2010年1月19日火曜日

事件の陰に・・・

小沢幹事長に対し「(検察と)闘ってください」というトンデモ発言をしてしまった鳩山首相。検察を含む行政府のトップとしての自覚の無さを露呈した格好だが、イジワルな見方をすれば、“はしゃいじゃった”のかも知れない。

小沢幹事長の問題で自分の偽装献金問題が一気に吹っ飛んだわけだから、内心は「ラッキー」などと思っているのかもしれない。

自身の偽装献金問題は、総理年頭会見や1月16日の党大会でも「決着済み」であることをやたらと強調している。具体的には「検察捜査で全容は解明され、処分決定で基本的には決着した」と発言している。

確定申告シーズンを目前にして、どうにも首相の発言内容が気になって仕方ない。政治資金規正法というジャンルにおいては、確かに首相の認識は的外れではないのかもしれない。

ただ、母親から巨額な資金が移動していた一連の問題は、政治資金規正法ではなく、税法違反という捉え方をする方が的確だろう。だとしたら「全容解明、処分決定で決着」という話はまったく成り立たない。

巨額な資金移動について、当初、首相サイドは母親からの借入金という逃げ口上を準備していたようだが、借用書ひとつ無いお粗末な方便が通用するはずもなく、結局、昨年末に、母親からの贈与であるとして、贈与税の申告を行った。

時効にかからなかった分の贈与税の申告はあくまで昨年暮れに行われたわけで、受理した国税サイドがその内容を精査するのは、まさに今月からという理屈になる。

鳩山首相は、ひょっとすると、税金は申告すれば終わりとでも思っているのだろうか。申告された内容に問題があれば、課税庁は必要に応じて税務調査を行い、内容の是正につなげる。悪質であれば、刑事告発もありえる。

すべては申告書が提出されてからはじまると言った方が的確だろう。

悪質かどうかの基準はケースバイケースだが、逃れていた税金の金額はもちろん、ハナからまったく申告すらしていなかった無申告事案などは、当然、国税サイドが優先的に睨みをきかせる。

無申告だった案件には、自動的に無申告加算税というペナルティー的な課税が行われるが、これについても“税務調査を予知して提出された申告書なのか否か”によって取扱いが異なる。

悪質なケースにかかる重加算税という罰則については、あくまで国税当局がその内容に応じて決定するわけだから、首相が言うように「処分決定で決着」というにはまだまだ早すぎるわけだ。

もちろん、国税当局がどう見るか、どう動くかによるわけだが、理論上は、これから首相サイドへの相続税・贈与税逃れに対する税務調査が行われることは充分あり得るわけだ。

数々の経済事件に絡んで、一種の突破口になってきたのが「税法違反での摘発」。かのロッキード事件もそうだったし、複雑な経済事件の解明途上では、課税処分という手法が全容解明のカギを握ることは珍しくない。

もちろん、税法違反自体も重大な背信行為であり、それ自体が捜査の着地点になることもある。

ちなみに民主党・小沢幹事長の一連の疑惑にしても、問題の土地購入資金について、小沢氏サイドは、タンス預金とか、父からの相続分といった説明に終始している。

タンス預金ならば、蓄財にあたって過年分の所得税処理は適切だったのか、相続した資金ならば、当時の相続税課税に漏れはなかったのか、国税サイドの資料等ですぐに分かるわけだ。

要するに贈収賄だとかヤミ献金といった生臭い資金じゃなかったとしても、場合によっては脱税という法律違反があぶり出されることも考えられるわけだ。

税金の専門新聞を発行していると、その手の“魑魅魍魎バナシ”がアレコレと集まってくる。ひねりのきいたビジネス情報としてお役に立つと思います。

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