オジサンになると歴史が好きになる。そんな認識が世間では一般的だ。若い頃より歴史に興味が湧く人は多い。私もそんな一人である。
もっとも、私の場合は子供の頃からプチ歴史好きだった。小学生の頃に親にせがんで忠臣蔵を偲ぶために赤穂まで連れて行ってもらったり源義経物語を夢中になって読んだりしていた。
一応、歴史好きとしてのキャリアは長いのだが、プチで留まっていたから詳しい人と議論を白熱させるほどの知識はない。もっと真剣に学んでいればいっぱしの歴史オタクになれていたかと思うと残念だ。今からでも生涯学習講座に通ってみようかとちょっと本気で考えている。
ところで、中高年になると歴史が好きになるのはナゼだろう。おそらく自分の残り時間が少なくなっていることと関係している気がする。どんな凄い人やどんな偉業もすべては過去のことだ。とはいえ、現在にもその影響は残っているから継続性という意味で自分の人生も悠久の歴史の一部に過ぎないと感じることが理由だと思う。
自分で書いておいて何を言っているのかよく分からなくなってきた。平たく言えば今現在も歴史の流れの一部であって、どういう経緯で「今」につながってきたかを自分の人生とひっくるめて考察することが楽しくなってくるのだと思う。
自分の人生に意味を見出すみたいな大げさな話ではなく単に「つながっている」という事実を面白く感じているわけだ。だから大半の人が日本の歴史に興味を持つ。私自身もヨソの国の歴史にはちっとも興味がわかない。
自分の生まれ育った場所、いま住んでいる場所、旅先に選んだ場所それぞれの場所に関して歴史的なエピソードを見聞きすることに浪漫を感じる。旅先で城を必ず見たくなるのもその時代を想像することが面白いからだろう。
一時期は戦国時代モノが好きだったが、その後、江戸時代の暮らしや風習みたいな分野に興味が湧くようになった。自分が凡人だから偉人の一代記より普通の人の日常がどんな様子だったのかを知るほうが楽しい。
幕末や明治維新に関しては江戸っ子が田舎モノの軍門に下ったという点でちょっと敬遠していた。人物の相関関係が複雑で面倒だったのも理由だが、漠然とそっち系の本を読んだり、テレビの歴史モノを観ているうちに以前より興味が湧くようになった。大河ドラマで西郷さんや渋沢栄一を真面目に見ていたことも影響している。
最近読んだそっち系の本もなかなか面白かった。「岩倉使節団」と「西郷従道」を扱った新書だ。岩倉使節団といえばオールドパーを持ち帰ったことしか知らなかったのだが、考えてみれば一大スペクタル物みたいな話である。
革命政府の大幹部が国の作り方に悩んで大勢で内政を放っぽり出して先進国の実情を長期間調べに行った。随分と大胆な行動である。浦島太郎ばりに見るもの聞くことすべてに度肝を抜かれたはずだから面白くないはずがない。実際に面白かった。
お次は西郷従道だ。近代の歴史モノでよく見かける名前だが、今ひとつどんな働きをした人か分からなかった。西郷隆盛の弟なのに西南戦争の際には新政府側の中枢で兄と敵対し、その後は総理大臣に担がれそうになっても逆臣の弟であることを理由にあくまで脇役に徹した人である。
維新後の開明期を描いた映画やドラマは数々ある。現在NHKで再放送中の傑作「坂の上の雲」も非常に面白い。あれは当時の軍人さんが主役だが、激動の時代だったから主役にする人物次第ではいくらでも新たな傑作は生まれるはずだ。従来とちょっと違う視点からの物語として西郷従道さんをキーマンにしたら間違いなく傑作になりそうだ。
さてまとめに入ろう。
なんだかんだ言って歴史モノの本を楽しく読む時間は日常の厄介なヨモヤマ事を忘れさせてくれる。何か教訓を得ようとか、はたまた朝礼のスピーチ用の素材にしようとか、余計な邪念は抜きにしてボンヤリとその世界に没頭するのが一番である。単に「ふむふむ」とうなずければそれで充分だろう。
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