2024年10月2日水曜日

粒立ちこそ

 

嗜好の変化は私にもある。野菜嫌いは相変わらずだが、中年になってから薬味として細かくなった野菜は好きになった。ネギ類やみょうがなんかもソーメンつゆにどっさり入れたくなる。

 

親の仇ぐらい嫌いなピーマンでさえ、ナポリタンにはちょこっと入っていて欲しい。昔はどんなに小さなピーマンでも上手に避けて食べたが、不思議と最近は必要不可欠に感じている。

 

今年は人生で初めてピーマンを買った。あんなものにお金を出す日が来るとは我ながら信じたくない。妙な敗北感さえ感じた。事件だと言えよう。

 

自宅でナポリタンを作るために仕方なく買ったのだが、ナポリタン以外にはまったく用は無い。ナポリタン完成後に残ったピーマンは速攻で捨てた。

 

嗜好の変化と言うにはちょっと大袈裟だが、歳とともにいろいろと好みは変わってくる。女性の好みだって同じ。昔はムチムチプリン派だったが、今ではスッキリした体型に魅力を感じるようになった。たぬき顔一辺倒だった好みにしても今では猫顔にも魅力を感じる。まあ、これについては「相手にしてもらえれば誰でも良くなった」というのが真相かもしれない。

 

話を戻す。

 

食事の基本である白米に関しては物心ついてからずっとブレずに「コワメシ」派だ。すなわち硬く炊いたご飯じゃないとダメだ。コメ界隈で良い意味で使われている「もっちり」という表現も私に言わせればウマそうには聞こえない。

 

大学生の夏休み、男女混合で友人の別荘に行った際、料理を担当した女子チームがコメの炊き加減を間違えたことがあった。水加減がまるで足りなかったせいでコメの芯が感じられるほどゴリゴリに炊きあがってしまった。

 

当然、失敗したコメには皆が手をつけず放置されていたのだが、私にはさほどヒドい出来には思えず一人むしゃむしゃと食べ続けた。すると女子チームが何を勘違いしたのか私のことを気配りのできる紳士だとやたらと褒めまくる。男チームは「モテようとして無理に食ってんだろ?」などと言う。

 

もちろん、どちらも不正解である。ビチャっとした柔らかいコメを食べさせられるより遥かにマジだから無心に頬張っていただけである。あの時ほど人間なんてしょせん分かり会えない存在だと感じたことはない。

 



先日、自作した挽き肉炒めメシである。硬く炊いたコメが主役だ。挽き肉とみじん切りのタマネギ、マッシュルームを加えて、塩コショウ、粉末コンソメ、ウスターソースで仕上げた。

 

チャーハンなど炒めメシ系はとにかくコメが粒立った感じじゃないとそれだけで失格だと思う。もっちりしているようでは油や具材の水分と混ざってビチャっとしてしまう。

 

時々無性にチャーハンが食べたくなって行き当たりばったりに町中華の店やカジュアルな中華料理店に入るのだが、粒立ちパラパラチャーハンに遭遇するのは34回に1回ぐらいだ。しっとりチャーハンなる言葉もあるようだが、個人的にはその名称自体が論理破綻だと思う。

 

高級中華料理店では感心するほどパラパラに仕上げたチャーハンが出てくることがあるが、あれはあれで上品すぎるきらいがある。町中華的なジャンクな気配を漂わせながら粒立ち感が際立つチャーハンに出会いたいのだが、なかなか難しい。

 



もちろん、炒めメシに限らず、普通の白米だって鰻重のご飯やドンブリモノのご飯も粒立っていて欲しい。寿司も然り。ウナギや寿司の店で柔らかいコメに当たると心の中で罵詈雑言を叫んでいる。何だかとても損した気分にもなる。

 

世の中、私が思っているほどコメの炊き加減にこだわっている人は少ない。もちろん、偏屈なこだわりなど持たないほうが平和で済むのだが、日本人の食事においてコメは基本中の基本、一丁目一番地である。多少なりとも自分が幸せを感じるような炊き加減にこだわりたい。

 



わが家の炊飯器にはあらかじめ主要な米の銘柄が数十種類登録されていて、それぞれのコメの特徴に合わせて炊きあがりを調整する機能がついている。そう書くとさも立派だが、いろいろ試したがたいして違いを感じたことはなかった。

 

結局、今は山形の「つや姫」から派生して人気銘柄になった「雪若丸」の無洗米を最も簡単な「早炊きモード」に設定して炊くのが私のド定番になった。

 

水加減は2合のコメに対して1.67ぐらいの目盛りに合わせると実に幸せな粒立ち感に仕上がる。もちろん、炊飯器のクセ、コメとの相性によってどこの家にも当てはまるものではない。ただ、自分なりのパターンを確立しておけば毎回炊き加減に一喜一憂しないで済む利点はある。

 

あれこれと書き連ねたが、読み返してみると何だか自分が偏屈な神経質オヤジみたいに感じる。もっとおおらかにテキトーに暮らしていかないと老後が厄介なことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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