サミットの関係でやたらと都内でも警備が物々しい。世界のVIPが北海道以外にも来るわけだから仕方ないのだろうが、つくづくメイン会場が洞爺湖で良かったと思う。
北海道の人には迷惑だろうが、やはり東京であんなものを開催されたら物騒でたまらない。初期のサミットは平気で東京のど真ん中でやっていたことを思い返すと、当時の平穏な社会状況が懐かしい。
VIPといえば、私もひょんなことからVIP体験をしたことがある。
中国通の某VIPから、「遊びが大半だから一緒に行こう」と誘われ、中国の某都市に出かけた。言葉通りに解釈して気軽に出かけたが、よく聞けば、中国の地方政府の招待だそうで、随所にVIP待遇が用意されていた。
「遊びが大半」とか言われていた割には、やたらと行事が多く、地方政府トップとの会談なんかの席にも、なぜか私も同行関係者として参加していた。
地方政府主催の晩餐会にも一応、わけが分からないまま参加。豪勢な中国料理のフルコースが出てくるのだが、なんとも居心地が悪い。おまけにあちらの乾杯は、40度だか50度だかのアルコールの強い白酒が使われる。
この白酒の乾杯は、小さいグラスで何度もしつこくやらされる。おまけに乾杯相手に、こちらのグラスを逆さにして飲み干したことを見せる迷惑な習慣がある。
私の前に座っていた親父は、会話が途切れると、途端に乾杯攻撃を仕掛けてくるので、ゆっくり食事を味わえなかった。
VIP気分を一番感じたのが、クルマでの移動。人数の関係でリムジンではなかったものの、クルマそのものは問題ではない。パトカーの先導で信号を無視して突っ走る貴重な体験ができた。
渋滞が激しい場合、先導するパトカーは赤色灯を回して空いている反対車線にいきなり乗り入れる。我々の乗ったクルマもその後に続き、渋滞を横目にヒューと走っていく。
正直、興奮。ハイになっている姿を同行者に悟られないように平静を装うのに苦労した。
急に偉くなっちゃったりした人って、突然のVIP扱いに興奮してるんだろうなと変な想像をしてしまう。
安倍前首相なんて、ロクに大臣経験もないままトップに登って、政府専用機とかの主になったのだから、絶対に舞い上がったはず。きっとヨソの国で儀礼兵なんかを閲兵しながら、ウッシシ笑いをこらえていたに違いない。
日本で暮らしていると信号を無視して突っ走れるのは、救急車で運ばれるときか、逮捕されてパトカーで連行されるときぐらいだろうから、この体験は私にとっては印象的だった。
VIP気分の極めつけは、よく分からない地元のパレードをVIP席で見学させられたこと。
大きなイベントだったらしく、周辺の道路は全面通行止め。にもかかわらず、我々の乗ったクルマは、イベントのメイン会場に用意された観覧席までパトカーの先導で乗り付ける。
沿道に集まった大勢の人々の視線を浴びながらクルマを降りて観覧席に向かう。同行者についてきただけの私にとっては、異常にこそばゆい気分だ。
政治家とかスターさんって、きっとこの視線集中攻撃に喜びを感じるのだろう。でも、ある意味、大勢の人間の視線を全方位から受けるって結構恐い。
用意された観覧席には、なぜか私の名札までご丁寧に筆書きされてセットされている。
先方の事務方も、当地に何の関係もない私の肩書きに困ったらしく、私の肩書きは、なんと「東京」。これには笑った。
面白くもないパレードを寒空の下で延々見せられて正直辛かった。持っていた本でも読んでいようかと思ったが、パレードしている人々はVIP観覧席に向かって敬礼したり、手を振ってくる。しょうがないので、よく分からないまま私も一生懸命手を振った。でも、何のイベントだかよく分からないまま手を振っている自分が切なかった。
この時の中国旅行は、みんなで街に買い物に行くときでも私服警察官が2名くっついてきた。おかげで、ディープな裏道とかも安心して散策できた。
夜ぐらい気ままに遊ぼうと、ネオン街に泳ぎだそうとした私に、この旅に同行してくれたVIPが忠告。「われわれの行動は全部、公安が見張ってるので、ハメ外しちゃダメ」。結局、ホテルの近くのスナックでカラオケをうなって寝た。
束の間の私の模擬VIP体験。結論はひと言「窮屈」。
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