2008年10月27日月曜日

荻窪で寿司


私の実家は杉並区の荻窪エリア。生まれてから20年以上をここで過ごした。親が住んでいる関係で、いまでも時たま顔を出す。

その昔は高級住宅街だったという話も、近年はラーメンの街として有名になってしまって台無しだ。

軍人でも大将クラスが住んでいたとか、終戦前後の昭和史を刻んだ近衛文麿の邸宅があったり、失脚した西武グループ総帥の愛人が荻窪夫人と呼ばれていたり、逸話はあれこれとある。私がこどもの頃にも井伏鱒二の散歩姿に遭遇したことがある。

らーめん屋だけでなく、朝からやっている北口駅前ロータリーの焼鳥屋も荻窪のイメージ低下に大きく影響している。なんともビミョーな存在だ。

さて、そんな荻窪で、とあるお寿司屋さんにお邪魔する機会があった。実家の親がちょこちょこ通ってる店で、興味シンシンで同行させてもらった。

南口からほど近い路地にまだ開店して1年ちょっと。店内はいたって清潔で、実に清々しい。カウンターだけの作りだが、15席分がそんなに窮屈ではなく配置されているので、小ぶりな店ともいえない規模。

付け場には、大将と二番手さんが立つ。偉そうな感じや横柄な雰囲気はなく、いたって紳士的。

若すぎる店主が切り盛りする最近ハヤリの寿司屋のなかには、店主の肩に力が入っちゃって、その力みが客席にも妙に伝わって居心地が悪い店が多い。その点、この店は、丁度良い空気感が特徴的だ。

全席禁煙というスタイルも、私にはちっともありがたくないが、飲み屋とは一線を画したいという店主の意気込みなんだろうから仕方ない。

とはいえ、飲み屋的な使いかたをするには実に良さそうな店だったのも事実。ばくらいや酒盗もちゃんとあって、カツオのたたきにも当然、生ニンニクスライスを用意してくれる。

決して、「酒ばっか呑んでないでオレの握りを食ってくれ」みたいな雰囲気ではない。

ネタの質は、お値段相応だろう。正直、オヤ?というものもあったが、最後にお勘定を知って納得。あの値段なら、特上品は揃えていられない。

鮮度の劣るようなものはさすがにないものの、味の濃さの面であと一歩といった印象を持った。もっとも、一度行ったぐらいで評価されたら店側もたまったもんじゃないだろうから、あくまで、この日、私が食べたものの印象です。

それでもサバを頼めば、ごく軽く締めた松輪モノを出してくれるし、総合的には充分楽しめる水準だと思う。心地よい雰囲気の中で気のおけない相手と盃を重ねるには最適だと思う。

聞くところによると、荻窪、西荻窪あたりには、最近、志の高いまっとうなお寿司屋さんがちょこちょこ登場しているらしい。

立地から考えて、当然、お値段は銀座あたりに比べれば安いだろうし、中途半端な街でテキトーな仕事をしても一見さんが多くてつぶれないよう店よりも確実にマシだろう。狙い目なんだと思う。そういうお寿司屋さんを近所に見つけられる地元の人がうらやましい。

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