2023年10月23日月曜日

ステーキという響き


子供の頃、ごちそうといえばステーキだった。昭和の食いしん坊な子供にとってステーキは魅惑的な食べ物の第一位だった気がする。すき焼きでもしゃぶしゃぶでもなくステーキである。肉の塊が目の前に出てきてそれを独り占めできることが幸せだった。

 

外食産業が今ほど隆盛ではなかった時代だ。時々連れて行ってもらったステーキ専門店は子供の私にはパラダイスだった。1キロのステーキだって平気で食べた。

 

あれこら半世紀近くが過ぎた。すっかり牛肉が苦手になってしまったが、いまだに「ステーキ」という言葉の響きにはなぜか心が揺さぶられる。「焼肉」という言葉からは感じられないロマンがある。

 



先日、日本橋本町に近いエリアにある「せいとう」という老舗のステーキ屋さんに行く機会があった。最近はアメリカあたりからやってきた横文字の名前のステーキハウスがぶったまげるような値付けなのに繁盛しているが私の好みはそういう感じではない。

 

子供の頃に親に連れて行かれたステーキ屋さんは妙に薄暗い照明で重厚感のある造りだった。かといって当時の高級フレンチのような窮屈な高級感ではなく暖炉があるかのようなくつろげる居心地の良い空間だった。

 

思い出補正も多分にあると思うが、ステーキ屋さんにはどこかレトロな昭和感を求めたくなる。ヘンテコな私のこだわりだが、初訪問のこの店はどちらかといえばそっち系の雰囲気だったので気分がアガった。一品メニューもいろいろあって気軽に飲み中心で過ごすことも出来そうだ。

 



最初に載せた画像はトマホークステーキという名の骨付きのデカいヤツである。サイコロステーキみたいに細かくカットされちゃうのは面白くない。ステーキというからにはドカンと目の前に置いて欲しい。その点でさすがにこのデカいステーキは合格である。

 

この日は800グラムのステーキだったようだが、脂身の部分を除けばびっくりするほどの量ではない。2人なら余裕、3人なら物足りないぐらいだろうか。2つ目の画像はムール貝のナントカ。ワインのお供にバッチリな濃い目の味付けが良かった。

 

ガーリックライスや牛すじご飯、ウニクリームパスタなどご機嫌なメニューもあったのだが、この日は珍しく炭水化物を抜いたので次回は是非そっち系も頼んでみたい。

 

すき焼き、しゃぶしゃぶ、焼肉のどれも若い頃は大好きだったが、ステーキに別格なイメージを持つのは肉の厚みのせいだろう。ハムカツのハムは薄ければ薄いほうがいいが、ステーキはとことん厚切りであって欲しい。

 

かつてはさんざん脂っぽい肉を喜んで食べていたが、今では赤身部分ばかり食べる。もちろん歳のせいではあるが、昔は社会全体に「赤身より霜降り」みたいな風潮が根付いていた。いわば「霜降り信仰」である。

 

米と魚を食べてきた日本人にとって牛の肉は硬くて食べにくかったから日本独自の肉牛飼育方法を確立することで結果的に「霜降り信仰」が広まってしまったのだろう。

 

適度な霜降りならともかく行き過ぎちゃうと大人にはキツいだけだ。仕事絡みの会食などでは今だに上級ラインだからという理由だけで霜降り肉が出てくる。参加者全員が本当は低級価格帯の赤身肉を恋しく思いながら無理して霜降り肉を食べている。切ない光景だと思う。

 

とはいえ、最近は赤身肉も“復権”してきた。ここ10年ぐらいだろうか、いろんなお店で赤身肉が見直されたことで食べ盛りの若者まで霜降りより赤身を好む傾向にある。正しい方向だと思う。

 

すっかり牛肉を食べる機会が減った私がステーキを食べるのは年に数回である。その大半は「ロイヤルホスト」のワンポンドステーキだ。ファミレスとはいえ5千円もする。

 



ファミレスの中では一歩上の美味しさを誇るロイホだが、ワンポンドステーキ以外のステーキはイマイチである。やはりデカい塊で焼いてこそウマいのがステーキの特徴だろう。

 

ソースも2種類選べるし、焼き方も細かくリクエストできる。450グラム程度の肉だが、2割ぐらいは脂だからそれを除ければ案外ペロリである。ファミレスで5千円も出すのは気が引ける人もいるだろうが、変に気取ったステーキ専門店でどうでもいいステーキに大枚はたくならこっちのほうが賢明だと思う。





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