2024年5月20日月曜日

私とカニの歴史

 

10年以上前は気が狂ったようにカニばかり食べていた気がする。今ではそんなに食べる機会はない。飽きたわけではないが、その昔、食べ過ぎるとコップの水が溢れる原理でアレルギーになって二度と食べられなくなると聞いてから控えるようにした。

 

意識して控えているうちに狂信的カニ食い男みたいな行動はしなくなった。これも加齢による執着心の薄まりだろうか。

 

もともとカニ好きだったわけではない。30代後半ぐらいになって目覚めた記憶がある。きっかけは「カニの壁」だった。その頃の私は必死に寿司修行に励んでいた。修行といっても客としての修行である。

 

オッサンになる頃にはいっぱしの寿司通になりたいと一念発起して、それこそ週に4,5回もお寿司屋さんに通って諸々の知識を吸収しようと奮闘していた。そんな修行もある程度進んだ頃に「カニの壁」にぶち当たった。

 

お寿司屋さんではカニはレギュラーメンバーではない。「今日はたまたま△◯ガニが入ったから食べます?」。そんな感じで勧められることが多いイメージがある。

 

当時、そんな場面が何度も続いたのだが、△◯ガニも◯☓ガニも私はよく分かっていなかった。ズワイだ、毛ガニだ、タラバだ、はたまたクリガニだのワタリガニだのと言われても知識の乏しさ故に真っ当な反応が出来なかった。カニの壁である。

 

とくにズワイガニの場合、越前ガニや松葉ガニや間人ガニなど産地によって呼び名が変わる。おまけにメスは香箱ガニだのセイコガニだのネーミングがいちいち違ったりする。

 

知識がなかった私はそれらの固有名詞もそれぞれが別個の種類のカニなのかと思いひたすら混乱していた。寿司屋の大将に勧められても真っ当な対応が出来ない自分が悔しくて、寿司修行の派生パターンとしてカニ修行にも励むことにした。

 

それ以来、ウマいカニを実体験することで急激にカニファンになり、わざわざカニのために旅をすることも何度もあった。このブログでも15年ぐらい前にそんな話を書いている。

 

カニと温泉と私

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2009/01/blog-post.html

 

カニで冷える

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2010/01/blog-post_08.html

 

その後、寒い海のカニをある程度理解したことで、それまで興味のなかったワタリガニまで研究しようと九州まで出かけたこともある。頭の中がカニだらけだった。

 

竹崎ガニ

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2009/05/blog-post_11.html

 

その後も折に触れてカニの話を熱弁してきた。家庭人だった頃には自宅で生きた毛ガニを茹でたりもした。自ら体験したことで茹でたカニが時間の経過でどのように味が落ちていくのかも勉強できた。

 

上海ガニでフニャフニャ

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2018/01/blog-post_19.html

 

鳥取でカニを食らう

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2017/12/blog-post_13.html

 

なごりガニ

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2021/03/blog-post_17.html

 

そんなこんなで気づけばいつの間にかそれなりにカニに詳しくなった。きっと修行を終えたつもりになって食べる頻度が減ったのかもしれない。


いまカニの修行を始めたいと思っている人が一連のこの過去話を熟読したら一気にカニに詳しくなるのは間違いない。無料教材である。でも自分で身銭を切らないと体感出来ないのも確かである。

 

カニ修行に励んだ結果、私がもっとも好きなのは毛ガニだ。毛ガニもサイズ次第で微妙に味が違ったりミソが多い少ないが変わるので難しい面もある。

 

アレコレ書いてきたが、カニ修行の結果、私がたどり着いたのは世の中に「カニ」という名前がつくカニは存在しないという摩訶不思議な事実である。これについても以前このブログで書いた。

 

カニなのか、ガニなのか

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2021/04/blog-post_16.html

 

なんだかすっかり昔話ばかりになってしまったが、今日こんな話を書いたのは、久しぶりにカニメインの食事をしたことがきっかけだ。

 

日本橋にある「かに福」でホッコリした気分になった。この店は「御かにめし」をウリにする気軽に入れる店だ。「御かにめし」は何年か前に初体験したが、出汁茶漬けにして食べると、まさにホッコリという言葉がぴったりな気分になる。

 




平たくいえばカニのほぐし身をご飯に敷き詰めただけの一品だが、そのまま食べた後で出汁茶漬けにすれば2回楽しめるのが嬉しい。「御かにめし」には「普通」と「上」があるが、カニ身が多い「上」で決まりだろう。

 

もちろん、これだけ食べるのもアリだが、やはりアレコレとカニ絡みの一品モノを肴にして一杯やってからのシメで食べるのが幸せだ。

 

この日はズワイの刺し身、カニクリームコロッケ、カニすき、タラバのウニ焼きをシメの前に注文した。合わせた酒はヒレ酒ならぬ「つめ酒」である。これもまたホッコリジンワリハッピーな味がする。

 







先週金曜にこのブログで「ニッポンのウマいもの」がいかに私を幸福にさせているかを熱く書き連ねた。この日のカニ三昧もまた世界に誇れる我が国ならではの文化みたいなものだろう。

 

また冬が来たらカニ目的の旅でもしようと改めて決意した次第である。

 

 

 

 

 

 

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