冬はすなわち珍味の季節である。あん肝、白子といった酒の肴は冬の季語みたいなモノだ。熱燗をすすりながら味わうと「インバウンドの皆様にこの味は分かるめえ」とヘンテコな江戸弁が出てしまう。
初冬の名物である香箱ガニはもう漁期が終わってしまったが、これも身肉ではなく外子やら内子やらの怪しい部位を味わう珍味界のスターである。近年は妙に高価になってしまったのが残念だが、図体のデカいオスガ二とは違った味わい深さがある。
珍味イコール痛風のリスクが世の常識だが、いま私の尿酸値は標準値内に収まっている。だから何も気にせず食べまくれるのが嬉しい。毎晩のように珍味攻めをしていた10年ぐらい前は尿酸値が危険水域だった。お医者さんからは痛風発作が起きないのが不思議だと言われたほど。
その後、痛風体験者の恐怖談をずいぶんと聞かされてかなりセーブするようになったら数値的には標準に戻った。コレステロールの数値も毎日飲む薬でコントロールしているから、今の私は無敵状態である。
10年以上前には銀座のお寿司屋さんでわざわざ珍味だけを取り揃えてもらって酒を飲む会を催していた。今ではそこまでの執着はないが、根っからの凝り性だから迷走?し始めると際限がなくなる。
珍味会
https://fugoh-kisya.blogspot.com/2012/05/blog-post_18.html
飲酒量が以前より減ったのも珍味を常識的な範囲で食べるようになった理由だろう。最近はお寿司屋さんに行ってもちゃんと握りを10貫ぐらい食べる。昔の2倍、3倍だ。以前は珍味ばかりでダラ飲みばかりしていた。
こちらは銀座の料理屋さんで出てきたフグの白子。お手軽価格だったので注文してみた。とらふぐの白子の艶めかしい味わいを想像したのだが全然違った。フグも結構な種類があるからきっとお手軽フグの白子だったのだろう。
普通に見かけるのはタラの白子。中途半端なフグのそれを食べるより断然ウマい。とはいえ店によって美味しさに随分と差が出る。白子ポン酢の場合、温かい状態で出してくれる店なら間違いはない。もちろん冷たくてもウマい店はあるが、やはり温かい状態で出てくるとウットリ気分も倍増する。
焼き白子も捨てがたい。塩焼きか醤油焼きだ。他の食べ物とは一線を画すあのネットリ感がより強まる印象がある。飲み込みたくない感覚とでも言おうか。日本酒の相棒にするためだけに存在する逸品だと言いたくなる。
尿酸値に問題がない私としては白子ポンズと焼き白子の両方注文することも多い。どちらにしようか悩んだら迷わず「両方」である。一人飲みの時でもそうする。これぞオトナ食いである。尿酸値優等生の特権だろう。
珍味と酒の組み合わせの妙は、単にウマいものを食った喜びとは異質だ。「美味しいな~!」という感覚よりも「幸せだな~!」に近いような気がする。味覚という次元を通り越して感性の部分が急激に癒やされるような幸福感に包まれる。
よく分かりにくい表現ですいません。
あん肝も珍味会のスターだ。これまた店によって美味しさに違いはある。ジョワジュワムギューというアノ美味しさを味わうためには安さを追い求めてはいけない。ちょっと高級路線の店で食べるのが間違いない。
珍味とは嗜好品に他ならない。ここは大きなポイントだろう。生きるために口にする食料ではなくあくまで楽しむためのモノだ。いわば趣味の世界だからあまりケチっても楽しめない。
白子やあん肝に限らず、やはり珍味会のスターであるカラスミやウニもしかり、サンマのはらわただって同じだろう。「安かろう悪かろう」は残念ながら事実だ。たいていのオトナはこうした珍味スターを安さにつられて注文して失敗した覚えがあるはずだ。
飲み屋さんのメニューに珍味スターたちを見つけても妙に安かったら注文しないほうが無難だ。そんなものを2回食べるなら真っ当なものを1回食べたほうが幸せだと思う。
こんな話を書いているだけで熱燗が飲みたくなった。今夜も珍味攻めになりそうだ。
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