2008年3月11日火曜日

税務署の目線


今の季節、忙しいのが税理士の世界。言わずとしれた確定申告シーズンだけに、1年でもっともバタバタしている。

税理士とひとくちに言っても、そのタイプや能力はさまざま。経歴による大きな違いもある。

税理士試験を突破して開業する人を試験組と表現する一方で、OBというジャンルも一大勢力になっている。いわゆる国税職員あがりの税理士だ。

国税職員を20何年だか経験すると、一定の条件のもと税理士資格が取得できる。国税OBとか税務署OBとかいわれる人達だ。

数年前、大物OB税理士が脱税で逮捕されるという事件が起きた。地方の国税局長まで勤め上げたノンキャリア組のエースだった人物が起こした犯罪だけに衝撃は大きかった。

事件の手口は、実に幼稚かつズサン。収入の大半を単純に申告しなかったというレベルで、法廷での本人の証言によると「自分には税務調査は来ないと思った」という呆れた内容。

事件そのものと並んで話題になったのが、その収入の凄さ。3億円前後の年収は、一般の税理士からは考えられない金額。数多くの企業からの顧問料や税務調査立会料などが中心だが、1件当りの月々の顧問料金額が3~5万円が相場といわれる一般的な税理士の世界から見たら、「一体どんな仕事をしたらそこまで稼げるのか」という疑念を招くのは当然の話。

もちろん、国税OB税理士が顧問についているからといって、企業が納める税金が安くなったり、調査でお目こぼしがあるというワケではない。そんなベタな話が簡単に通用するようなら税務行政など成り立たないわけだから、そこまで話は簡単ではない。

では、なぜ多くの企業が国税OB税理士に相応の期待を寄せて高額な報酬を支払うのか。

もちろん、漠然とした「アノ先生ならうまくやってくれるだろう」という微妙な期待もあるだろうが、それ以上に“着地点”の判断に期待が寄せられている。

企業の経理処理には、たとえ脱税を意図していなくても、国税から問題アリとの指摘を受けるものがある。これが大企業の何百、何十億円単位の話だと、見解の相違による税金のズレだってウン億円、ウン十億円になりかねない。

税法の運用解釈には、当然、条文だけでは判断が付かないことも多く、税務調査の現場では必然的に折衝や理論闘争がつきもの。その際、国税当局側の視点、傾向などに詳しい国税OB税理士がいれば、落としどころの調整に能力を発揮してくれるはずと企業側は考える。

蛇の道は蛇ではないが、国税の現場が長く、重要セクションの管理職経験があるようなら、「傾向と対策」に長けていることは確かなわけで、そうした税理士を味方につけたいと思う企業が少なくないわけだ。

大企業の経理だけでなく、中小企業でも資産家であろうと、税金問題で悩むからには、「税務署側の視点、考え方」にどう対応するかは重要な問題。通り一遍の税金解説本を読んだところで、イロハのイが分かるだけで、もっと深い部分はあくまで相手方、すなわち税務署、国税局の特性をどう学んでおくかにかかっている。

出版物やセミナーなどでも税金モノは根強い人気があるが、実務上の細かな内容とは別に、「国税の目線」にターゲットを絞った内容のものは少ない。そんな意味で下記のセミナーは、中小企業経営者にとって斬新な内容が予定されているため、興味のある方は、ご参照いただきたい。

http://www.np-net.co.jp/nouzei/doudosemi_vol1/index.html

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