸収した割下をベースにしたトマト味の平打ち麺がシメとして出てきた。思わず笑ってしまうほどウマい。

 



賑やかに盛られた八寸を突っついて程よく酩酊気味になり、美味しいトマトすき焼きで充分に満腹になったとしてもこのパスタは絶対に手を出さずにはいられない。いや、完食せずにはいられない悪魔的な美味である。

 

大げさに言えば日本料理の象徴みたいなすき焼きがイタリアンの象徴であるパスタを仲間に入れちゃうわけだから日本人の美食追求への貪欲さを体現した逸品だと感じる。

 

というわけで、オーソドックスな渋いすき焼きもモダンに進化するすき焼きも甲乙つけがたいというのが本日の結論。

 

 

 

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