2008年12月24日水曜日

派遣切りと内定取消し

派遣切りの話題が相変わらずニュースの主役のようになっている。19日付のこのブログでも取り上げたが、この日、ブログを覗いてくれた人の数は普段の10倍ぐらいになったので少し驚いた。やはり世間の一大関心事なのだろう。

と同時に、表層的かつ情緒的なメディア報道に疑問を感じる人が多いことを痛感する。ネットの世界を覗いてみると、「派遣切りは悪か」という観点の議論が多い。ただし、意見の多くが、派遣切り肯定派の声に見えたのが現実だ。

派遣切りに対する巨大メディアの捉え方への消化不良がネット上での活発な意見展開につながっているような印象を受けた。

一口に派遣切りといっても、そのパターンは様々。画一的に批判されては堪ったものではない。正規雇用を目指しているのに、そうなれない人が多いのも分かるが、なかには積極的に派遣、すなわち非正規雇用を選んでいる人だって少なくない。

私の経験でも、そういう人を結構見てきた。年に2回ほど長期旅行したいので、正社員の道は選ばないとか、朝が苦手なので、正規雇用は避けているとか、およおやといいたくなる人も現実に存在した。

まあ、そういう人材は、昨今問題になっている派遣切りの話題とは別ものなんだろう。

さて、派遣切りは、企業のリスクマネジメント上、当然であり仕方ないというのが私の率直な考えだが、なかには、救済が必要なインモラルなケースもある。

派遣とはいえ、正統な派遣契約の範囲では保護されるべきだが、その部分すら無視してカットされるケースは、企業側の責任は免れない。

ただ、この場合、契約上は、人材派遣会社と受入れ企業側で賠償問題が生じるのが普通で、人材派遣会社がどう対処しているかがカギになる。もちろん、賠償問題は、人材派遣会社と受入れ企業との間の話で、当の労働者本人がカヤの外に置かれていたらどうにもならない話ではある。

こうなると焦点はあくまで制度上の話であり、短絡的に批判される企業側は堪ったものではない。

さてさて、話題を変える。派遣切りとともに問題視されている「内定取消し」について。これについても企業側の姿勢が問われている。

日本語の意味で言えば「内定」と「決定」は違う。もちろん、実際の雇用慣行では、内定段階で事実上の雇用関係にあるようなイメージがある。ここがトラブルの争点になるわけだ。

経営者側の見方では、やはり、内定は内定でしかない。急きょ、人員削減が必要な場合には真っ先に内定者がターゲットになるのは仕方ない話。

内定者とはいえ、事実上の雇用関係にあったかどうかは、司法判断にでも頼らないと門外漢の私には分からない。ただ、経営者側の本音としては、「内定は内定」でしかないのが事実だ。

私自身の経験を思い起こせば、逆に内定者側から一方的に辞退された経験は何度もある。最近は、新卒採用ではなく即戦力重視の意味で、経験者募集しかしていないが、この場合、内定者に突然、辞退されると本当に迷惑する。

経験者採用となると、採用人数も一定数をあらかじめ決めておき、絞りに絞って採用者を選ぶ。当然、採用内定者を絞り込んだ段階で選ばれなかった人には、断りの連絡を入れる。

「もし、内定者が辞退したら繰り上げ採用しますから、数ヶ月待機しててね」などと言えるわけもなく、定数の関係上、泣く泣く惜しい人材をお断りすることもある。

そうした上で、内定者が突然入社を断ってきたら、それはもう迷惑千万。それこそ訴えたくなる。人材募集費用だけでなく、選考課程の社内的手間、時間人件費、はたまた期間損失を考えるとバカにならない。

中小企業にとっては、採用予定者が突然、ケツまくっていなくなってしまうことは珍しいことではない。大企業の人員採用とは微妙に違う話ではあるが、勝手気ままに辞退された苦い経験のある経営者の本音は、推して知るべし。「内定は内定でしかない」。これは正直なところだろう。

業績見込みが滅茶苦茶で、無秩序に採用計画を立て、内定を乱発し、いざとなったら入社を断るという図式なら、企業側も責められても仕方ない。ただ、普通はそんなケースは稀だ。よほど急激な経営環境の変化によって、残念な事態につながっているのが現実だろう。

それでもメディアはこぞって「企業の社会的責任」というフレーズを使って責め立てる。違法行為で追及できないとなると、何でもかんでも、この言葉で企業側を悪者視したがる。

営利企業の存在目的は、あくまで利益の追求である。社会的責任を定義するとしたら、倒産させずに存続させることだろう。倒産させないための企業防衛は、企業規模が小さくなればなるほどシビアになって当然。

名のある大企業なら、タチの悪い偽装やインチキをしようが、質の悪い経済犯罪をしでかしても、滅多に倒産もせずに活動を続ける。規模が大きければ周囲への影響もあるという理由もあって、なんだかんだとつぶれずに済んでいる。

誰も助けてくれない中小企業は、自助努力で存続し続けようと奮闘する。こうした階層の経営者にとって、派遣切りとか内定取消しの問題が大騒ぎされるのは、どこかうっとうしい感じがする。

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